エンタープライズ:コラム 2003/02/06 17:43:00 更新


Opinion:モバイルWebサービスの現状と課題 (2/2)

約束その3:

企業データをモバイルデバイス向けに拡張する

 モバイルコンピューティングにとって最大のメリットではないかと思われるのは、Webサービスが企業データをモバイルデバイス向けに拡張することにより、連携のためのコストと時間を節約するという約束だ。Webサービスは、コストがかかるエンタープライズアプリケーション統合作業を行わなくとも、同期化サーバとエンタープライズアプリケーションが連携することを可能にする新しいミドルウェアになるだろう。

 CIO(最高情報責任者)にとっては、今後も企業データへのアクセスとアプリケーションの連携が最大の関心事である。デスクトップコンピュータ上のアプリケーションとサーバがLANを通じて対話できる環境を提供するWebサービスは、これらのニーズを完璧に満たしてくれる。しかしモバイルデバイスの使用は、この連携のチャレンジに新たな次元を追加する。プラットフォームとエンドユーザーが新たに追加されることになるからである。

 Webサービスは、バックオフィスのエンタープライズシステム同士を連携するのに最適な技術である。なぜならこれらのシステムは、比較的高速で信頼性が高い、低コストのコネクションで常に接続されているからだ。

 シンクライアントアプリケーション向けにWebサービスが作成されるのに伴い、これらのサービスを利用あるいは拡張して、同期化が容易なシッククライアント型モバイルアプリケーションを実現することが可能になる。その場合の基本的な前提は、Webサービスが、モバイルデータベースとエンタープライズデータベースの間で同期化サーバがデータを交換するためのインタフェースの1つになるということである。

 連携コストの削減に加えてもう1つのメリットは、データベースに直接データを書き込むのではなく、アプリケーションのビジネスロジック層に対して読み書きすることができるという点だ。その結果、Webサービスインタフェースを通じてデータを同期化することにより、アプリケーションがデータの妥当性を検証した上で、それをデータベースに書き込むことが可能になる。

 アプリケーションのビジネスロジック層に対して読み書きすることができれば、企業がデータの整合性を維持するのが容易になる。これは、どんなエンタープライズアプリケーションにおいても極めて重要な機能である。

 モバイルアプリケーションに要求されるデータがWebサービスを通じて利用できるようにすれば、独自のAPIを使って行っていた従来の連携作業が最小限で済み(あるいは不要になり)、効果的なモバイルアプリケーションを開発するためのコストが大幅に削減される。

 実際、Webサービスの重要な利点の1つが、ポイントツーポイントによる連携が不要になることである。言い換えれば、例えば企業ポータル用のWebサービスを一度作成すれば、同じデータを必要とするモバイルアプリケーションで同じWebサービスを利用することができるのである。この利点は、連携の方法が容易になるのと相まって、企業が異なるプロジェクトにわたって開発コストを有効に活用することを可能にする。

結論

 総合的に判断すれば、Webサービスは、LANとモバイルデバイスの両方において、エンタープライズシステムアーキテクチャの動作のあらゆる側面を変革する可能性が高い。企業にとってWebサービスの最大の価値は明らかに、コストのかかる大規模な連携作業が不要になることによる経費と労力の削減である。

 モバイルデバイスにおけるWebサービスの制約は、主としてワイヤレスネットワークコネクションの問題に起因する。これらの制約の多くは、ワイヤレス技術の進歩によって克服されるだろう。しかし当面は、これらの制約のために、同期化問題および断続的な接続に関連した問題に対処できるモバイルソリューションが必要とされる。

 Webサービスは、モービリティを取り巻くあらゆる課題を解決するものでもなければ、企業が十分な性能を備えたシンクライアントアプリケーションを構築することを可能にするものでもないが、以下に示すように、コストがかかる2つの問題を解決することは間違いない。

  • LAN上のアプリケーション間の連携を容易にするとともに、費用効果の高いものにする。これにより、連携作業で苦労することなしにモバイルインフラソリューションを企業のLANインフラに追加することが可能になる。
  • Webサービスは、企業データをモバイルデバイス向けに拡張する。これにより、各種のモバイルコンピューティング用技術が、従来のAPIを利用するよりも簡単な方法で機能することができる。

筆者紹介

 ジョー・オーウェン氏は1989年、エクセレネットの最初のプロダクトマネジャーとして同社に入社した。エクセレネットで製品管理担当副社長やビジネス開発担当副社長などのポジションを経て、同社の最高技術責任者に任命された。同氏は、ソフトウェア・リンクの技術マネジャーや、DCAのIRMA開発チームのソフトウェアエンジニアといった経歴も有する。ジョージア工科大学情報工学科で理学士号を取得。

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[Joseph Owen,ITmedia]