蓄電所へのサイバー攻撃リスクが検討課題に 蓄電システムの収益性評価も公開:定置用蓄電システム普及拡大検討会(2025年度第1回)(4/4 ページ)
資源エネルギー庁の「定置用蓄電システム普及拡大検討会」で、系統用蓄電池のサイバーセキュリティ対策の動向や、業務・産業用蓄電システムの収益性評価が報告された。
業務・産業用蓄電システムの収益性の評価結果
検討会事務局では、まずピークシフトと太陽光余剰電力活用の2つの収益のみを前提として、業務・産業用蓄電システムの収益性を評価した。
試算の前提条件としては、蓄電システムのCAPEXは、2023年度補助事業のデータを基に、10.6万円/kWh(蓄電システム9.2万円/kWh+工事費1.4万円/kWh)と設定し、契約容量に対して太陽光容量50%(既設)・蓄電池容量20%(新設)、20年間稼働、と設定している。
この前提条件において、セグメント別に収益性を比較すると、相対的に「工場(昼間稼働)」のピークシフト収入・余剰電力活用収入が大きいものの、いずれのセグメントもIRRがマイナス値という試算結果であった。
「工場(昼間稼働)」セグメントにおいて、CAPEXを6万〜15万円/kWhに変化させて(他の前提条件は同じまま)収益性を比較したものが図7である。
業務・産業用蓄電システムの2030年度目標価格である6万円/kWhの場合は、IRRが1.8%となったが、9万円以上ではIRRがマイナス値であった。
以上の試算結果により、蓄電システムの代表的なユースケースであるピークシフトと太陽光余剰電力活用だけでは、十分な収益性を確保することは困難であることが明らかとなった。
今後は、停電回避や環境価値、供給力・調整力の提供など、複数のユースケースを組み合わせ、収益性を改善させることが重要となるため、次回の検討会において、新たな試算・評価を行う予定としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
産業用太陽光発電のセキュリティ問題――その背景と発電システムの実態
昨今、大きな話題となっている産業用太陽光発電システムのセキュリティ問題。はたしてその問題の本質はどこにあるのでしょうか。本連載ではこの太陽光発電のセキュリティ課題について、技術的・実務的な観点から検証していきます。
太陽光発電へのサイバー攻撃で大規模停電は可能? 技術的脅威の実態と検証可能性
太陽光発電のセキュリティ課題について、技術的・実務的な観点から検証していく本連載。第2回の今回は、ちまたで噂されるパワコンの「隠された通信機能」と、太陽光発電へのサイバー攻撃による大規模停電の可能性について検証していきます。
太陽光発電のセキュリティ対策 「モバイル閉域網の活用」が注目される理由とは
太陽光発電のセキュリティ課題について、技術的・実務的な観点から検証していく本連載。第3回の今回は具体的なセキュリティ対策の手法について、実践的な観点から解説します。

