エンタープライズ:コラム | 2003/03/20 16:17:00 更新 |
Linux Column番外編:静粛性重視の自宅Linuxサーバ〜パーツ選択から稼働まで〜 (2/2)
体感速度は悪くないが肝心の動作音は?
再起動をすると問題なくグラフィカルログイン画面が現れ、ログインまでたどり着ける。Red Hat Linux 8.0からデスクトップ環境が「Bluecurve」というGNOMEをベースにカスタマイズされている。これにより画面の表示はWindowsなどと比べても遜色のないぐらいきれいなものの、その分体感的には処理負荷が高いのも事実だ。CPUであるC3のパフォーマンスでは厳しいのかとも思ったが、ログイン時の初期化処理こそやや重いものの、起動してしまえばWebブラウザでのブラウジングやメニュー操作など、主要な操作はほとんどストレスなく使用できる。
さて、肝心の稼働音だが耳を近づけてまったくの無音か? というとそうでもない。その要因は、CD-ROMドライブとハードディスクの音だと分かった。特にCD-ROMドライブは適当なものを使用したため、CD-ROMを入れただけでドライブのスピンドル音が高らかに鳴り響いている。アイドル時にはスピンダウンされ、それほどドライブの稼働率は高くないためこの点は無視することにした。
一方、ハードディスクは流体軸受けタイプのためスピン音はほとんど聞き取れない。しかし、シーク時にヘッドが動く音が分かる。さらに、かすかに「ジ〜カリカリ」という高周波の音が聞き取れるため動作音として気になるのだろう。ディスクの静粛性パーツでは、グロウアップ・ジャパンの「SmartDrive」が有名だが、今回の省スペースケースでは難しいかもしれない。今後、さらなる静音化の際には考慮してみよう。
ベンチマーク
/proc/cpuinfoファイルの情報と、HDBENCH cloneのベンチマークを行ってみた。ちなみにHDBENCH cloneは現在開発が中止されているが、現在もネットで入手可能なバージョン0.14.1を使用している。実験環境はカーネルがRed Hatが提供するカーネルパッケージの2.4.14-18.8.0(3月20日現在は「2.4.18-27.8.0」が最新)。使用しているファイルシステムは標準のext3であり、ベンチマークのためのチューニングなどは、この時点では行っていない。
○/proc/cpuinfoファイル processor : 0 vendor_id : CentaurHauls cpu family : 6 model : 7 model name : VIA Ezra stepping : 8 cpu MHz : 930.710 cache size : 64 KB fdiv_bug : no hlt_bug : no f00f_bug : no coma_bug : no fpu : yes fpu_exception : yes cpuid level : 1 wp : yes flags : fpu de tsc msr cx8 mtrr pge mmx 3dnow bogomips : 1854.66 ○HDBENCH clone 0.14.1 の結果 総合24405 浮動小数点23688 整数演算61386 メモリ7407 矩形22061 円14237 テキスト20133 スクロール76 IMAGE17 READ53066KB/Sec (1024MB) WRITE41998KB/Sec (1024MB) |
bogomipsの値だが、上記の通り「1854.66」と記録された。BogoMIPSはLinuxの作者であるLinus Torvalds氏が考え出したもので、1秒あたりに行うことのできる計算値だ。これによりおおよそのCPUのパフォーマンスが測定可能だが、「BogoMips mini-Howto」によれば、PentiumIII/933MHzが1816.22とほぼ近似値となっている。
HDBENCH cloneは相対的に比較する対象を持ってこないと分からない数値も多いが、傾向として整数演算よりも浮動小数点演算が遅いようだ。ただ、サーバーとして使うのであれば浮動小数点演算を多用されることもないだろうから、大きな問題とはならないだろう。その他の値については読者の皆さんの環境との比較のために参考にしてもらえればと思う。
ディスクの転送レートを見てみると
ハードディスクの転送速度を見てみよう。hdparmコマンドでのチェックと「bonnie++ 1.02c」(http://www.coker.com.au/bonnie++/)を使用し、ベンチマークを行った。
