エンタープライズ:インタビュー 2002/08/19 20:09:00 更新


Interview:「32ビットエントリーサーバ市場は大きなチャンス」とサンの執行副社長

サンで初となる汎用Linuxサーバ「Sun LX50」が早くも国内発表された。その戦略転換は、エンタープライズ市場に激震を引き起こすのだろうか。マーケティングとビジネス開発担当執行副社長、マーク・トリバー氏に話を聞いた。

先週、サンフランシスコのLinuxWorld Conference & Expoで発表されたサン・マイクロシステムズとしては初めてとなる汎用Linuxサーバ「Sun LX50」が早くも国内発表された。今年2月、スコット・マクニーリーCEOがペンギンのかぶりものをするなどして話題を振りまきながら、サンはLinux戦略をアピールした。その戦略転換は、エンタープライズ市場に激震を引き起こすのだろうか。サンで戦略の立案から製品や事業の遂行まで統括する、マーケティングとビジネス開発担当執行副社長、マーク・トリバー氏に話を聞いた。彼はチーフ・ストラテジー・オフィサーの肩書きも持つ。

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「すべての部門にわたって戦略を立案し、それを遂行していく仕事にエキサイトしている」とトリバー氏。7月1日に新組織が発足し、彼が率いている

ZDNet 今回、東京でも発表した「Sun LX50」サーバのマグニチュードはどれくらいでしょうか? 汎用Linuxサーバは初めてでしょうが、インテルプロセッサやLinux OSの採用は、初めてというわけではありません。

トリバー サンフランシスコ地震に匹敵するくらいのマグニチュードです(編集部注:1989年はマグニチュード6.9)。

 LX50サーバでわれわれは、32ビットのエントリーサーバ市場に立ち返ります。今はWindowsが支配しているこの市場は、300万から400万台という大規模なもので、サンにとっては大きなチャンスです。

 LX50サーバでは、オープンソースのやり方にこだわるユーザー向けにLinuxを提供するだけでなく、エッジサーバでも顧客が引き続きSolarisオペレーティング環境を使い続けられるよう、x86版Solarisも用意しました。これはわれわれにとって重要な決断でした。32ビットのエントリーサーバでもSolarisを提供することで、Solarisの優位さをより強固なものにすることができるからです。

 Sun ONEミドルウェアスタックを提供することで、アプリケーションから見たプロセッサやOSの違いは吸収し、64ビットへの移行もスムーズに行えるようにします。

ZDNet 今後、ミッドレンジ以上のプラットフォームでもLinuxの採用は進むのでしょうか。

トリバー LX50のターゲットははっきりしています。さまざまなデバイスとデータセンターをつなぐエッジです。ステートレスなアプリケーションが稼動し、水平的な拡張性が、ローコストで求められているところで、そのための最適なソリューションとしてLinuxを採用しました。

 工場の生産管理やコールセンターのCRMのような分野には、SPARCプロセッサ/Solarisによる対称型マルチプロセッシングという、垂直型の拡張性に最も優れ、堅牢なSun Fireサーバがあります。

 IBMがLinuxをメインフレームに至るまですべてのプラットフォームでサポートするのは、複数のアーキテクチャ、複数のプラットフォーム、そして複数のOSで抱えている問題を解決しようとしているからです。身から出たさび、でしょう。Linux本来の使い方ではありません。

 サンはこれまでSPARC/Solarisによって「ワン・バイナリ・モデル」という完全な互換性をエンドツーエンドで提供してきました。ですから、Linuxをありのままの姿で利用できるのです。

ZDNet それではデスクトップ市場はどうでしょうか。LinuxをサポートするStarOfficeやそのオープンソース版であるOpenOfficeは、サンにどのようなチャンスをもたらすのですか。

トリバー デスクトップスイートは、サンに顧客をひきつけるコアの強みではありません。あくまでも、マイクロソフトのOfficeスイートに対する優れた選択肢であり、われわれの「モビリティ戦略」を長期的に支えるものです。

ZDNet モビリティ戦略?

トリバー Sun RayやJavaCardを知っていますか? 情報をどんな場所やどんなデバイスにも届けられるようにする戦略です。ホテルにチェックインして、セットトップボックスにスマートカードを差し込むだけで電子メールが読めればいいですよね。StarOfficeのような、マイクロソフトのOfficeスイートに対する選択肢がないと、こうしたモビリティ戦略を前進させることができません。

 とはいえ、マイクロソフトの価格政策の変更もあって、StarOffice 6.0に対するメディアの評価も良いものばかりです。実は来日する飛行機の中でそれらを読んでいたのですが、楽しかったです。

 また、OpenOfficeですが、現在25カ国語に対応しており、ハンガリー語版もあります。サンだけではここまでできなかったと思います。オープンソースの優位性が実証されています。

ZDNet 最近、サンが説明に使うデータセンターのシステム構成図には、「V1」(垂直型コンピューティング)、「S1」(ストレージ)、そして今回のLX50などが属する「H1」(水平型コンピューティング)といったように、「1」がいろんなところに付けられていますね。なぜでしょう?

トリバー マグニチュードではありませんよ(笑い)。最初のワークステーションがSUN-1で、旧iPlanet製品もSun ONEになりました。それ自体にあまり大きな意味はないと思いますが、重要なことは、われわれはスマートカードからデータセンターに至るまで、エンドツーエンドを単一のアーキテクチャでカバーしているという点です。これが、サンを差別化している最大のポイントです。



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[聞き手:浅井英二,ITmedia]