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太陽光&蓄電池ビジネスに変化の兆し 2025年度から始まる注目の新制度(1/4 ページ)

2025年度、屋根設置太陽光と蓄電池に関する新制度がスタートした。「FIT/FIP制度における初期投資支援スキーム」「建築物の省エネ基準適合義務化」「FIP電源併設蓄電池の系統充電の拡大」「系統用蓄電池の早期連系追加対策」、それぞれのポイントとビジネスへの影響は?

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 新しいエネルギー基本計画のもと、さらなる導入拡大が求められる太陽光発電。2040年度エネルギー需給見通しでは、国内の発電電力量の23〜29%を太陽光が担うと想定されている。現在の導入量の2〜3倍の量を、今後15年ほどで導入していく計算だ。

 しかし実際には、FIT制度開始当初に比べ、昨今の導入スピードは低下している。こうした状況にあって、第7次エネルギー基本計画で真っ先に挙げられているのが、建築物の屋根や壁面の有効活用だ。「今後の太陽光発電の導入拡大にあたっては、まずは、比較的地域共生がしやすく、自家消費型で導入されることで系統負荷の低い屋根設置太陽光発電のポテンシャルを積極的に活用していくことが重要である」とする。

 ここでは、2025年度からスタートした屋根設置太陽光の導入促進施策として、「FIT/FIP制度における初期投資支援スキーム」と「建築物の省エネ基準適合義務化」を概観する。

 太陽光など変動性再エネを増やすためには、今後ますます蓄電池の役割が重要となる。蓄電池についても、FIT電源併設蓄電池と系統用蓄電池に関して、それぞれに注目の施策が動き出している。「FIP電源併設蓄電池の系統充電の拡大」と「系統用蓄電池の早期連系追加対策」だ。

屋根設置太陽光に「初期投資支援スキーム」を適用

 FIT/FIP制度における屋根設置太陽光の導入促進策として、「初期投資支援スキーム」が動き出している。同スキームにおいては、従来のFIT/FIP期間が2つに分けられ、初期のFIT/FIP価格は高く、後期の価格は低く設定される。これまでは一律だったFIT/FIP期間中の価格を2段構えにするものであり、大幅な制度改正といって良い。


初期投資支援スキームのイメージ 出典:資源エネルギー庁

 トータルなFIT/FIP期間は従来通り、住宅用は10年間、事業用は20年間。対象となるのは、住宅用太陽光と屋根上の事業用太陽光、つまり屋根設置太陽光全般だ。

 住宅用太陽光における初期投資支援スキームでは、FIT期間の10年間を初めの4年間と後期の6年間(5〜10年目)に分ける。そして、初めの4年間を初期投資支援期間とし、その間の価格は24円/kWhに設定する。一方で、後期の価格は8.3円/kWhと、初期投資支援期間の3分の1程度に抑える。

 事業用太陽光(屋根設置)については、FIT/FIP期間の20年間を初期の5年間とその後の15年間(6年目〜20年目)に分ける。そして、初期5年間の価格を19円/kWh、その後15年間を8.3円/kWhとする。ここでも、その価格差は2倍を超えるものとなっている。


屋根設置太陽光のFIT/FIP価格 出典:資源エネルギー庁の資料を基に筆者作成

 FIT/FIP制度においては、これまでも事業用太陽光発電に屋根設置区分を新設し、地上設置区分より高いFIT/FIP価格とする(2023年10月〜)など、屋根設置太陽光の積極推進を図ってきた。初期投資支援スキームは、こうした流れを強化するものであり、屋根設置太陽光における早期の投資回収を支援することで、事業者の投資促進や需要家の導入意欲を喚起する狙いがある。「屋根設置太陽光の設置者となる建物所有者について、財務基盤や与信が小さい傾向にあることを踏まえ、早期の投資回収を可能とするために初期投資支援スキームの措置を検討した」(資源エネルギー庁)という。

 なお、初期投資支援スキームは、今年度下期(2025年10月)のFIT/FIP認定案件から適用される。当初は2026年度からの運用が想定されていたが、初期投資支援スキームの適用を受けるためにFIT/FIP認定を2026年度以降に遅らせる事態が発生し、太陽光の導入拡大を滞らせることも懸念された。そうした可能性も踏まえ、前倒しで、2025年10月の認定案件から適用されることとなった。

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