エンタープライズ:コラム 2003/03/20 16:17:00 更新


Linux Column番外編:静粛性重視の自宅Linuxサーバ〜パーツ選択から稼働まで〜 (1/2)

ホームサーバというキーワードが家電品にまで使われるようになった。その多くにはLinuxが使われており、機能面ではPCで実現できるものが多い。Linuxのシェル操作な用途はもちろん、そんな家電品に迫る自宅サーバを構築すべく、びぎねっと・宮原は立ち上がった

自宅サーバに欠かせないのは静粛性

 突然だが、自宅にLinuxサーバがほしくなった。現在は、自作のPentium 4マシンにWindows 2000とVMwareをインストールしている。日ごろは、このVMwareの仮想マシン上でLinuxを動かしているのだ。しかし、この自作マシンはハイパフォーマンス重視のためにファンの稼働音がうるさく、消費電力も軽視できない。そのためメールを読んだり、仕事の時程度しか電源をオンにしていないのだ(本当はゲームもやりたいが時間が無い)。

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今回購入することになった「QuBE-AC/933」



 自宅の回線は現在、ADSLの8Mbpsである。以前はデルコンピュータのコンパクトなマシンを持ち帰り自宅用のサーバとして構築していたこともある。しかし、ケースが小さくてもファンの音が気になるし、ハードディスクが不調になったことから止めてしまっていた。

 最近になって、やはり出先からちょっとした用でSSHログインでコマンド実行するといったLinuxサーバがほしいと思い始めたのだ。実は以前から、騒音の源である空冷ファンが無い「ファンレスマシン」でサーバ構築がしたいと考えていた。そう、自宅で24時間稼働させる上では静粛性を最重要課題としたい。

 枕の隣に置いても寝られるような究極なレベルまでを求めないが、存在感が必要以上にあっては困る。その静粛性を追求する上で足かせになるのが、まず第一に空冷ファンの存在だ。マシンに取り付けるファンは安定した動作の上では欠かせないものであるが、必要以上に冷やさない、そしてケース内では最低限の熱量になるようパーツも考慮することが要求される。

 空冷ファン種別としては、「CPUファン」、「ケースファン」、「電源ファン」が挙げられるが、最近ではCPUの高クロック化に伴いケース内の発熱量も増えている。このため、ある程度のファン回転数が欠かせないのも事実だ。一方、VIAのインテル互換CPU「C3」のように、低速だが低発熱のため冷却ファンが不要となるCPUもある。一部の自作マニアの間では人気がある存在だ。まずCPUとしては、このC3を今回のターゲットとすることにした。ケースファンにおいても、CPUが低熱量であれば付けなくてもよいはずだ。

電源は外部のACアダプタ使用で熱源排除

 CPUの次に問題なのは電源部の空冷ファンである。サーバとして常に動かす場合には、電源部のパーツは常に発熱し続ける。総パーツ容量によっても異なるが、250Wや300Wの電源に迷った時は余裕のあるタイプにすべきだ。ギリギリのものを使用すると、それだけで定格いっぱいの発熱をし続けてしまうのだ。そして、電源部に手を入れて静音ファンに改造するなどは、かなりの勇気が必要なため避けたい。

 この電源部への対策としては、最近自作PCのトレンドとなっている静音ファンを採用する電源が見過ごせない。そうとはいえ、やはりどんなに空冷ファンの対策をしようとも、ファンの回転音は発生する。決して「無音」にはならないのだ。

 このような状況に風穴を開けたのが、電源をACアダプタ化してしまう完全ファンレスマシンの登場だ。ノートPCなどでは、電源がACアダプタなのが当たり前だが、デスクトップでは従来までは存在しなかった。なぜならば、高速なCPUをはじめ、さまざまなパーツが消費する電力を供給するためにはACアダプタでは容量が少なすぎるからだ。しかし、CPUクロックを比較的低くすると消費電力は劇的に少なくなる。また、CPUの発熱量が少なくなるということは、前でも触れたように冷却ファンが不要にできるわけだ。さらに、ゲームをするのではなく、今後予定するX Window Systemの実行やmakeのスピードなどコーヒーを飲んで過ごせるのであれば、日ごろの運用には支障を来さない。24時間稼働のため電気代も気にしつつ、動作音も静かな自宅サーバにはうってつけというわけだ。

 このような条件を満たすモデルとして今回は、完全ファンレスマシン「QuBE-AC/933」「QuBE-AC/800」を最終候補とした。そこで、秋葉原でのショップ「スリートップ」に出向くことにした。

品切れ状態の完全ファンレスマシン

 同店は、知る人ぞ知る秋葉原ラジオデパートの3階に位置するパソコンショップだ。エスカレーターで3階まで上がると正面左側に見え、ラジデパの他店舗と同じく狭い(失礼)。

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店内の様子。所狭しと商品が並べられている。あらかじめ電話で商品の取り置きをお願いしていたので、受け取りつつ話を聞く


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これが完全ファンレスマシンの箱。小さい!


