行き場を失った(?)市販ADSLモデム

フルレート(G.dmt)対応のADSLモデムが続々と発表されている。しかし,8Mbpsコースを設けている事業者の中に,市販のADSLモデムを利用できる「モデムなしメニュー」を設定しているところがない。

【国内記事】 2001年11月8日更新

 今年2月にスタートしたADSL端末の売り切り制だが,未だ店頭でADSLモデムを求める人はほとんどいない。多くのADSL事業者が8MbpsのG.dmtに移行するなかで,市場環境は変化し,モデムベンダーが抱く「かつての56KbpsモデムやISDN TAのように,店頭で気軽に端末を購入できるようにしたい」という目論見は,早くも暗礁に乗り上げてしまったかにみえる。

 6月に発表されたYahoo! BBのインパクトは8Mbpsサービスへの移行を早め,G.liteのモデムを購入する意味は急速に薄れた。結果的にいったんは盛り上がりかけた市場に水を差すこととなり,「モデムの市販で先行したオムロンやメルコも戸惑っていた」(あるモデムベンダー)。

 最近は,G.lite/G.dmt,あるいはAnnex A/Cで兼用できるチップが供給され,モデムもフルレート対応へと移りつつある。しかし,ここで別の問題が浮上する。8Mbpsコースを設けている事業者の中に,市販のADSLモデムを利用できる「モデムなしメニュー」を設定しているところがないのだ。

チップメーカーとサポートする規格

TI Globespan Alcatel Centillium Conexant ST
PCI フルレートAnnex A フルレートAnnex A フルレートAnnex A - - -
USB フルレートAnnex A フルレートAnnex A/B/C - G.lite Annex C フルレートAnnex A -
イーサネット - - フルレートAnnex A フルレートAnnex C - フルレートAnnex A

 例えば,クリエイティブメディアが販売しているG.dmt対応のADSLモデム内蔵ルータ「BritePort Router 8100C」は,「J-DSL」(ODN),「コアラADSL」(コアラ),「KブロードADSL」(近鉄ケーブルネットワーク)の3つのサービスに対応している。が,これらの接続事業者が現時点で提供しているのは,すべてG.liteのサービス。8Mbps対応のスペックを持ちながら,それを活かす機会を与えられてはいない。

 あるモデムベンダーのマーケティング担当者は,今の市場環境について,こう指摘する。「Yahoo! BBは,モデムの卸売りがヤフーの収益源となっているため,モデムなしメニューが設けられる可能性は極めて低い。NTT地域会社は相変わらず“門前払い”状態で,接続検証に協力してくれない」。残る有力事業者は,アッカ・ネットワークス,イー・アクセスなどだが,こちらもフルレートサービスに限り,レンタルもしくは自社経由で売り切るかのどちらかとなっている。

発表済みのG.dmt Annex C対応モデム

メーカー 製品名(詳細リンク)
メルコ IGM-U8000AC
メルコ WLAR-8000ACG
クリエイティブメディア Broadband Blaster BlitePort Router 8100C
鷹山 ウェブディストリビュータ
BLJ Tz5100E
東京ウェブリンク TERA100U

 この状況には,日本のADSL市場が拡大するのを虎視眈々と狙っていた海外ベンダーも肩すかしを食らったようだ。台湾GVC CORPORATIONのSonya Lu氏は,2002年夏頃まで日本のリテール市場に製品を投入できないと予想する。同社は,ADSLモデム内蔵の4ポートルータなどを手掛けており,日本で使われているAnnex C/Aともに対応する準備を既に整えた。「HATS推進委員会とNTTが個別に仕様を策定中と聞いている。それまでは,ADSL接続事業者やISPの標準採用を狙って営業活動を進めるしかない」(Lu氏)。

GVC CORPORATIONのADSLモデム製品群

 ただし,HATS推進委員会は,あくまで接続を検証する場であり,接続を保証する認定機関ではない。たとえ“接続に問題なし”と判断された場合でも,製品パッケージに「対応マーク」を貼るのはADSL接続事業者だ。

もっと良くなるはず

 アッカ・ネットワークスでは,市販モデムの認定について「検討段階にも至っていない状況」という。同社は「メーカーのサポートが十分とはいえず,また市場にも製品があまり出回っていない」と指摘。当面は現状を維持する構えだ。

 一方,状況の異なる事業者もあった。イー・アクセスは,「接続検証は進んでおり,既に事務処理を待つだけの製品もある」と話す。同社が認定するフルレートサービス対応モデムの第1号は,前述のクリエイティブメディア「BritePort」になる見込みだ。

「われわれは,モデムで利益を上げる仕組みは持っていない。接続検証を進め,各ISPにも早く“モデムなし”メニューを設けてほしい」(イー・アクセス)。

 ただし,G.dmt Annex C対応のADSLモデムならイー・アクセスのサービスで利用可能になるかと言えば,「実際はそんなに甘くない」(同社)。

「接続はできても,問題は“もっと良くなるはず”という点だ。ファームウェアの出来が,接続時のクオリティを大きく左右する」(同社)。回線事業者にとって,速度と品質は,サポートと並ぶ重要課題。また,アッカの指摘から分かるように,接続事業者としては,個々のモデムに関するサポートはモデムベンダー側に任せたい,という意図もある。

 逆にいえば,モデムベンダーは製品のブラッシュアップにくわえ,サポート体制の充実を図る必要があるということだ。G.dmt対応のADSLモデムが店頭に並び,ユーザーが個々のニーズに合った製品を選べるようになるには,もう少し時間が必要らしい。

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[芹澤隆徳,ITmedia]

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