エンタープライズ:ケーススタディ 2002/09/27 22:42:00 更新


Case Study:e-ビジネスのお手本? NECの121ware.comに見る繊細な顧客対応

NECが運営する121ware.comには顧客を巧みに囲い込む仕掛けがされている。同サイトを支えるのがエピファニーのソフトウェア。アクセス履歴の蓄積および分析と、電子メールといったアイテムを用いることで、実店舗ではできないビジネスが展開できる。

 ドットコムバブルが崩壊して数年が経ったが、Webビジネスの収益性には今も厳しい視線が向けられることが多い。ただし、ブロードバンドの普及によるインターネット利用の拡大はまだこれからというのも事実。その中で、使い勝手の良さでユーザーに高い評価を得ているWebサイトが、NECが運営する121ware.comだ。121ware.comには顧客を巧みに囲い込む仕掛けがされている。同サイトを支えるのは、CRMソフトウェアベンダーの大手、エピファニー・ソフトウェアだ。

 121ware.comは、各雑誌や機関による調査で、使い勝手やサービス満足度、再訪問率など、ユーザーからの評価が非常に高い。これは同サイトが、訪問するユーザーの顧客データベースを基盤に、Web上でのコンタクト履歴を蓄積し、分析することで、それぞれのユーザーにパーソナライズした情報を提供することで、満足度を高めていることが最大の要因だ。

 NECが121wareで目指すのは、いわゆる「カスタマー・イン」経営。マスをターゲットに製品を開発し、市場占有率を重視してきた従来の「プロダクトアウト」の考え方とは異なり、一人ひとりの顧客に対して個別のアプローチを取ることで、信頼を勝ち取っていこうというものだ。

 個別のユーザーの嗜好を正確に把握するためには、Webへのコンタクト履歴の蓄積やコンピュータを使った複雑な分析などを正しく行う必要がある。言ってみれば、エンタープライズアプリケーションという武器をフル活用できるe-ビジネスでしか実現できない概念とも言える。顧客がどの売り場に寄り道したか、何がネックで「買わなかった」のかといった情報は、「モルタル」の店舗では集めづらい。集まったとしてもそれを柔軟に生かすための配信手段、つまり、電子メールのような低コストかつリアルタイムなものはあまり見あたらないからだ。

 121wareのシステム導入を行った、NECのパーソナルカスタマーリレーション本部VCM戦略/CRMシステムグループの石原隆行氏は、キャンペーンマネジメント機能を例に、エピファニーの「スマートCRM E.6」について話した。

 従来のキャンペーンでは、プロモーション施策の作成からフローの作成、コンテンツ作成、プロモーションの実行と顧客の応答待ち、結果データのロード、集計レポートの作成といった一連の流れを終えるのに、約30日間かかったという。しかも、顧客動向の分析や顧客DBからの対象者抽出、複数チャネルとの連携、プロモーション結果の情報解析、ノウハウの蓄積といった重要なプロセスがシステム化されずに抜け落ちていたという。結果的には、プロモーション全体が把握できず、顧客のニーズも取り込めず、顧客へのリアルタイムのサポートも困難で、ノウハウも蓄積しないといった状況だった。

「エピファニーはプレゼンが上手いので最初は半信半疑だった」と話す石原氏。カスタマー・インのシステム移行後、結果的には30日のプロセスが2〜3日に短縮され、抜け落ちていたプロセスもカバーされたという。

 改善後に行ったキャンペーンは、Web上で個人にあった情報を提供する「インバウンド・キャンペーン」、分析を基にセグメント化した顧客リストに対して電子メールを送る「アウトバウンド・キャンペーン」の2つ。また、これを支える機能として、データマイニングや、ナレッジマネジメントとの連携も行っている。

 具体的に行ったのは、「Lavieゴジラバージョン拡販 電子メールキャンペーン」。Lavieゴジラバージョンという製品を販売するために、セグメント化した顧客に電子メールによるプロモーションを行うものだ。これには、施策立案から実行、分析までのCRMサイクルが適切に回るか、エピファニーのソフトウェアが事前の話の通りに稼働するかを調べるトライアル的な目的もあったという。

 第1回の電子メール送信は、知名度の低いLavieゴジラバージョンの存在を市場に浸透させることを狙った。送った電子メールが開かれたかどうかなど、さまざまな情報はデータとして蓄積されていくため、それを基に購入を検討しそうな顧客を絞る。第2回は、第1回で絞った顧客を対象に電子メールを送信した。3回目は、第2回のメール配信で得た情報を基に、隠れた販売機会を見出し、選び出した対象者に情報を提供、結果を分析した。結果的に、マスを対象にした情報を流した場合よりも、絞り込んだ顧客向けにデザインした電子メールを送信したケースの方が、メールの開封率、最終的な製品の購入数もかなり多くなったという。

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[怒賀新也,ITmedia]