フォーカスを「メトロアクセス」に向けるシスコ

【国内記事】2002.01.30

 シスコシステムズ(シスコ)は1月30日,正式に10ギガビットイーサネット(10GbE)対応モジュールの国内出荷を発表した。同社は過去にもたびたび,展示会のデモンストレーションなどで10GbEモジュールを稼働させており,他社製品との接続性も実演済み。その意味では「ようやく」の登場といえるだろう。

 今回出荷が発表された10GbEモジュールは,Catalyst6500シリーズおよびCisco 7600シリーズ向けだ。ほぼ技術の概要が固まり,正式な承認を待つだけのIEEE 802.3aeドラフトに準拠した「10GBASE-LRモジュール」と,シスコ独自の実装に基づく「10GBASE-EX4モジュール」の2タイプが提供される。なお10GbE標準仕様では,他にもいくつかの規格が定められているが,それらへの対応については言及されなかった。

 このうち10GBASE-LRモジュールは,802.3aeドラフト準拠ということから他社製品との接続性について期待が持てるが,伝送距離は最大10kmに限られる。一方10GBASE-EX4モジュールを用いた場合は,シスコ製品どうしの接続に限られるが,最大で50kmまでの伝送が可能だ。価格はそれぞれ1093万1000円,1345万5000円となっている。

 同社によれば,国内では大学のキャンパスネットワークを中心に,数百枚規模でモジュールの導入が進んでいるという。

SONETなみの耐障害性をMPLS網で実現

 同時に,MPLS機能の拡張も発表された。具体的には,ATMやフレームリレー(FR)などのレイヤ2プロトコルをMPLSに統合する「AToM(Any Transport over MPLS)」,MPLSネットワーク上で,DiffServを組み合わせてQoSを実現する「Cisco MPLS DiffServe Traffic Engineering(DS-TE)」,そして,最短で50ミリ秒での迂回路切り替えを行い,SONET並みの耐障害性を実現する「MPLS Fast Reroute」の3つである。

 今回の拡張機能は,Cisco 7000シリーズ,Cisco 10000/10700/12000向けに順次提供される予定だ。

 一連の発表に合わせ,「Cisco Network Solution Seminar '02」の会場で行われたプレス説明会の席では,米シスコシステムズ,ITPプロダクトマーケティングマネジャーのアザール・サイード氏によって,一連のMPLS拡張に関する説明が行われた。

 AToMは,名前のとおりMPLSネットワーク上にさまざまなタイプのレイヤ2フレームを伝送する技術。サイード氏によれば,既存の回線を有効活用できることがメリットとなるほか,IPSecやL2TPといった他のレイヤ2トンネリング技術に比べてQoSやトラフィックエンジニアリングの点で優れているという。まずEoMPLS(Ethernet over MPLS)とATM over MPLSからサポートされ,追ってFRやPPP,HDLCにも対応を拡大する計画だ。

 またDiffServe Traffic Engineeringでは,DiffServによって指定した優先順位に準じてMPLSパスや帯域を指定し,結果としてQoSを実現できる。たとえばVoIPなどの遅延に厳しいアプリケーションは条件のいいパスを選択し,それ以外のアプリケーションは別のパスを通すといった設定を行えるため,SLAの実現にも役立つ機能だという。

 サイード氏は「MPLSは当初はMPLS-VPN(IP-VPN)の観点から注目を集めたが,現在はトラフィックエンジニアリングが関心を集めつつある。将来的には,帯域保証やオプティカルとの組み合わせ,それにAToMが焦点となるだろう」と語った。

ETTX実現のための製品も準備中

 この説明会の席では,シスコのメトロ向け戦略も披露された。同社のマーケティング統轄 インターネットスイッチング&アクセスソリューション本部長,山中理恵氏によれば,10GbEに代表される高速性,ロングリーチイーサネット(LRE)をはじめとする伝送距離,それにQoSやセキュリティといったさまざまなサービスを満たすソリューションを提供していくという。

 同氏はさらに,今後はメトロバックボーンの部分よりも,オフィスや家庭とメトロバックボーンをつなぐ「アクセス」の部分に機会を見出していると述べた。これを実現する鍵となる技術が現在仕様策定中のIEEE 802.3ah,EFM(Ethernet First Mile)である。

 シスコでは,イーサネットを家庭,オフィス,テナントビルなど,あらゆる場所にイーサネットを延長するETTX(Ethernet To The X)によって,ボトルネック部分を解消させることを狙っており,既にETTHを実現するための製品を準備しているともいう。先日発表されたばかりのCatalyst 3550/2950をはじめとするスイッチ製品群,既に提供済みのLREといったソリューションを合わせて,メトロ市場に提供していく計画だ。

「IPバックボーンにおける蓄積と,MPLSのリーダーシップがシスコの強み。オプティカルを含め,シームレスなメトロ向けソリューションを提供する」(山中氏)

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[高橋睦美,ITmedia]