リビング＋：Webアクセス速度とスループットの違い　～インターコム

リビング＋：特集

2003/07/10 23:59:00 更新

特集：スピード測定狂時代
Webアクセス速度とスループットの違い　～インターコム

誰もが気にする、スループット。しかしインターコムは、Webアクセス速度をこそ、気にすべきだと説く。背景には、世間に流通する「スピード高速化ソフト」をめぐる攻防がある。

　スピード測定サイトといえば、一般に実効スループットを測る。これは、以前に説明したとおりだ（特集第1回参照）。しかし、スループットではなく“Webアクセススピードを測る”とうたう、一風変わったサイトがある。

　インターコムのサイト内に開設されている、「Webアクセススピードテスト」がそれだ。試してみると分かるが、連続表示されるWebページを読み込むことで、一定のWebブラウジングに要する秒数を測定することができる。

サイトでは、ActiveXコントロールを利用して自動測定を行う

　同社はなぜ、わざわざユーザーにWebアクセス速度を測らせるのか。背景には、昨今世間で流通している「スピード高速化ソフト」の販売をめぐっての、事業者間の攻防があるようだ。サイトを運営する、インターコムに話を聞いた。

業界で先頭を走る「驚速ADSL」への対抗策

　ADSLの手軽な高速化を望むユーザーの間で、人気を集めたのがスピード高速化ソフトだ。これは、PC内部のレジストリを最適な設定に書き換えるもの。具体的には、データのパケットサイズの上限を決めるパラメータ「MTU」や、データを受け取る時のバッファ量を表す「RWIN」などを最適化する。

　関係者の話を聞く限り、現在売上ベースでトップを走っているのが、ソースネクストが販売する「驚速ADSL」のようだ（レビュー記事参照）。インターコムは、これに対抗すべく、「Super ADSL＆CATVブースター」を販売している。

同社の「Super ADSL＆CATVブースター」製品情報ページ。こちらから、体験版をダウンロードできる

　同ソフトは、上述のパラメータ最適化に加えて、Webページの先読みによる体感的速度の向上を図る。また、バナー広告の表示をシャットアウトできるほか、一本のソフトでFTTH／ADSL／CATVなどの環境に対応するなどして、驚速ADSLとの差別化を実現しているという。

　この差別化ポイントを広告するために、前述の測定サイトが登場するわけだ。インターコムのマーケティング本部次長、鈴木修氏は、「サイトに“営業トーク”をさせるために構築した」、とその狙いを話した。

Webブラウズ速度の向上を確認

　「Webアクセススピードテスト」で測定すると、通常のスループットが算出されるほかに、Webページの読み込み速度が算出される。測定にあたっては、画像などが掲載された“測定用HTMLページ”が10枚用意されており、これを表示させるまでに要した時間が表示される。

　これらの測定用ページには、表示こそしていないものの、それぞれハイパーリンクが貼られている。つまり、“先読みが効く”環境になっている。

　ユーザーは、一度Webアクセス速度を測定し“10秒”と表示されただけでは、どれほど速いのか見当がつかない。しかしこの数字が、Super ADSL＆CATV ブースターを導入後に“5秒”となれば、相対的な高速化を実感できるわけだ。

　ユーザーが同社サイトで測定 → 体験版をダウンロード → 高速化を確認、という手順を踏むようなら、製品の売上につながると容易に予想できる。同社が狙うのも、まさにこうしたこと。

　同社パーソナルシステム事業部開発部、プロダクトマネージャーの樋口健一氏は「いくらスループットを上げても、ユーザー環境の快適さに直結するとはいえない」と話す。「回線からデータを高速にダウンロードしても、クライアントPCレベルでブラウジング速度が遅ければ、そこがボトルネックになりうる」。Webアクセス速度を向上させることこそが、体感速度の直接的な向上につながると説いた。