ADSL完全導入ガイド(3/6)
ADSLのスピードを落とすのは……

 ADSLは,高い周波数帯を利用することから,メタル線上での信号の減衰が大きく,電話局とユーザー間の距離にデータ通信速度がかなり左右される。メタル線の距離はおおよそ4キロメートル程度がADSLの実用限界といわれており,もちろん4キロも離れていると1Mbpsといった高速なデータ通信速度はまず期待できない。データ通信速度は,受信ですら300〜500Kbpsといった例も多く,8Mbpsや1.5Mbpsといった最大データ通信速度を鵜呑みにしてはいけない。

 また,ADSLは高い周波数帯を使用することと,そもそも電話局とユーザー間のメタル線が高い周波数帯のデータ送受信を物理的に考慮していないことから(適切なシールドが施されていないなど)外的影響を受けやすい。これにより,電話局とユーザー間のメタル線の距離が3キロ程度でも実用的なデータ通信速度にならず,事実上利用できない場合もある。

 また,日本で特に問題視されているのがISDN回線との干渉だ。もともと米国で開発されたADSLは,米国のISDN(エコーキャンセラ方式)とは異なる周波数帯を利用する。しかし,日本は独自のISDN(ピンポン伝送方式)を採用したため,使う周波数帯が重なってしまったのだ。アナログ回線もISDN回線も原則としては同じメタル線を使用しており,電話局からユーザーの間は混在して敷設されている。ただし,日本ではISDN回線との干渉を抑えたADSL規格(AnnexC)を採用している場合がほとんど(東京めたりっく通信やYahoo! BBなど一部の事業者は,海外で多く使われるAnnex Aを利用している)で,従来言われていたほど問題視する必要はないようだ。

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出所:NTT東日本の資料より作成

 なお,筆者はアナログ回線1本とISDN回線2本を引き込んだ家屋でADSLを利用しているが,実測で最大受信データ通信速度は1.2Mbpsを記録しており,ほとんどISDN回線の影響は受けていないといえる。しかし,別のユーザーの例では,同じマンションにISDN回線が複数引かれているため,100Kbps程度しかスピードが出ないといったこともあるようだ。もちろん,この場合もISDNだけが原因とは言い切れない。引かれている回線の品質や電話局からの距離,その間の分岐,構内で電話回線がどのように引かれているか(同じ束にISDNが入っていると影響を受けやすい)など,さまざまな要因が複合的に影響しているのだろう。この点は,「引いてみなければ分からない」のが現実である。

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[坪山博貴,ITmedia]

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