系統用蓄電池の早期連系に向けた「暫定措置」 接続および利用ルールの概要(2/4 ページ)
電力系統に接続する「系統用蓄電池」の早期連係に向けた暫定措置が2025年4月からスタートした。本稿ではその措置の概要と、系統接続および利用ルールの概要について解説する。
発電所におけるN-1基準の考え方
電力系統は、発電機や送電線、変圧器など様々な多数の設備から構成されている。これら複数(N)ある設備のうちの1つが故障(-1)することを「N-1故障」、同時に2つが故障(-2)することを「N-2故障」と呼び、N-1故障が起きても電力供給に支障を起こさないという考え方である「N-1基準」は、電力を安定供給する上で国際的に広く用いられている。
多くの送電線は事故に備え、図3のような2回線で構成されており、1回線の故障(N-1故障)時には、残る1回線で発電所(図3では100MW)の電力すべてを、熱容量を超過することなく送電できるように設備形成している。
つまり、2回線とも健全な平常時には200MWの送電能力があるにも関わらず、平常時でも100MWしか送電しない運用ルールとしている。
ただし、発生確率の低いN-1故障に備えて常に、送電容量の半分しか使えないというのは「勿体ない」とも言える。系統事故が起こった際、瞬時に発電所からの送電を制限(遮断)すれば、熱容量超過を避けることができる。これにより、これまでは緊急時用に確保してきた容量を平常時に活用することが可能となり、平常時の運用容量が拡大する。
このような考え方に基づき、既存の系統容量を有効活用する仕組みとして、2018年以降、「N-1電制」(N-1故障時に電源を遮断もしくは出力制御すること)の対象とする発電所を順次拡大してきた。
「N-1充電停止」による系統用蓄電池の早期連系
発電・逆潮流における「N-1電制」と同様に、系統N-1故障時に蓄電池の充電を停止させるならば、平常時には順潮流側(充電側)の運用容量を拡大することが可能となる。よって、系統用蓄電池の早期連系のための暫定措置の一つとして、「N-1充電停止」の考え方に基づき、系統増強工事を待つことなく、蓄電池の早期系統接続を可能とした。
「N-1充電停止」の適用系統は、逆潮流側のN-1電制と同様に、基幹系統およびローカル系統を対象として、この適用電源および制御対象は、新規に接続を希望する特別高圧の系統用蓄電池である。
「N-1充電停止」を実施するには、系統事故を検出し瞬時に充電を停止するための装置を設置する必要があるが、この装置に関する一切の費用及び充電停止に伴う機会損失費用は、蓄電池設置事業者の負担となる。
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