エンタープライズ:インタビュー 2003/07/11 12:21:00 更新


Interview:J2EEで銀行システムの進化を牽引するUFJ銀行 (1/2)

UFJ銀行がBEA WebLogic Serverを採用した。J2EEによる基幹業務のコンポーネント化も視野に入れているという。「銀行システムのオープン化を牽引したい」と同行のシステム企画部長、村林氏は話す。

 UFJ銀行は、システム基盤「総合金融プラットフォーム」に、BEAのJ2EEアプリケーションサーバ「BEA WebLogic Server 8.1J」を採用した。手始めに、グループ会社システムなど、UFJ銀行との連携が必要となる業務に利用されるが、将来は銀行の基幹業務システムの基盤としても活用していくという。ミッションクリティカルシステムの代名詞ともいえる銀行システムに、J2EEベースのアプリケーションサーバが採用されたことは、情報システムのオープン化が新たな段階に入ったことを示している。合併によるシステム統合をいち早く完了したあと、顧客に新しい金融サービスを提供すべく、戦略的なIT投資を再開したUFJ銀行のシステム企画部長、村林聡氏に話を聞いた。

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オープン化を広めて社会全体が恩恵を享受できるようにしたいと村林氏


ZDNet 先ごろ、BEA WebLogic Server 8.1Jを採用したことを明らかにされました。J2EEアプリケーションサーバを採用した背景を教えてください。

村林 UFJ銀行では、統合前から次世代のバンキングシステムを「チャネル部」「プロダクト部」「データベース部」という、いわゆる3層構造で構築することを目指してきました。

 それまではというと、メインフレームを使った中央集権的なシステムにより、内部管理をいかに効率的に行うか、事務をいかに効率的に処理するか、という「量」との戦いを銀行は続けてきたのですが、金利や業務の自由化によって経営環境が変わりました。銀行もさまざまなサービスによって差別化し、特色を出さなくてはならなくなったのです。

 そうなると中央集権的なシステムというよりは、お客さまに接するチャネルが重要になってきます。以前であれば、銀行まで行かないとできなかったことが、今ではインターネットの利用も当たり前になってきていますし、電話によるサービスもあります。UFJ銀行ではATMコーナーに、ACMというテレビ電話付き応対機を設置しています。これを利用すれば、新規の口座開設から住所変更、ローンの受け付けといった、面倒な手続きをいつでも担当者と相談しながらできるようになります。

 UFJ銀行では、お客さまの利便性の向上のために、こうしたチャネルの追加に取り組んでいます。お客さまとの接点を非常に重視しているわけで、そうした意味でば、チャネルも基幹システムの一部と言えるかと思います。とはいえ、テレビ電話までメインフレームでというのは無理があります。自ずと新しい技術をいち早く適用しなければならず、やはりオープン系システムではないでしょうか。

 チャネルの利便性が高まってくると、次は独自色のある商品をいかに提供できるという競争になります。これまでは定期預金だけだったものが、自由化によって投資信託や保険商品が販売できるようになり、チャネルサービス競争から商品サービス競争に入ってきます。

 これは伝統的な預金や融資と違って、手数料を得るフロービジネスになり、そうなるといかに早く商品を提供できるか、そのための仕掛けや仕組みが「プロダクト」の層でも必要になってきます。ここでも、オープン系システムによって、より早く対応することを目指したわけです。

ZDNet システムの堅牢さという点ではどうでしょう?

村林 メインフレームはハードウェア的にどんどん進化していますし、確かに堅牢性に一日の長がありますが、IT業界全体を見ると、確実にオープン系システムに向かっています。多くのベンダーがUNIXやLinux、Windowsに投資を行い、オープン系システムの弱点といわれた信頼性や堅牢性を高める作業に取り組んでいます。そのため、使う側もオープン化の波に乗った方が経済合理性に優れているわけです。オープンで優れた技術や製品を使い、システムを効率良く構築していくことが、商品やサービスの競争そのものなんです。

 しかし、自分たちだけ「オープン系で先進的なシステムを構築します、みなさんはついてこれないでしょう」というのでは市場が広がりません。こうしたオープン化はみんなに広めたいと考えています。

ZDNet UFJは銀行システム進化の牽引役になろうとしているのですか。

村林 銀行は第3次オンラインシステム以降のシステムを模索しているのですが、なかなか解が見つかっていません。また、多様化も進んでいて、解は一つではないと思います。BEA WebLogic ServerのようなJ2EEアプリケーションサーバでシステムを更改していく分野もあれば、レガシーのシステムを生かしていくところもあります。新しいオープン系システムでも銀行の基幹システムを担えるということをしっかりと実証し、そのメリットを享受したいし、世の中もそうなっていくべきだと考えています。

ZDNet しかし、J2EEベースへの移行というのは、かなりのチャレンジではないですか?

 UFJ銀行の場合、COBOLよりもさらに技術者の少ないPL/1を使ってシステムを構築してきました。開発リソースの確保という点からも難しくなってきているため、Javaを選択していくというのはむしろ自然です。

 また、J2EEベースのシステムを導入してから既に3年近く経過していますが、止まることなく稼動しています。待機系のシステムをしっかり構築すれば、特に問題はありません。メインフレームを廃棄するわけではありませんが、トランザクションの量が増えてもJ2EEで大丈夫そうだという手ごたえを得ています。

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[聞き手:怒賀新也、浅井英二,ITmedia]