エンタープライズ:ニュース 2002/07/09 22:11:00 更新


正式出荷となったItanium 2、その真価は?

7月8日の北米での正式リリースに合わせ、インテルは7月9日、「Itanium 2」プロセッサの正式出荷を発表した。米インテルのリチャード・スコット氏は発表会の席で、「Itanium 2はエンタープライズの要件を意識したプロセッサ。競合他社の製品に比べ、高いコストパフォーマンスを実現する」と述べている。

 7月8日の北米での正式リリースに合わせ、インテルは7月9日、「Itanium 2」プロセッサの正式出荷を発表した。米インテルのリチャード・スコット氏(エンタープライズプラットフォーム事業本部、マーケティングディレクタ)は発表会の席で、「Itanium 2はエンタープライズの要件を意識したプロセッサ。競合他社の製品に比べ、高いコストパフォーマンスを実現する」と述べている。

 これまでたびたび紹介されているとおり、Itanium 2は、IA-64アーキテクチャを採用した「Itanium」の第2世代だ。「McKinley」というコードネームに代わる正式なブランド名である。

 Itanium 2のクロック数は、1GHzと900MHzの2種類。Itanium同様EPICアーキテクチャをベースにしているが、400MHzのシステムバスを採用したほか、3次キャッシュのサイズも1.5MB〜3MBに強化している。この結果、初代Itaniumを大きく上回るパフォーマンスが実現されており、「サン・マイクロシステムズなどの競合製品よりも低いコストで、それらをはるかに上回る処理能力を実現する」(スコット氏)

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会場に展示されたItanium 2プロセッサ

 なおインテルでは、Itanium 2に続くプロセッサ群を並行して開発中だ。2003年には0.13ミクロン・プロセスのテクノロジで実現される「Madison/Deerfield」が、また2004年には90ナノメートル・プロセスをベースとした「Montecito」が登場する計画である。これら将来のCPUとItanium 2ではソケットの互換性を維持するため、顧客が効率よく投資を行えることもメリットになるという。

 Itanium 2の価格は、1GHz、3次キャッシュ3MB搭載で52万5080円(1000個受注時)だ。なお、Itanium 2用のチップセット「Intel E8870」の正式発表は今年秋の予定という。

Itanium 2搭載サーバも登場

 Itanium 2の出荷に合わせて、インテルの複数のパートナー企業が、Itanium 2を搭載した新サーバ製品を発表した。発表会場では、EPICアーキテクチャの親の1人ともいえる日本ヒューレット・パッカード(HP)がチップセット「zx1」を搭載したIA-64サーバを披露したほか(別記事参照)、NEC、日立製作所が正式にItanium 2搭載のハイエンドサーバ製品を発表した。

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 このうちNECの「TX7/i9000」「TX7/i6000」シリーズは、「AsAmA」のコードネームで開発されてきた製品で、最大32CPUの搭載が可能だ。HP-UX、Linuxのほか、64bit版 Windows .NET Serverにも対応するという。

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コードネーム「AsAmA」で知られたIA-64サーバ

 また日立製作所の新製品「HA8500シリーズ」(別記事参照)も同様に、この3つのプラットフォームに対応している。いずれも異なる技術だが、ユーザーがニーズに応じてパーティション構成を変更し、1つのシステムで3つのOS同時に稼働できる点が特徴という。NECの製品では4CPUごとに、また日立のHA8500シリーズではさらにきめ細かくパーティショニングが行えるという。

対応アプリが出揃うのはいつ?

 初代Itaniumは「テストチップ」という位置付けに終わったが、インテルはItanium 2で、膨大な計算を必要とするゲノム関連企業や科学研究機関のみならず、ERPやSCM、CAE、大規模データベースといった基幹アプリケーションのプラットフォームとしての採用を期待している。この最終ゴールに向けて、OS/アプリケーション関連でも進展が見られた。

 まずはマイクロソフトである。同社はこの日、8月上旬に64ビット版のサーバ版OS、「Windows Advanced Server Limited Edition 1.2」日本語版を、OEMメーカー向けに出荷することを発表した。8CPUまでに対応し、最大64GBのメモリをサポートするという。

 同社は合わせて、来年末に登場予定の「Windows .NET Server」だけでなく、64ビット版SQLサーバとなる「SQL Server 2000 Enterprise Edition 64bit版」を提供し、Itanium 2のサポートを拡大する計画を明らかにした。

 一方米オラクルも、別記事のとおり、Itanium 2に対応した「Oracle9i Database」のベータプログラムを開始することを発表した。発表会に同席した日本オラクルの新宅正明社長は、初代Itanium対応のOracle Developer Releaseのダウンロード数が2万2000本に上ったことを指摘。64bit版LinuxやHP-UXも重要だが、「Windows .NET ServerはOracle 9iにとって大きな割合を占める。オラクルは引き続き今後も、Itanium環境をサポートしていく」と述べた。

 だが、それ以外のアプリケーションとなると、まだ時間がかかりそうだ。インテルによると、BEA WebLogic、i2 Supply Chain/Factory Planner、IBM DB2やWebsphere、SAP R/3やSASといったアプリケーションのItanium 2対応が進められているというが、おそらく出揃うのは今年後半から来年にかけてのことと見られる。

 エンタープライズを主要なターゲットとしたItanium 2が、インテルの他のプロセッサと異なるのは、IA-32ベースのXeonとはアーキテクチャが異なるがゆえに、テストも含めると、その移行に多くの時間とコストがかかると見られる点だ。インテルとパートナー企業がその懸念を払拭できるかどうかが、Itanium 2の今後を左右するだろう。

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[高橋睦美,ITmedia]