エンタープライズ:ニュース 2003/06/27 22:09:00 更新


社員1人1人が電子メールを企業資産ととらえるべき――Message Protector開発の背景

ノキア・ジャパンとトレンドマイクロは、ウイルス対策やスパムメール削除といった機能を提供するアプライアンス製品「ノキア Message Protector SC6600」を発表。企業にとってクリティカルなアプリケーション、つまり電子メールの保護を実現するという。

 ノキア・ジャパンとトレンドマイクロは、ウイルス対策やスパムメールの削除といった機能を統合的に提供するネットワークゲートウェイ向けのアプライアンス製品「ノキア Message Protector SC6600」の販売を開始した。

 発表に当たって来日したノキア・インターネット・コミュニケーションズのジェフ・ラッツラフ氏(アジア・パシフィック地域マーケティング担当ディレクター)は、「電子メールは企業にとってクリティカルなアプリケーションとなっている。社員の生産性向上と意味だけでなく、顧客やパートナー、サプライヤーとの間でコミュニケーションを行ううえでも欠かせない」と述べた。そして、この重要な電子メールに包括的なセキュリティを提供するのがMessage Protectorだという。

 Message Protectorは、Linuxをベースにセキュリティ強化を施した独自OS、「IPSO-SX」をベースにしたアプライアンスで、外部からはMTA(Mail Transfer Agent)として動作する。SMTPトラフィックに対し、トレンドマイクロのウイルス検出エンジンを用いたウイルススキャニングやコンテンツフィルタリングを行うほか、DoS攻撃のブロックや新種のExploit(不正コード)の排除、不正中継の防止、さらには電子メールのメッセージが適切かどうかをチェックすることができる。

 同製品はノキアがこれまでファイアウォール/VPNアプライアンスの「IPセキュリティシリーズ」で培ってきた技術やノウハウに、トレンドマイクロが提供するウイルス対策エンジンやコンテンツセキュリティ技術を組み合わせて実現された。アプライアンスであるため、OSとアプリケーションとのバージョンの整合性などに気を使う必要がなく、導入から運用、管理が容易に行うことができる。また、ウイルスチェックとスパム対策、コンテンツフィルタリングといった処理をまとめて提供しながら、30Kバイトのメールの場合、1時間に12万通以上の処理が可能という。

ラッツラフ氏ら

左から柳下氏、大三川氏、ラッツラフ氏。いずれもMessage Protectorをベストオブブリードの製品と強調した

 トレンドマイクロが今年1月に行った調査によると、メールコのンテンツフィルタリング製品に対し、企業ユーザーが抱いている不満のうち最も多かった項目はパフォーマンスに関するものだった。次いで運用・管理のしやすさ、製品の機能そのものといった項目が挙げられたという。トレンドマイクロの執行役員日本担当、大三川彰彦氏はこれを踏まえ、「Message Protectorはこうした明確なニーズに対応するもので、従来の問題を解決する」と述べている。

管理者に本来の作業を

 Message Protectorの特徴としてはもう1つ、迅速かつ確実なアップデートを支援する点が挙げられる。

 「管理者にとってアップデート作業そのものが負荷になっている。定義ファイルなどをいつ、どのようにアップデートするかについて明確なルールもない」(ラッツラフ氏)。そこで、トレンドマイクロなどパートナーから提供されるウイルス定義ファイルやアップデートについては、いったんノキア側で自動的に検証・テストを行い、その上で顧客に配布する仕組みとした。

 検証にかかる時間は数分程度という。ノキア・ジャパンのカントリージェネラルマネジャー、柳下幹生氏は、「汎用OSにソフトウェア製品を組み合わせる場合だと、最新のアップデートが正しく動作するかを自ら検証し、リスクを負わなければならないが、一連の作業に要する時間は数分どころではない。Message Protectorのアップデートは、一見すると時間がかかるように見えるかもしれないが、実際には断然速やかに更新作業を行える」と述べた。

 このように管理に要する手間を省くことによって、管理者は運用作業ではなく、ポリシーの策定や競争力、生産性の向上といった本来専念すべき課題に取り組めるようになるとラッツラフ氏は指摘する。

 ただ同時に、導入する側の意識も重要だ。「電子メールを取り巻くさまざまな問題に対する意識は確かに高まっている。逆に言えば、こうした危機管理意識を持っている企業こそ、競争力を持った企業だと言える」(大三川氏)。

 さらにラッツラフ氏は、電子メールが、デジタル化された情報をやり取りする主要な媒体となっており、何らかのきっかけで情報漏えいなどにつながる危険性は大きいと指摘した。「ドアを施錠しないまま退社しないのと同じように、デジタル化された情報についても電子的な“ドア”を開けっ放しにしてはならない。セキュリティは企業内のすべての人に関わる問題だ。1人1人が電子メールを企業資産ととらえ、もっと真剣に取り扱う必要がある」(同氏)。

 Message Protectorの価格は、1000ユーザーライセンスの場合で588万4000円から。両社は引き続きこの分野における協業を続け、次バージョンとなる1.3では、電子メールの管理、監視を行う「InterScan eManager」や同社が提唱する企業向けウイルス対策構想「Trend Micro Enterprise Protection Strategy」に対応した管理ソフト「Trend Micro Control Manager」の機能がモジュールとして追加され、より高度なフィルタリングや防御が可能になるという。

関連記事
▼エンタープライズトップページへ
▼セキュリティチャンネル

関連リンク
▼ノキア
▼トレンドマイクロ

[高橋睦美,ITmedia]