間接送電権市場に「年間商品」を新設 最低約定価格も見直しへ:第3回「間接送電権の制度・在り方等に関する検討会」(4/4 ページ)
事業者間でエリアをまたぐ電力取引を行う際の値差リスクをヘッジすることを目的に導入された「間接送電権市場」。資源エネルギー庁では同市場へ新たに「年間商品」を導入し、対象連系線も追加する方針だ。
間接送電権の取引適正化に向けた課題
現時点、間接送電権(週間商品)の売入札価格は、市場参加の妨げとならぬよう、0.01円/kWhに設定されており、結果としてこれが約定価格となることも多く生じている。
間接送電権の価値とはエリア間値差のヘッジ(固定化)であることから、十分な競争性が保たれている場合、売入札価格が0.01円/kWhであったとしても、間接送電権の価格はエリア間値差の期待値に収斂していくと考えられる。
しかしながら現状では、多くの場合、間接送電権の価格はエリア間値差と比べてかなり低い傾向が続いている。JEPXのエリア間値差収益は連系線増強の資金ともなるため、間接送電権価格が低いことは、値差収益を削ることとなり、十分な連系線増強資金が得られない一因となる。
間接送電権とは本来、値差リスクヘッジを目的とした商品であるが、一部の事業者では利益獲得を目的とした取引を行っており、0.01円/kWhの売入札価格(=最低約定価格)がこれを助長していると指摘されている。
JEPX取引規程では、間接送電権取引は「現物電気と一体である間接送電権取引」(取引規程第78条)を対象と規定しており、また、「電気の実物取引を目的としない取引」(取引規程第10条第1項第1号)を禁止行為と規定している。このため、電気の実物取引を行っていないエリア間の間接送電権を購入することは、取引規程に違反する可能性がある。
間接送電権の「売入札価格」を見直しへ
検討会では、取引適正化の観点及び値差収益を活用した連系線増強のための資金を最大限確保する観点から、間接送電権の売入札価格(=最低約定価格)を、エリア間値差を反映して設定するよう見直しを行った。
まず週間商品について、N年X月分の売入札価格は、以下のような算定式を用いることとする。
算定式内の調整係数とは「1/3」であり、市場への参加を過度に抑制しないための配慮から設けられたものである。図6のように、売入札量に対する約定量の割合が比較的高く一定の競争が働いていると考えられ、かつ、経過措置の影響が限定的で経過措置終了後の取引環境に比較的近いと考えられる「中部→東京」間において、平均発生値差と間接送電権の約定価格の比は、2022年度:0.40、2023年度:0.27であることが確認された。検討会ではこれらの平均である「1/3」を調整係数とした。
ただし過去の値差平均次第では、表1上のように、売入札価格がかなり高くなることもある。このため、やはり売入札価格を抑制する観点から、上限値を設けることとした。上限値は、計算式(1)と(2)のいずれか小さい値(0.01円/kWh以上)とする。
- (1):入札実施直近1年間(N-1年X-2月〜N年X-3月)の値差平均×調整係数
- (2):N-1年X月の値差平均×200%(前年からの変動率上限)×調整係数
また「年間商品」の売入札価格については、入札を行う直近1年間の値差の実績に調整係数を乗じて、以下の式に基づき算定する。調整係数はここでも「1/3」である。
<年間商品の売入札価格案(N年度分)>
- 9月取引分 : N-2年9月〜N-1年8月の値差平均×調整係数
- 2月取引分 : N-2年2月〜N年1月の値差平均×調整係数
「年間商品」の売入札価格についても上限を設けることとして、以下の計算式により設定する。
<年間商品の売入札価格上限案(N年度分)>
- N-4年度〜N-2年度の値差平均×調整係数×200%
年間商品・週間商品の発行量や発行タイミング、売入札価格については、今般の見直し後の取引状況等を踏まえ、適切なタイミングで必要な見直しを行う予定としている。
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