リビング+:特集 2003/08/25 23:59:00 更新

特集:リネージュにおける社会心理学的考察
ゲーム社会を“信頼”するリネージュユーザー

ネットゲームユーザーは、オンライン上の“仮想社会の住人”だ。その行動様式は、独特なものである場合も多い。東京大学の池田教授の研究結果から、彼らの実態に社会心理学的にアプローチしよう。

 ネットゲームユーザーは、オンライン上にある“仮想社会の住人”だ。彼らは、顔を見たこともない相手と会話し、団結し、時に争い、日々のゲームを楽しむ。その行動様式は、はたから見ただけでは理解しがたい、独特なものである場合も多い。

 この種のネットコミュニケーションは、実世界でのコミュニケーションを第一義に考える人間から、非難の対象になりやすい。いわく、「ネットゲームへの依存が、社会的ひきこもりを助長する」「ネット上での自己実現を求めるあまり、リアルマネートレードなど、実社会に影響がおよぶ違法行為に走るユーザーがいる」……などだ。メディアの中でも、こうした論調の媒体は少なくない。

 そんな中で、7月31日に東京大学大学院の人文社会系研究科、池田謙一教授が発表した研究結果(記事参照)は、興味深いものがあった。これは、ネットゲームユーザーは必ずしも、世間で非難されるような“オタク”ではない、というもの。もちろん、賛否両論あるところで、読者からの反響も大きかった(記事参照)。

 ……ところで、その記事でお伝えした内容は、実は池田教授の研究結果のごく一部にすぎない。一番インパクトの大きい部分だけ、抜粋して紹介したわけだが、実際にはほかにも、知的好奇心をそそられる事実が多数報告されていた。

 そこで今回、同氏の調査内容を改めて紹介する。はたしてネットゲームユーザーは、どのような特性を持ち、どのように活動しているのか? 同教授の示すデータから、実態に踏み込んでみたい。

8月25日:ゲーム社会を“信頼”するリネージュユーザー
8月26日:恋をする韓国人、恋をしない日本人
8月27日:“リアルマネートレード”をめぐり分かれる意見
8月28日:ネット上で、人は完全な別人格になれない――池田教授

リネージュユーザーの特性

 池田氏は2003年に、国内のリネージュユーザー1362人についてアンケート調査を行っている。それによると、リネージュユーザーはほかのオンラインゲームユーザー同様、積極的に情報発信を行う傾向を持つ。

 まず、ホームページ所有率が高い。リネージュユーザーで「ホームページを持っている」と回答したのは、実に全体の約8割。同氏が2002年に山梨のインターネットユーザーを対象に行った調査では、ホームページ所有率が4割に満たなかったから、一般のネットユーザーよりはるかに高い比率といえる。池田氏によれば、「ホームページの大部分は、リネージュに関連するもの」だという。

 また、リネージュユーザーは知人とPC以外でも交流している。リネージュの仲間と携帯で「毎日携帯メールでやりとりする」と回答したのは、全体の約1割。「週に1度以上、電話でやりとりする」と答えたユーザーの比率は、全体の2割を超えている。

 また、大きな特徴としてネット上での「信頼感」「互酬性」が高いことも挙げられる。これについては、より詳しく見てみよう。

信頼感・互酬性の高さ

 池田氏は、アフリカ南部にある犯罪率・失業率ともに高い国家を訪問した際を思い返しながら、こう話す。

 「治安が悪い国といっても、なにも全員が犯罪者というわけではない。むしろ、悪人は1000人に1人ぐらいの割合のはず。しかし、私にとっては周り中が危険な人間に思えて仕方がない。つまり、その国家での“信頼感”が失われていた」。

 信頼感とは、個人が特定の社会で周囲をどれだけ信用することができるか、ということ。互酬性とは、読んで字のごとく、互いにどれだけ利益を与えあうことができるか、ということだ。Putnamは「社会関係資本論」(1993、2000)の中で、「信頼感や互酬性を高めることが『よき市民』を生み出すのだが〜」と述べている。

 そして、リネージュユーザーはネット社会での信頼感、互酬性が高い。

 再度、山梨のインターネットユーザーと比較してみよう。一般社会において「たいていの人は信頼できる」と考えるユーザーの割合は、山梨のネットユーザーも、リネージュユーザーも、そう変わらない。

 ところが、「“インターネットでは”たいていの人は信頼できる」と考えるユーザーの比率では、両者の間で大きな違いが出た。たいていの人間は「信頼できない」と答えたユーザーの比率は、山梨の場合、全体の6割を超えた。しかしリネージュの場合「信頼できない」は、3割強に留まり、きれいに逆転する結果となった。

 「一般ユーザーはネット社会を、“治安の悪い国家”だと考えている。しかしリネージュユーザーは、自分が苦境にあったら、誰かが助けてくれるだろうと考えている」(池田氏)。

血盟メンバーへの信頼があるほど……

 この点を、もう少し深く調べてみよう。リネージュユーザーが、信頼感や互酬性を高める要因となっているものは何だろうか。

 アンケートから統計的分析を行ったところ、「信頼感・互酬性」に直結するものは「血盟メンバーへの信頼(*)」だと判明した。すなわち、「血盟メンバーを信頼できる」と考えるユーザーほど、信頼感や互酬性がより高い傾向が見られたという。

*血盟=ゲーム内で行動をともにするグループ単位のこと

 また、日常生活で感じている信頼感・互酬性との相関を見たところ、信頼感は日常生活で高いほど、ゲーム内でも高くなる傾向があったが、互酬性は日常生活と全く関係がなかった。

 池田氏はここから、リネージュ内での経験が、一般的な信頼感などとどう結びつくか、と考える。これは、とりもなおさず、オンラインゲーム上での社会的行動と、一般社会での行動とが結びつくか……という、問いかけでもある。

 「信頼感は(一般社会との)相互流通性が高いが、互酬性はネットに限定的なものかもしれない」。上記のデータから、池田氏はこう考察した(続く)。

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[杉浦正武,ITmedia]



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