「脱Windowsでファイルサーバ集約」をオハヨー乳業のグループ全社が決めた理由クラウドを見据えたファイルサーバ集約【前編】

オハヨー乳業のグループ全社は、51拠点に配置していたファイルサーバを2022年に集約した。それと同時に、「Windows Server」を使ったファイルサーバ運用から脱却。その理由と、採用した新たな仕組みとは。

2023年03月08日 05時00分 公開
[遠藤文康TechTargetジャパン]

 業務を支える基本のITシステムである「ファイルサーバ」。その役割はファイルの保管や共有と至ってシンプルだが、従業員にとっての使いやすさや運用のしやすさを高めながら、“理想の形”を作るのは簡単ではない。

 乳製品メーカーのオハヨー乳業や菓子メーカーのカバヤ食品を傘下に持つ日本カバヤ・オハヨーホールディングスは、グループ全社が利用するファイルサーバを全て見直した。同社は全国51拠点に配置していたファイルサーバのほとんどを集約。それと同時に、MicrosoftのサーバOS「Windows Server」と汎用(はんよう)サーバでファイルサーバを構築するという従来のやり方から脱却した。

ファイルサーバ集約と“脱Windows”を決断

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 日本カバヤ・オハヨーホールディングスが51拠点に配置していたファイルサーバは合計で63台だった。同社の傘下にはオハヨー乳業をはじめとする食品事業以外にも、住宅関連事業など業態の異なる企業がある。例えばCAD(コンピュータ支援設計)を使う拠点では、大容量のファイルを大きな遅延(ネットワークのレイテンシ)なく利用したいといった要望があるなど、ファイルサーバに対する拠点ごとの要望は一様ではない。

 「エンドユーザーの利便性や満足度を考慮すると、各拠点にファイルサーバを置くというのが以前の解でした」と、リンク&リンケージでIT事業部の業務を統括する難波 毅氏は語る。リンク&リンケージは日本カバヤ・オハヨーホールディングス傘下の一社で、グループ全体のITや物流を担っている。

 日本カバヤ・オハヨーホールディングスがファイルサーバの集約に踏み切った理由の一つは、「ファイルがどこに保存されているのかを意識しなくてよい状態」を実現したかったからだ。グループ各社はオンプレミスのシステムに加えてクラウドサービスなど多様なシステムを利用するようになっていた。それと同時に、エンドユーザーが利用するファイルが異なるストレージに存在し、ファイルのコピーが複数のストレージに存在する状況も発生していた。

 その結果、どこに何のファイルがあるのかが不明確になるなど、業務の非効率がグループ内で目立ち始めていた。難波氏は「エンドユーザーの立場で考えると、いつでも使える状態を維持するのはもちろんのこと、ストレスなく使えるようにすることが重要になっていました」と語る。

 日本カバヤ・オハヨーホールディングスがファイルサーバの集約を決めた背景には、各拠点にファイルサーバを配置していることに伴うリスクへの懸念もあった。セキュリティインシデントや自然災害の被害を受ける可能性は、ファイルサーバが存在する拠点が多いほど高まりやすくなる。実際、2018年に発生した「平成30年7月豪雨」(西日本豪雨)では、カバヤ食品の岡山工場が被災して操業が停止。2階にあったファイルサーバは浸水を免れたものの、電力を失ったことでファイルサーバが利用できない状態になり、業務に支障を来す経験をしたのだという。

まずはクラウドサービスを選択肢に

 ファイルサーバの集約に当たり、日本カバヤ・オハヨーホールディングスは運用面の課題も併せて見直すことにした。同社は以前から、Windows Serverと汎用サーバでファイルサーバを構築する方法を続けてきたものの、昨今は以下の点が大きな懸念になりつつあった。

  • OSのさまざまな脆弱(ぜいじゃく)性が報告されており、攻撃を受けるリスクが広がっている
  • 脆弱性に対処するための運用負荷が掛かる
  • 定期的に実施するOSの更新作業で各種トラブルが発生しやすい
  • ファイルサーバ専用機ではなく汎用サーバを使うと機器点数が増えがちで、故障の発生リスクが高まる

 日本カバヤ・オハヨーホールディングスがファイルサーバの移行先としてまず候補にしたのは、クラウドサービスの利用だった。だがグループ内にはCADのデータや工場の稼働データを扱う拠点があり、クラウドサービスを全面的に利用する決断はできなかった。クラウドサービスの利用で発生しがちなネットワークの遅延や、想定外のダウンタイム(停止時間)を許容できないことが理由だ。業務の効率性や事業継続を重視し、同社はオンプレミスのシステムを中心にしたファイルサーバ集約を進めることにした。

 新ファイルサーバを担うシステムとして、日本カバヤ・オハヨーホールディングスはNetAppのストレージOS「ONTAP」を選択した。データセンターには、SSDのみで構成するオールフラッシュストレージアレイ「NetApp AFF A250」と、HDDのみで構成するストレージアレイ「NetApp FAS2720」を配置し、データの使用頻度に応じて双方を使い分ける階層化の仕組みを採用。拠点でのファイルサーバ運用を継続する必要のある拠点には、ONTAPを汎用サーバで稼働させることのできるソフトウェア「ONTAP Select」、またはNetApp FAS2720を導入した。

 その他、バックアップおよびDR(災害復旧)用として、日本カバヤ・オハヨーホールディングスはONTAPをクラウドサービスで稼働させるNetAppのソフトウェア「NetApp Cloud Volumes ONTAP」を導入。Microsoftのオブジェクトストレージ「Azure Blob Storage」へ、データセンターからデータを転送する構成を採用した。

 日本カバヤ・オハヨーホールディングスのファイルサーバ移行作業は、2022年8月に全てが完了。ファイルサーバの設置拠点数は以前の51拠点から8拠点に、台数は以前の63台から11台に集約した。


 中編は、日本カバヤ・オハヨーホールディングスがNetAppの製品群を選定した理由や、利用している仕組みを紹介する。

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