エンタープライズ:トピックス 2002年6月18日更新

コンパック、グリッドコンピューティング構築事業に参入

 コンパックコンピュータは6月18日、グリッドコンピューティングシステム構築事業に参入し、本社に「コンパック・グリッド・サポートセンター」を開設したと発表した。同社の提唱するグリッドコンピューティングはまだ研究段階にあり、分散して存在するITリソースの利用率を平準化できるメリットを生かしたり、今後は、製造業の在庫管理、サプライチェーンなどをはじめとするビジネスへの利用に向けて、パフォーマンスやセキュリティなど技術的な要件を1つずつ満たしていくという。

 同社テクニカルサポート本部兼HPTC推進部本部長の中野守氏は、「グリッドは、インターネットの登場、アプリケーションの統合を進めたWebブラウザの次に来る、次世代技術のリーダー」と話す。

 コンパックは、グリッドコンピューティングを「大規模分散コンピューティング」と表現する。地理的な遠隔地に設置されたサーバやパソコンも含め、複数のコンピュータをWANなどのネットワークを通じて統合し、処理を分散させる大規模なコンピューティング環境だ。

 例えば、東京、大阪、名古屋の3カ所に設置されているサーバを連携させたグリッド環境を構築する。そこでは、ある複雑な科学計算プログラムを処理する場合に、3サイトのサーバが1つの処理を並列して分担できるため、負荷が特定のコンピュータに偏ることがない。「空いている」CPUを動的に利用することでITリソースを無駄なく活用していこうという考えだ。欧米では既に多くのプロジェクトが進行しており、国内でも、独立行政法人の産業技術総合研究所グリッド研究センターの取り組みをはじめ、国立大学研究所間の高速ネットワークサービスであるNII Super SINETやITBL、つくばWANなど、さまざまな取り組みが行われている。

 発表されたコンパック・グリッド・サポートセンターは、米国や欧州に開設されている同センターと高速接続し、検証実験などを行う。また、東京、大阪、つくばの事業所内センターとも接続し、グリッドコンピューティング分野の標準的なオープンソースソフトウェア「Globus Toolkit」や、米アバキの「AVAKI」などを用いたデモ環境を構築するという。

 GlobusやAVAKIは、分散環境を統合するためのファイル管理やジョブ管理機能を持っている。同社は、同社の64ビットUNIXサーバ「Alpha Server」や、IAサーバの「ProLiant」との動作確認や検証作業を重ね、必要な機能の新規開発なども行っていくという。

iPAQでグリッド環境をモーバイルでも利用

 また、クライアントデバイスでは、同社のiPAQ Pocket PCを使ったグリッド環境が紹介された。グリッド環境での基本性能となる認証や検索、アプリケーションの起動、コンピュータの監視機能をiPAQ上に実装し、モーバイル環境からコンピュータ資源を利用できることが紹介されている。

PDAを利用したグリッド環境で、コンピュータ資源の監視を行っている

 同社は、現在、マイクロソフトやIBM、サン・マイクロシステムズによりWebサービスが充実してきているとする。グリッドコンピューティングは、研究所間のコンピューター連携などを目指して以前から各社が開発していたが、Webサービスはコンセプトは似ているものの、その起源はグリッドコンピューティングとは異なっており、登場したのもつい最近のことだ。

 そのWebサービスともうまく協調して、分散するコンピュータリソースを共有化するグリッドコンピューティングが、将来のITインフラの柱になると同社は力を込めて話した。

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[怒賀新也 ,ITmedia]