コスト削減効果が注目される「SD-WAN」だが、導入で得られる利点はさまざまだ。実際にSD-WANを導入した企業の事例から、その利点を紹介する。
Visteonは自動車メーカーのFord Motorから2000年に分離独立し、2019年で創立19年となる。以前は車載用シート、ライト、エアコン部材といった自動車部品を提供していたが、数年前に大きく事業の方向を転換した。Visteonは、製造部門を事業売却し、自動車用のソフトウェア開発とダッシュボード事業に専念することにした。
事業の重心をソースコード共有サイト「GitHub」に移したVisteonは、自社が活用するネットワークの構成を変える必要に迫られた。同社は以前、ベンダー3社のMPLS(マルチプロトコルレベルスイッチング)ベースのネットワークサービスを利用していた。MPLSはパケットにプロトコルのタグ付けをすることでスイッチング(トラフィックの中継・転送)を実施するネットワーク技術で、IP-VPNで利用される。同社は、このネットワーク構成を廃止し、ソフトウェアによってWANを動的に制御する「SD-WAN」を導入することにした。遠隔で作業する同社の開発者はローカル拠点から、クラウドアプリケーションを含むインターネットへ直接接続できるようになった。
同時にVisteonは古いオンプレミスのアプリケーションを廃止し、SaaS(Software as a Service)に移行した。2019年3月にフロリダ州オーランドで開催されたコラボレーション/コミュニケーション関連のイベント「Enterprise Connect」で、同社のIT部門でディレクターを務めるマノジ・セガール氏は次のように語った。「このネットワーク構成では、遠隔拠点にいるユーザーがデータセンターを経由してインターネットに接続する従来の構成よりも、効率が上がる」
Visteonが古いITインフラを廃止したもう一つの理由は、自動運転などの次世代テクノロジーを重視したことだ。同社は、ミシガン州のテスト施設を走行する自動車から、8TBものデータを毎日収集している。「MPLSベースのネットワークでは、このように膨大な量のデータを処理することは不可能だった」とセガール氏は語る。
ネットワークインフラの更改は、Visteonにとって「取り組むべきテーマだった」とセガール氏は振り返る。「とにかく最新のネットワークを使ったインフラが必要だった」(セガール氏)。SD-WANのベンダーにはTata Communicationsを選択した。
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