今年は小田原市で開催!「ソーラーシェアリングサミット2025」開催レポート:ソーラーシェアリング入門(72)(2/2 ページ)
営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)について解説する本連載。今回は2025年7月4〜5日に小田原市で開催された「ソーラーシェアリングサミット2025 夏の陣」の様子をレポートします。
若者たちによる意見交換も
基調講演の後は「若者トークセッション」が行われ、千葉エコ・エネルギー株式会社/合同会社小田原かなごてファームの長谷川諒氏をコーディネーターに、各地で実際に営農型太陽光発電に取り組もうとしていたり、気候変動や地域の問題に向き合っていたりする大学生を含む若者たちが中心となって、意見が交わされました。
登壇者からは、営農型太陽光発電を広げるために自分に身近なところからどう伝播させていくか、人々の行動変容に対する不十分さへの指摘、地域で自分が関わっている地域課題の協議会に参加してみても「勉強」が目的になっていて「行動」にはつながっていないこと、行政が営農型太陽光発電にネガティブなイメージを抱いている際に、どう動かしていくべきかといった意見がありました。
最後に「総括セッション」として基調講演者の倉阪氏と稲垣氏、小田原市の市長である加藤憲一氏、全国ソーラーシェアリングサミット事務局から小山田大和氏が登壇し、私がコーディネーターを務めて今回のサミット全体の総括となる議論を行いました。
冒頭に加藤市長から小田原市における地域脱炭素や地域エネルギーマネジメント、そして営農型太陽光発電を含む再生可能エネルギーの普及に関するお話があり、その後に倉阪氏と稲垣氏から基調講演の内容も踏まえた発言がありました。
その後、トークテーマとして「持続可能な農業経営と新たな価値創造」と「政策・制度の課題と未来への提言」の2つについて意見が交わされ、特に営農型太陽光発電の一時転用許可に際して農業委員会だけでは再生可能エネルギー事業の適否まで判断できないこと、現在の収量規制は農業生産現場の実態との乖離(かいり)が大きい「単収ありき」の罠におちいっていること、地域計画を含め地域合意形成をどのように図っていくべきか、そこに行政がどう関わるべきかといった発言がありました。
全体を通じて
今回、平日開催の有料イベントにもかかわらず専門分科会・全体会には100名以上の申し込みがあり満席の状態で、エクスカーションも急遽枠を増やして対応するほどの盛り上がりでした。新型コロナウイルス禍を経て、リアル開催が再開された2023年以降では、最大規模のソーラーシェアリングサミットとなりました。それだけ営農型太陽光発電に対する関心が高まってきており、同時に現実的な課題と向き合っていくことの重要性も再確認する場になったと言えます。
国内の農業・農村の現実として「もう時間が残されていない」という点が総括セッションでも言及され、目の前の課題をどう解決していくか、そのための手段として営農型太陽光発電がどう活用できるのか、そして必要な制度・政策をどう整えていくのか、専門分科会と全体会を通じて多様な意見や議論が交わされました。「望ましい営農型太陽光発電」に関する議論が進む中で、これからの営農型太陽光発電の在り方を考える上でも、非常に意義深いイベントになったと思います。
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