エンタープライズ:インタビュー 2003/07/11 12:21:00 更新


Interview:J2EEで銀行システムの進化を牽引するUFJ銀行 (2/2)

単なるコンバートでは問題は解決しない

ZDNet J2EEベースで基幹業務システムのコンポーネント化を進めることも明らかにされていますが、その狙いを教えてください。

村林 オープン系の製品を使うという意味では、7〜8年前から行われていたことなので、それ自体は実はそれほど驚くようなことではありません。オープン系に移行すること自体が重要なのではありません。本来の目的は、生産性を高めたり、開発のスピードアップを図るということです。

 銀行業界は、もう十数年もシステムのメンテナンスを繰り返してきました。そうしたシステムをオープン系に単に乗せ換えるというのでは、問題の本質は解決されないままです。過去と同じことを繰り返さなくても済むように、作り変えていくことが最も重要なのです。

 コンポーネント志向、オブジェクト指向というアプローチを採用する背景にはそうした狙いがあります。また、最近では新生銀行が、海外では実績のあるFLEXCUBEを採用しているそうです。インドを拠点とするi-flex solutionsが開発した金融機関向けのパッケージで、パラメーターによってシステムを構築できると聞いています。こうしたパッケージも自由に選択できるようにシステムを変えていくべきだと思います。

 ホストのPL/1やCOBOLをそのままJavaコンバートしても、もちろん、言語で解決される部分もあるが、本質的な問題は解決されません。

ZDNet 今後、どのようなシステムに進化させていきたいですか?

村林 われわれはシステムの将来像として、「UFJ BB」という構想を掲げています。BBは「Broadbankd Banking」の略です。ブロードバンド環境が家庭にも普及し、社会インフラとなるのに伴い、個人も企業も銀行も接続し、あらゆる市場もその上にのってくることでしょう。

 そうなれば、チャネルにも一層の変革が起こるでしょう。現在、ATMコーナーでACMによるサービスをを提供しているわけですが、ブロードバンドが社会インフラとして定着すれば、同じことが家からできるようになります。企業も大量の書類のやり取りをネットワークで行えるようになります。UFJ銀行も、そうした環境に対応した商品、サービスを提供していかなければならなくなります。

 そのときに考えなくてはいけないことの一つが、本人認証の問題です。これをきちんとしない限り、ブロードバンドネットワークを活用できません。われわれは、本人認証の問題に積極的に取り組み、次のシステムにつなげていきます。

 既に、印鑑による個人の認証という仕組みが崩壊し始めています。印鑑の偽造技術が進んだことなどから、不正に預金が引き出される被害が多発しています。IC化によって、かなり防止できるようになりますし、それはネットワーク時代の新しい認証手段ともなります。もちろん、こうしたことはe-Japan構想などとも平仄(ひょうそく)をあわせていくことになると思います。

 また、ブロードバンドが普及すれば、バックオフィス業務の集中化も可能になります。現在、UFJ銀行では、振込伝票の処理も支店では行っていません。伝票をスキャナで読み取り、センターでイメージ画像を見ながら処理を集中的に行っているのですが、ブロードバンド化が進めば、さまざまな業務をセンターで行うことができるようになります。そして、そのセンターを、例えば、海外に置くことも可能となるでしょう。

ZDNet 最近、情報システムを構築・運用するための意思決定の仕組み、つまり「ITガバナンス」の確立が企業にとって重要だと指摘されていますが、入行以来、そのキャリアのほとんどをITシステム部門で働かれている村林さんから見て、いかがですか。

村林 統合前の旧三和銀行は、非財閥系の銀行ということもあり、「ピープルズバンク」を標榜していましたから、一般の利用者によるトランザクション量が多く、事務の効率化が不可欠でした。また、先進的なサービスを提供しないと旧財閥系の他行との競争に勝てないという意識もあり、ITが比較的重要視され、人的リソースや予算も配分してくれていました。

 また、銀行システムの障害が大きな社会問題になるなど、ITが経営・業務を支える現在では、経営層も含め、従来以上の意識改革が起きていると思います。

 UFJ銀行では、半年に一度は取締役会にシステムの状況を報告するなど、経営陣によるガバナンスが行われています。

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[聞き手:怒賀新也、浅井英二,ITmedia]