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「洋上風力第1ラウンド」で撤退が発生した理由とは? 要因分析と制度見直しの方向性第41回「洋上風力促進WG」(2/3 ページ)

2025年8月に三菱商事らの企業コンソーシアムが事業開発の中止を発表し、大きな話題となった「洋上風力第1ラウンド」。資源エネルギー庁と国土交通省の合同会議において、事業撤退の背景などを調査した報告書が公開された。

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第1ラウンド選定後の事業環境の変化

 合同会議でのヒアリングにおいて、三菱商事は第1ラウンド撤退の理由として、第1ラウンド選定後の事業環境の大きな変化とこれによる建設費の増加を挙げている。

 洋上風力発電事業の建設費用は、主に、風車調達費用(風車製造費、輸送費、施工費等)、洋上工事費用(基礎部材費、基礎設置費、洋上送電ケーブル製造・施工費等)、陸上工事費用(送電ケーブル製造・施工費、変電所建設費等)から構成される。合同会議において三菱商事は、インフレ、為替変動、金利上昇等の事業環境の変化やサプライチェーンの逼迫、選定後の海底地盤調査等による設計や施工方法の見直し等の複合的要因により、第1ラウンド3海域いずれにおいても、風車調達費用、洋上及び陸上工事費用がそれぞれ2倍以上に増加したと報告している。

 実際に、第1ラウンド公募が開始された2020年11月から三菱商事の撤退が公表された2025年8月までの期間における各種物価指数の変化は図2の通りである。


図2.各種物価指数の変化 出典:洋上風力WG

 洋上風力発電設備は他の再エネ電源と比較して、鉄鋼や銅等の資材を大量に調達・使用する必要があるが、国内企業物価指数(鉄鋼)の上昇率は約100%、国内企業物価指数(電力・通信用メタルケーブル)は約72%と上昇率が大きい。

 また現時点、大規模な洋上風力発電事業に使用可能な風車の製造メーカーは、主にGE Vernova、Siemens Gamesa、Vestasの3社であるが、世界的なインフレや大型風車への需要の高まりにより、風車の製造・設置コストも大きく上昇している。


表2.世界的な風車調達費用の上昇 出典:洋上風力WG

 再エネ海域利用法では、選定事業者は認定された公募占用計画に従って事業を実施することが求められており、やむを得ない事情等がある場合のみ、計画の変更が認められる。これにより、選定事業者は風車メーカーやサプライヤー等の変更が困難となり、価格交渉力を確保しづらいことが課題として指摘されている。

 このため、今後のラウンドでは風車メーカー等の変更に柔軟性を確保するとともに、変更を理由とする運転開始時期の遅延にも配慮を行うこととしている。

 さらに為替レートは、同期間に対USドルで約40%、対ユーロでは約30%の円安が進んでいる。日本の洋上風力事業者は現時点、風車等の主要設備機器を輸入に頼っているほか、風車据付船等の特殊船舶の多くを海外から調達しているため、物価指数の上昇に円安が重なり、洋上風力事業者のさらなるコストアップ要因となっている。

 また洋上風力発電は、他の再エネ電源と比較して建設費総額が大きく、事業者は多額の借入を行うことが一般的である。図3のような近年の金利上昇が、建設資金の借入コスト及び事業費全体の増加要因として大きく作用したと考えられる。


図3.金利の推移(20年国債) 出典:洋上風力WG

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