エンタープライズ:ニュース 2003/03/04 07:54:00 更新


BEA eWorld開幕、「過去」を生かし「未来」をもたらすBEA WebLogic Platform 8.1発表

米国時間の3月3日、フロリダ州オーランドで「BEA eWorld 2003」カンファレンスが開幕した。BEAのチュアングCEOやヒューレット・パッカードのフィオリナCEOが登場し、顧客にとって最大の課題であるインテグレーションに焦点を当てた。この日発表された「BEA WebLogic Platform 8.1」は、アプリケーション開発とインテグレーションを単一のフレームワークに統合でき、開発生産性を大幅に高められるとした。

 米国時間の3月3日、フロリダ州オーランドで「BEA eWorld 2003」カンファレンスが開幕した。初日午前のオープニングセッションには、BEAシステムズの創設者であり、現在も会長兼CEOを務めるアルフレッド・チュアング氏が登場し、今回のeWorldのテーマである「Converge」(収れん)や、それを具現化した新しいプラットフォーム「BEA WebLogic Platform 8.1」について話した。

 また、初日の基調講演には、BEAが緊密なパートナーシップを築いているヒューレット・パッカードのカーリー・フィオリナ会長兼CEOが招かれ、コンパックコンピュータとの合併によって数少ないエンドツーエンドのソリューションプロバイダーとなった同社の強みをアピールした。

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フィオリナ氏を招いたBEAのチュアングCEO


 会場となったゲイロード・パームズ・リゾート&コンベンションセンターのボールルームは、早朝から約3000人の聴衆が詰め掛け、緊迫の度を増しているイラク情勢をしばし忘れさせてくれる。フロリダ州オーランドという場所柄もあってか、少なからずお祭り気分に包まれている。忠誠心の高いデベロッパーらに支えられるカンファレンスならではといえる。マーケティング色の強いカンファレンスではこうはいかない。BEAのチュアングCEO自身、サン・マイクロシステムズで働き、BEAを創設したデベロッパーのひとりだ。

 ビートルズのヒット曲「カム・トゥギャザー」と大量のスモークを合図に、皮のジャンパーを羽織ったチュアング氏がステージに登場し、今日のソフトウェア産業が抱える最大の課題であるコンバージェンスについて、ゆっくりと、しかし確信に満ちた言葉で話し始めた。

 ちなみに同社は2月下旬、1月31日締めの2003年度第4四半期決算を発表しているが、売上高は1億3460万ドルのライセンスフィーを含む2億4930万ドルに達し、営業キャッシュフローも6130万ドルとなり、第3四半期比で35%増加した。チュアング氏はリリースの中で、「ソフトウェア業界が未曾有の厳しい経済環境に直面している中にあって、ほぼ完璧」と同社の業績を表現している。

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派手な登場も板についた(?)チュアングCEO


 顧客企業はというと、ITバブルが消失して以降、IT支出を見直している。それは大幅削減とまではいかないものの、新規プロジェクトは高いROI(Return on Investment)が期待できるものに絞り込まれている。

 その一方で、既存システムを連携させることによって、情報の流れをうまく作り出し、それを活用して競争力を維持しようという取り組みも盛んだ。モルガンスタンレーがCIOを対象に「2002年の戦略的プロジェクト」を聞いたところ,インテグレーションが35%と最も多かったという。

 皮肉なことに、昨年5月に行われた「IBM developerWorks Live!」のテーマも「インテグレーション」だった。

 しかし、「デスクトップ環境は、PCとWindowsによって標準化されたが、エンタープライズコンピューティングの領域はまだまだ」とチュアング氏。どの企業でもレガシーシステムが重荷となり、ビジネスプロセス変革に対する足かせとなっているという。企業が、それを取り巻く環境の変化に追従すべく、新しい技術を導入しようにも、過去の資産がそれを難しくしている。

標準に基づく統合へ

 こうした課題に着目したBEAは、新しいBEA WebLogic Platform 8.1によって、アプリケーション開発とインテグレーションの統合を図り、依然としてポイント・ツー・ポイント・ソリューションでコストがかさみ、システムも硬直化から抜け出せない既存のEAI分野に新風を吹き込もうとしている。

 チュアング氏は、既存のEAI(Enterprise Application Integration)ベンダーの問題点を指摘したうえで、「そもそも、すべてのインテグレーションは開発であり、すべての開発はインテグレーションだ。右手と左手は一緒に働かないといけない」と、同社のシンプルなアプローチをアピールする。

 オープニングセッション後に行われたQ&Aでは、「これまでは分断されていたアプリケーション開発とインテグレーションの隔たりがなくなり始めており、それは顧客らが求めていることでもある」と彼は話している。もちろん、業界の主要課題はインテグレーションであり、標準化の動きがBEAを後押ししていることは言うまでもない。

 BEA WebLogic Platform 8.1のアプローチは、アプリケーションやWebサービスの構築、インテグレーション、拡張を単一フレームワークで行おうというもので、それによって開発が迅速に行えるようになるとする。

 しかも、彼らのJ2EEアプリケーションサーバがそうであるように、徹底したオープンスタンダードへの準拠がここでもうたわれる。J2EE標準だけでなく、Webサービス標準に準拠することで、マイクロソフトの.NETで書かれたアプリケーションとも相互に連携できる。

 BEA WebLogic Platform 8.1は、インテルアーキテクチャに最適化されたJVM、JRockitとWebLogic ServerやTuxedoをエンジンとし、ポータル、データインテグレーション(Liquid Data)、およびアプリケーションインテグレーションの各種ミドルウェアがその上に搭載される。

 もちろんこれらのコンポーネントも、性能面での改良が加えられているが、8.1で最も注目すべきは、WebサービスのツールだったWorkshopが、アプリケーション、ポータル、およびインテグレーションのエンドツーエンドをカバーするツールに進化したことだ。

 かつて、アプリケーションサーバ市場の黎明期には無数のベンダーが存在したが、標準化に伴ってその大半は淘汰されてしまった。依然としてIBMらとの厳しい競合にさらされているBEAだが、同社はその勝ち組みとして、EAI分野にもそのビジネスを拡大しようとしている。業界の主要課題はインテグレーションであり、標準化の方向性もそちらに定まっている。アプリケーションサーバ市場の歴史がEAI市場でも繰り返される可能性は高い。

 チュアングCEOは、「8.1は、過去を生かし、未来を顧客にもたらす」と自信を見せる。

 BEA WebLogic Platform 8.1はベータ版が既に入手可能となっている。製品版は、WebLogic Serverが今春、それ以外のコンポーネントはこの夏までに出そろう。またこの日、デベロッパー向けの新しいサブスクリプションプログラムも発表された。1年間無償の「Trial Edition」、四半期ごとに最新版が提供される「Platform Edition」(599ドル)、JBuilder WebLogic Editionと12カ月のソフトウェアアシュアランスが付属する「Tools Edition」(4659ドル)が用意されるという。

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[浅井英二,ITmedia]