エンタープライズ:ケーススタディ 2003/03/18 23:23:00 更新


基本選択肢としてのERP(3)「NTTデータと高速SCMを展開」、カナダのウェブプラン

サプライチェーンマネジメントの分野で、組み立て型製造業に特化したシステムを提供している企業に、カナダのオタワで設立され、米カリフォルニアに本社を置くウェブプランがある。同社の副社長、ダンカン・クレット氏、リージョナルディレクターのリチャード・ロード氏に話を聞いた。

 製造業の需要予測や生産計画の立案などを戦略的に行うサプライチェーンマネジメント(SCM)システム。この分野では、米国のi2テクノロジーズやマニュジスティクスが知られており、SAPや、幾つかの国内ベンダーもモジュールを提供している。同市場において、組み立て型製造業に特化したシステムを提供している企業に、カナダのオタワで設立され、米カリフォルニアに本社を置くウェブプランがある。同社は、電気業界や産業機械業界、航空機業界など、組み立て型製造業に特化し、世界に多くの導入事例を持つ。

 例えば、フィリップスや、EMSのソレクトロン、日本企業では、コマツや住友電装などが、欧州などの海外拠点の工場でWebplanを導入している。これから日本でのビジネスを本格化させるという同社の副社長、ダンカン・クレット氏、リージョナルディレクターのリチャード・ロード氏に話を聞いた。

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「WebPlanは日本市場にマッチしている」と自信を見せるクレット氏(左)とロード氏

 クレット氏は、WebPlanのアプリケーションの特徴について、「グローバルにまたがる複数拠点間でサプライチェーンを可視化できること、そしてパフォーマンスの速さ」と話す。需要予測や顧客への製品の割り振り、生産計画の立案といった計画系プロセスと、生産現場である工場側の生産キャパシティの管理といった実行系プロセスの機能を提供する。

 導入企業は、工場の生産キャパシティの変動などの制約条件も随時勘案して生産計画を立てられるため、安全在庫に頼らずに在庫削減を進めることができる。また、受注用の在庫が足りなければ、外部のサプライヤーが持つ在庫を引き当てることもできる。顧客がなるべく早い納期回答を望んだ場合に、輸送リードタイムを計算に入れても「自分で作るより、隣から持ってきた方が早い」と判断すれば、それを実行できるという。

 こうした機能は、業界最大手のi2なども実現しているが、Webplanの利点は、「ロジックが隠蔽されていないこと」だという。例えば、どの顧客にどれだけの在庫を引き当てるかは、通常のアプリケーションでは、あらかじめ設定された顧客ランクなどを基に、アプリケーションのロジックが「ブラックボックス」的に決定する場合が多い。これに対しWebplanは、この作業をプランナーが随時データを参照しながら自分で意思決定できる。

「数字に理由を求める日本人の特性にマッチしているのではないか」(クレット氏)

 また、サプライチェーンイベント管理(SCEM)もサポートしており、例えば物流リードタイムが何らかの原因で短縮するなど、前提条件に変更が発生した場合、そのデータの更新をトリガーにして、リアルタイムでサプライチェーン全体のデータの整合性を確保できる。

 Webplanは、100%マイクロソフトのアーキテクチャに準拠しているため、.NET環境において、SOAPやXMLを利用したWebサービスや、ロゼッタネットなどにも対応している。

すべてはメモリ上で動くことが強み

 こうした特徴は、システム設計によるところが大きい。

 Webplanの各モジュールは1つのエンジンに集約されている上、シングルデータモデルを採用している。さらに、システムが全てメモリ上で動くことにより、非常に高いパフォーマンスを実現しているという。

 クレット氏は、ウェブプランとi2のSCMの違いについて説明した。

 i2のソフトウェアでは、需要予測を行うDP(Demand Planner)や、在庫(ATP)を顧客に振り分けるDF(Demand Fullfilement)、生産計画を立てるMP(Master Planner)、実行系のFP(Factory Planner)など、機能ごとに1つひとつエンジンが分かれている。そして、データの連携はADW(Active Data Warehouse)と呼ばれるディスクに都度書きこまれるため、比較的重い処理となる。ここがパフォーマンスのボトルネックになるケースがあるとしている。

 一方で、Webplanは、BOM(Bill Of Material)情報なども含めて、こうした一連のプロセスがすべて1つのエンジンで実行されている。ディスクアクセスによるデータの受け渡しなども行わないシステムモデルであるため、処理に遅延が発生せず、高いパフォーマンスを実現しているという。インターネットやイントラネットを介して、製造拠点や、本社/販社、配送業者、サプライヤー、運送業者などが、より速く情報を交換できるわけだ。

 典型的な導入効果としては、物流パフォーマンスや在庫削減、需要予測精度などで、10〜30%以上の改善が見られるケースなどがあるという。

 ウェブプランの日本支社は2002年に設立され、2003年1月から東京をベースに業務を開始した。主要なパートナー企業はNTTデータ。NTTデータはWebplanを利用したサプライチェーンマネジメントシステムの構築について、セミナーなども行っている。

導入事例

導入企業 住友電装
業 種 自動車部品のサプライヤー
導入概要 欧州の6拠点、3工場にWebPlanを導入。WebPlan適用プロセスは、需要予測、生産計画、MRP、資材管理、MPS、設計変更管理、調達における意思決定支援。レガシ−システムとも連携した。
導入効果 「WebPlanが提供する納期変更やキャンセル提案を利用した結果、導入後6カ月間で在庫レベルが33%低下した」(ヨーロッパロジスティクス・マネジャーのアンソニー・エバンス氏)

関連リンク
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[怒賀新也,ITmedia]