「同時市場」における変動性再エネ電源の取り扱い――入札制度の方向性と今後の課題:第15回「同時市場の在り方等に関する検討会」(1/4 ページ)
現在、本格的な導入に向けて制度設計が進んでいる「同時市場」。「同時市場の在り方等に関する検討会」の第15回会合では、同時市場においてVREを取り扱う仕組みや、その入札・精算の方法、課題などが検討された。
現在、国(資源エネルギー庁・電力広域的運営推進機関)は、電力の安定供給と経済性の両立を求め、kWhとΔkWを同時約定し最適化する「同時市場」の導入に向けた検討を進めている。同時市場では、起動費や最低出力費用、限界費用といったThree-Part情報に基づき、系統制約を考慮した上で、電源の起動停止(SCUC)や出力量(SCED)の決定が行われる。
変動性再エネ電源(VRE)は、実需給が近づくにつれて出力予測精度が高まるという特徴があるため、本来であれば、それぞれのVREが随時、発電計画を更新することが全体最適につながると考えられる。ただし現在、VREの大半は「FITインバランス特例制度」を利用しているため、これを同時市場でどのように取り扱うかは重要な論点である。
「同時市場の在り方等に関する検討会」の第15回会合では、同時市場においてVREを取り扱う仕組みやVREの入札・精算の方法や課題について整理を行った。
現在のFITインバランス特例制度の振り返り
現在、日本の変動性再エネ電源(VRE)には、FIT電源・FIP電源・非FIT/FIP電源の3タイプがあるが、FIT電源は「買取義務者」がその全量を買い取ることが義務付けられている。また、VREの出力変動によるインバランスリスクを「買取義務者」が負うことを避けるため、表1のような3つのインバランス特例制度が設けられている。なお、2017年に買取義務者が小売電気事業者から一般送配電事業者(TSO)に変更されたため、特例①②電源は2017年以前のものに限られる。
通常の電源であれば、発電事業者が発電計画を作成し、ゲートクローズ(GC)時点の同時同量計画を策定するが、FIT特例制度では、発電事業者(VRE)ではなく買取義務者が代行して、発電計画の作成・提出を行う。
さらにFIT特例①では、買取義務者(小売事業者)についても、自社でVREの発電量予測をする必要はなく、TSOが予測し作成した発電量計画値の通知を受け、それをそのまま自社の発電計画として提出する簡便な仕組みとしている。TSOによるFIT発電量の計画配分は、1回目の通知が前々日の16時まで、2回目の通知(再通知)が前日6時までに行われる。
本来であれば、再通知(前日6時)以降、実需給までの間に、より新しい気象情報に基づきVRE出力予測精度を高めることができるはずであるが、この特例制度では、発電計画は変更できない(必要もない)仕組みとなっている。
実際にはFIT電源の発電量は変動するため、買取義務者の計画値と実績値の差分がインバランスとして発生するが、インバランス精算を回避可能費用(≒スポット価格)にて行うことで収支を±0とし、買取義務者に金銭面でのインバランスリスクは発生しない仕組みとしている。
また、計画配分(再通知)以降の予測誤差に備え、TSOは前日需給調整市場で、「三次調整力②」を調達しているほか、系統全体で余剰が生じる場合には、優先給電ルールに基づく出力制御を行っている。
なお、FIP電源や非FIT/FIP電源は、同時同量達成義務やインバランスリスクがあるため、自ら出力予測精度を高めようとするインセンティブが働いている。
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