SAF(持続可能な航空燃料)コストの利用者負担 「空港インセンティブ」方式の検討を開始:第1回「持続可能な航空脱炭素化に関する有識者会議」(3/3 ページ)
航空分野の脱炭素化施策として導入検討が進む「SAF(持続可能な航空燃料)」。国土交通省は、新たに「持続可能な航空脱炭素化に関する有識者会議」を設置し、航空輸送サービス利用者全体で広くSAFのコストを負担する仕組みの構築について検討を開始した。
「空港インセンティブ」方式の検討
国際民間航空機関(ICAO)のCORSIA(Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation:国際航空のためのカーボン・オフセットおよび削減制度)では、現在の第1フェーズ(2024〜2026年)は自発的に参加した130カ国(日本を含む)、第2フェーズ(2027〜2035年)は原則すべての ICAO 加盟国にGHG削減義務が課せられる。
航空会社がCORSIA削減義務を順守するためには一定量のSAFを使用する必要があるため、SAFを給油できない空港での離発着を避ける動機が働くこととなる。よって、SAFの供給可否は当該空港の存否だけでなく、その国の国際航空ネットワークの維持の可否にも関わる重要なテーマとされている。
このため、スウェーデン、イタリア、イギリス等では、各空港において、空港使用料等を財源として、航空会社によるSAFの購入費用に対する補助制度を実施している。これにより、補助を行う空港はSAF供給という観点で、補助を実施しない空港に対する優位性を確保している。
具体的な補助の仕組みとして、ロンドン・ヒースロー空港では航空会社より徴収する出発チャージを原資とし、空港にSAFを納品した航空会社に対して、SAFと化石燃料の値差を補う「SAFインセンティブプログラム」を2022年より実施している。
現在日本でも、着陸料、停留料、保安料、旅客施設取扱使用料等の様々な料金が、各空港により設定されており、運賃本体とは別に、直接的/間接的に旅客等から徴収されている。
SAFの新たな「空港インセンティブ」方式では、各空港を徴収主体とし、航空会社が航空利用者から代行徴収する仕組みを想定しており、空港ごとにこれを原資として航空会社へSAFの値差支援を実施する。
また、先述の「Levy」方式と「空港インセンティブ」方式のメリットや課題等を比較したものが表3である。
国交省事務局では、既存の空港使用料との親和性から利用者の「負担感」が抑えられる可能性や、法改正を行わずとも既存制度の延長で制度設計できる可能性を踏まえ、導入初期の手段として、「空港インセンティブ」方式から検討の具体化を進めることとした。
現在、日本の空港はその設置・管理者の違いや国際線の有無等により複数のタイプが存在するが、「空港インセンティブ」の対象とする空港や、料金の徴収対象(旅客・貨物、客席クラス・距離)について検討を行う予定としている。
現在、国際線運賃にオンチケットで賦課されている税金・料金等は、図5のように運賃本体とは別枠で航空券面に記載されている。SAFの新たな料金制度についていずれの方式を採用するとしても、別枠記載になると考えられる。
今後、国交省事務局では諸外国の料金制度の詳細を調査予定としており、石油元売事業者の最終投資決定(FID)に間に合うよう、速やかに結論を得ることが求められる。
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