系統用蓄電池の早期連系に向けた「暫定措置」 接続および利用ルールの概要(4/4 ページ)
電力系統に接続する「系統用蓄電池」の早期連係に向けた暫定措置が2025年4月からスタートした。本稿ではその措置の概要と、系統接続および利用ルールの概要について解説する。
北海道エリアにおける充電制御装置を活用した試行的取り組み
北海道エリアでは、系統用蓄電池の接続申込みが急増したため、他のエリアに先立って順潮流(充電)側の空容量不足が発生した。このため北海道エリアでは、系統用蓄電池の早期連系対策として、順潮流側の混雑が発生した時には「充電制御装置」によりオンラインで充電を抑制する試行的取り組みを2023年から開始している。
2025年4月時点で25系統が対象となっており、対象系統の基幹系連絡用変圧器以下に特別高圧または高圧にて接続する系統用蓄電池が対象である。
図9の場合、蓄電池Xの設置事業者は「親局A+子局」の工事費、蓄電池Y及びZは「親局A+親局B+子局」の工事費を負担する必要があり、現時点の工事費は、親局A(基幹系変電所設置)は15千万円程度、親局B(ローカル変電所設置)は6千万円程度、子局は1千万円程度である。
なお北海道の仕組みでは、一つの対象系統に複数の系統用蓄電池が接続している場合、契約申込の受付順に関わらず、各蓄電池はオンライン制御により、一律の割合で制御される。
他方、先述の全国の「充電制限暫定措置」はオフライン制御であるため、細やかな制御が出来ない。このため、同一系統に複数の蓄電池が連系する場合、後着蓄電池の連系を理由とした先着蓄電池の充電条件変更は行わない。
系統用蓄電池連系に係る系統増強費用
ここまで、系統用蓄電池を早期連系させるための暫定措置を紹介してきたが、これらの措置のみで連系可能な設備容量には自ずと限界があるほか、事業者が早期連系対策を希望しない場合には、原則どおり、系統増強工事を行うこととなる。
系統増強(逆潮流側)の費用負担については、国の「発電等設備の設置に伴う電力系統の増強及び事業者の費用負担等の在り方に関する指針」により定めており、発電等設備とは、発電設備及び蓄電設備を指している。
同指針では、「受益者負担」を基本として系統増強に係る費用負担の割合を判断することとしており、過度な一般負担(託送料金を通じて、エリア内のすべての需要家から薄く広く回収)を生じさせないことを目的とした上限を設けている。一般負担の上限超過額は「特定負担」(工事の起因となった事業者の負担)となる。
系統用蓄電池の連系においては、系統用蓄電池の充放電は一体となって行われるものであることから、過度な一般負担を生じさせないという主旨を踏まえ、順潮流側の対策工事の一般負担分についても、上記式の「対策工事の一般負担額」に含めることとしている。
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