日本ガイシがNAS電池事業から撤退 部材価格の上昇や競争環境の激化で:蓄電・発電機器
日本ガイシはエナジーストレージ事業として展開するNAS電池の製造と販売活動を終了すると発表した。今後、新規受注の獲得は行わない方針だ。
日本ガイシはエナジーストレージ事業として展開するNAS電池の製造と販売活動を終了すると発表した。今後、新規受注の獲得は行わない方針だ。2025年10月31日に開催した取締役会において決定した。
NAS電池はナトリウム(Na)と硫黄(S)を利用した蓄電池で、長寿命であることや、充電後に次第に電力量を失う自己放電を起こさないなどの特徴を持つ。日本ガイシが2002年に世界で初めて商用化し、主に定置用蓄電池として販売を進めてきた。
同社は2019年からドイツの大手化学メーカーBASFとの協業し、電池技術の性能向上・コストダウンやグローバル販売ネットワークの強化を図ってきた。今後大きな成長が期待される蓄電池需要に対応すべく、他企業の参画も募るかたちで供給能力の拡大とコストダウンに向けた協議も進めてきたが、2025年9月に協議も中止したという。
徹底の理由としては、NAS電池の特長である長時間・大容量蓄電に対する市場の継続的な需要形成に時間が掛かると見られること、さらに近年の部材コストの高騰、リチウムイオン電池との競争環境の激化など、これらの複合的な要因により将来の安定した操業と収益確保が困難と判断したとしている。
今後、NAS電池の新規製造は行わない方針で、既に受注済みの案件については、顧客の意思を確認の上で保有在庫より順次出荷と納品を進めるとしている。現在顧客と調整を進めている案件についても、発注間近の案件に限り、在庫状況に応じた範囲での納品対応を行う方針。製品に対するアフターサービスについては継続する。なお、今回の事業の撤退により2026年3月期の連結決算に約180億円の特別損失を計上する。
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