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太陽光パネルのカバーガラスから希少元素を抽出する新手法──産総研と中部電力太陽光

産業技術総合研究所と中部電力は、太陽光パネルのカバーガラスに含まれる希少元素アンチモン(Sb)を抽出するための温和なプロセスを開発したと発表した。

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 産業技術総合研究所(産総研)は2025年9月29日、中部電力と共同で太陽光パネルのカバーガラスに含まれる希少元素アンチモン(Sb)を抽出するための温和なプロセスを開発したと発表した。

 太陽光パネルの構成品の一つであるカバーガラスは、多くの場合アンチモンを添加することで透明性を高めている。太陽光パネルの多くが耐用年数を迎える2030年代後半にはカバーガラスを大量に処理する必要があり、その際にアンチモンを効率的に分離・回収する技術の開発が求められている。

 産総研と中部電力が開発した手法では、まず使用済み太陽光パネルからカバーガラスを外して粉砕し、粉末状とする。これを密閉容器で水と混ぜて攪拌(かくはん)しながら、一般的な圧力容器の標準設計温度以下で1時間から6時間の水熱処理を行う。次に水熱処理後に得られたスラリー(微粒子を溶液中に高分散させた溶液)を、遠心分離により液相と沈殿物(粉末)に分離する。


水熱処理によるカバーガラス再資源化のプロセス概要図 出典:産総研

 得られた粉末について、XRF分析によるアンチモン抽出率の算出とX線回折法による生成物の同定を行ったところ、処理時間に伴い抽出率が上昇する傾向を示し、6時間処理後には約8割に達することが分かったという。また、X線回折の結果により、水熱処理後の試料において、ガラスの主成分であるケイ素を含む結晶に帰属可能な回折線が確認されたことから、これらの条件における水熱処理を経て結晶化されていることも分かった。

 このように、廃ガラス粉末に対して水熱処理を行うと、まずガラスからアンチモンを含む成分が液相中に溶出すると考えられる。その後、ガラスの結晶化に伴い、溶出したアンチモンは結晶に取り込まれず液相中にとどまり続け、これによりアンチモンの抽出が可能になると考察している。

 産総研と中部電力では以上の結果から、今回開発した水熱処理を用いた廃ガラスの処理方法は、太陽光パネルのカバーガラスを粉砕後に水と混合させて一般的な圧力容器の標準設計温度以下で加熱するという、工業的に十分実現可能な温和な条件下でアンチモン含有成分を効率的に抽出可能なプロセスであるとしている。

 今後は社会実装に向け、抽出メカニズムのさらなる理解によるアンチモン含有成分抽出の高効率化と反応スケールの大型化を行う計画。また、抽出したアンチモン含有成分からのアンチモンの分離・回収・リサイクル技術の開発と、得られる結晶化ガラス粉末の有効活用を目指す方針だ。

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