○hdparmでハードディスクをチェック # hdparm /dev/hda /dev/hda: multcount = 16 (on) IO_support = 1 (32-bit) unmaskirq = 1 (on) using_dma = 1 (on) ★DMA転送がONになっている keepsettings = 0 (off) readonly = 0 (off) readahead = 8 (on) geometry = 7476/255/63, sectors = 120103200, start = 0 # hdparm -T -t /dev/hda /dev/hda: Timing buffer-cache reads: 128 MB in 1.90 seconds = 67.37 MB/sec Timing buffered disk reads: 64 MB in 1.49 seconds = 42.95 MB/sec ★ Timing buffer-cache :メモリ読み出しの速度 ★ Timing buffered disk :ディスク読み出しの速度 |
hdparmでチェックをすると、DMA転送設定がオンになっていることが分かる。このため、CPUに無駄な負荷をかけずデータ転送が行えることが確認できたわけだ。特にC3を搭載するサーバでは、この点が重要となるものの1つだ。
また、hdparmによる簡単なベンチマークテストではメモリ読み出しで67.73MB/秒、ディスク読み出しで42.95MB/秒という結果が出た。理論的には使用しているインターフェースUltra ATA/100による転送速度は100MB/秒ということになるが、現実にはハードディスクのサステイン転送速度(実際の連続データ転送速度)はデータシートでは29MB〜56MB/秒となっており、結果的には納得のいく値だろう。
bonnie++によるハードディスクベンチマーク
次にLinuxやその他のUNIXのハードディスクI/Oの標準的なベンチマークプログラムとして使用されているbonnie++でテストしてみよう。ベンチマークを行うにはtarballをダウンロードしてきて、コンパイルとインストールを行う必要がある。
○bonnie++のコンパイルとインストール # tar zxvf bonnie++-1.02c.tgz # cd bonnie++-1.02c # ./configure # make # make install ○bonnie++の実行 # bonnie++ You must use the "-u" switch when running as root. # bonnie++ -s 10 -u root:root Using uid:0, gid:0. File size should be double RAM for good results, RAM is 500M. # bonnie++ -s 1000 -u root:root 〜中略〜 Version 1.02c ------Sequential Output------ --Sequential Input- --Random- -Per Chr- --Block-- -Rewrite- -Per Chr- --Block-- --Seeks-- Machine Size K/sec %CP K/sec %CP K/sec %CP K/sec %CP K/sec %CP /sec %CP localhost.loc 1000M 5073 97 28838 43 7513 17 5400 98 39370 30 139.9 1 ------Sequential Create------ --------Random Create-------- -Create-- --Read--- -Delete-- -Create-- --Read--- -Delete-- files /sec %CP /sec %CP /sec %CP /sec %CP /sec %CP /sec %CP 16 314 99 +++++ +++ +++++ +++ 319 99 +++++ +++ 1436 98 |
bonnie++の結果ではHDBENCH cloneと異なり、ブロック入力(書き込み)の値がブロック出力(読み出し)の値よりも3割近く高い傾向を示している。この辺りの違いはベンチマークプログラムの影響によるものだが、いずれにしろブロックI/Oで30〜40MB/秒の速度が見られ、特にチューニングを行っていない状態での結果としては満足のいくものだろう。
温度と静粛性は相互関係にある
QuBE-ACシリーズが採用しているマザーボードは、「Lex BN860T」(http://www.lex.com.tw/bn860t.htm)、チップセット(VIA PLE133T)もLinuxでの動作検証が公開されているため安心して使用することができるだろう。
組み立て後に約2時間ほど稼働させたが、CPU温度40度近くまで上昇していた。また、ケースを触ると熱くはなく温かい。確かにファンレスでも問題はないのだろうが、許すのであればケースファンで熱を排気したいところである。今後の課題としよう。
動作チェックがひと通り終わったため、次回はインターネットサーバとして動作するよう具体的な設定を紹介していくことにしよう。
関連リンクスリートップ
bonnie++ 1.02c
Lex BN860T
[宮原 徹,びぎねっと]