エンタープライズ:ニュース 2003/01/24 19:35:00 更新


IBMの基調講演は、大がかりなコマーシャル

LinuxWorld New York 2003の2日目(23日)は、IBMとDELLが基調講演を行った。しかし、はっきりいえば、実態は、基調講演とは言い難いものだった。

 まず、IBMだが、この日IBMは、全米から重要顧客をLinuxWorldへ招待した。基調講演にはその顧客がそのまま送り込まれ、会場は一杯となる。IBMの顧客は最優先で入場、その様子を見ていたが、一般で並んでいる客の数倍はあろうかという顧客の集団とIBMの社員が次々に別の入り口から会場に入っていく(招待客は、バッチの色が違うので、すぐわかる)。

 そして、登場したはIBMのシニアバイスプレジデント兼グループエグゼクティブのスティーブン・ミルズ氏。日本でも放映されたIBMのeServerシリーズのコマーシャルフィルム(サーバが盗まれたとFBIの捜査官を連れてきたら、IBMのマシンに入れ替えたのでたった1台のサーバになっていただけだったというやつ)で始まる講演の内容は、まさに「IBMのLinuxビジネス」について。IBMにしてみれば、LinuxWorldの基調講演という看板付きで、顧客に自社のビジネスについての講演を行っているのと同じなのである。これが、IBMのプライベートイベントであれば、こうした内容でも十分基調講演といえるだろうが……。これだけを取ってみれば、今日は「IBM Linux World 2003」といってもおかしくはない。

 実は、22日にはLinuxWorld最大のスポンサーであるHPが顧客を招待していたのだが、基調講演は同社とは無関係のAMDが行った。このため、HPの顧客が優先して入場したものの、その数はたいしたことはなかった。もっとも、HPは今回のLinuxWorldでは大きな話題がなく、こうした状態もしかたのないことではある。

 IBMは、プレスコンファレンスで、ゴルフのPGAツアーの公式サイトがLinuxを使って構築されたことを発表、そのほか、Linuxを採用した事例やLotus iNotesのLinux対応(Netscape/MozillaでiNotesが生成するWebページが見えるようにした)などについて発表した。

 ニューヨークといえば、IBMの本拠地にも近く、その意味ではIBMのホームグラウンド。Linuxを全面的に押し出してビジネスを展開していくIBMとしては、格好のイベントでもある。展示会場でも最も大きなスペースを取り、サードパーティブースをその中に持っている。

 こうした傾向は、 LinuxWorldがニューヨークで開催されるようになった当初から多少はあったが、今回はそれがかなり顕著なものになった。LinuxWorld New Yorkでの基調講演では、Linuxコミュニティからの講演者はまったく出なくなり、IBMをはじめとするLinux関連の大手メーカーが完全にその主役となった。また、不景気の影響もあり、Linux系企業もみんな金回りが悪くなって、やってきたコミュニティの人たちに楽しんでいってもらうなどという雰囲気はまったくなくなってしまった。運営するIDGにしてみれば、こうしたIBMなどのスポンサーからの金でイベントが続けられるのでいいのだろうが、プライベートイベントにはない、コミュニティの情報を得ることも難しくなってまった。

 午後の基調講演には、デルコンピュータのシニアバイスプレジデント兼CIO(Chief Infomation Officer)のランディ・モット氏が登場。こちらも内容的にはIBMと大差ない「宣伝」なのだが、創業者マイケル・デル氏をヘンリー・フォードやジョージ・ウェスティングハウス、グラハム・ベルに並ぶ企業家とするのはあまりに持ち上げすぎであろう。

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米国を代表する企業家/起業家として、そうそうたるメンバーと並んで紹介されるマイケル・デル氏

関連リンク
▼IBM
▼デルコンピュータ
▼LinuxWorld New York 2003レポート

[ITmedia]