 店員に聞いたところ興味深いことを聞かせてくれた。その内容を要約すると、次の通りだ。

  • 2002年夏ごろの発売から、3か月で約300台程度売れている(月100台ということか?)
  • Windowsでサブマシンとして使う人が多いらしい
  • Linuxは店の人が分からないのでノンサポート(というか聞かれても答えられない)
  • 電源部分だけも販売しており、これがかなり売れているらしい
  • 入手できるのはスリートップか、卸している何軒かのみ

 秋葉原のパソコンショップは、差別化がなかなか大変だと語っていた。同店では、差別化として他店があまり取り組んでいない「静音化」をウリとしている。今後もいろいろと関連商品を仕入れていくそうだ。今回は、パフォーマンスもやや重視しつつ、CPUに「VIA C3/933MHz」を搭載する「QuBE-AC/933」(39,800円)を購入することにした。

ディスクとメモリも購入

 ところで、入手したのはCPU付ベアボーンなので、ハードディスクとCD-ROMドライブ、メモリを増設しなければならない。今回はハードディスクにIBMブランドの「Deskstar 180GXP IC35L060AVV207-0 (60GB)」を選択した。7200rpmだが、それほど動作音が気にならないはず…、と思いながら。しかし、熱量を考えると5400rpmタイプの方が有利かもしれない。そして、CD-ROMドライブはLinuxのインストールに使用する程度だと割りきって、オフィスに転がっている物にしようと考えた。

 QuBE-AC/93は、メモリ用に2スロット用意されており、最大1GBまでが搭載できる。今回は取りあえずバルクの512MBのSDRAM(PC133)を用意した。手元にあまっているものがあればそれを使ってもよいが、狭い筐体に押し込めることになるのでメモリモジュールの高さには気をつけたい。

X Window Systemも使うかもしれない

 グラフィックカードは、オンボードチップを利用するのがコストパフォーマンスではよいかもしれない。さらに、サーバとして利用するならばローカル上でXサーバを起動することは希かもしれない。

 静音を意識する上では、高クロックで冷却ファンが搭載されているような物は問題外だ。

 これらを考慮した上でチョイスしたのは、カノープスのPCIバスタイプのカード「SPECTRA Light T32 PCI」。2003年3月現在、この製品は生産停止になっており最終在庫放出品として格安で入手できたのも理由の1つだ。ビデオチップには、RIVA TNT2 Pro、メモリはSDRAM 32MBが搭載されている。今回の用途としては十分なスペックといえる。

狭い筐体内ではケーブル取り回しが困難

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ケース内は省スペースのためかなり狭い。このため、ファンレスということもあり、空気の流れを把握しなければならない


 ケース内のパーツをケーブルで接続する際、注意しなければならないことがある。それは、コンパクトなケースの場合には特に、風の流れを遮るようなケーブルの取り回しをしないことだ。この点では、従来のフラットケーブルよりもスマートケーブルの方が風通しがよくなり優位だろう。

Red Hat Linux 8.0にしよう

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BIOS上で温度を見ると、まだCPU温度は26度。これからの稼働で上昇するのだろう


 ケース組み立て後に電源をオンにし、BIOS設定画面でCPU温度を確認してみた。起動時のCPU温度は約26度。購入時に聞いたところによると、かなり負荷をかけた場合には80度程度まで達することもあるとのこと。まずは40度を基準にして、しばらく動かした後に再度確認することにしよう。

 BIOS設定でオンボードビデオに割り振られたメモリを0バイトに設定し再起動。そしてCD-ROMブートでRed Hat Linux 8.0をインストールすることにした。GUIのインストーラーも問題なく起動し、ネットワーク、ビデオカードも自動認識されている。インストールタイプを「ワークステーション」、さらにWebサーバ、メールサーバ、DNSサーバ、Windowsファイルサーバを追加し続けていくが、最近のAnacondaのおかげで極めて容易にインストールが完了する。

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[宮原 徹,びぎねっと]