エンタープライズ:ニュース 2003/09/12 01:23:00 更新


PeopleSoft買収は競争優位を得るために必要なアクション

Oracle Worldの3日目、PeopleSoft買収に関する記者発表会が開催された。フィリップ氏にはこの買い物が正しい行為であることだという絶対の自信があるようだ。

 「PeopleSoft買収の件については、特別にQ&Aの時間を設けるから、それまで質問は控えるように」というのが、米Oracleの広報担当者の要望だった。指定されたその日のその時間、プレスルームには部屋から溢れるほど多くのプレスが集まった。矢のような質問を受けて立ったのは、エグゼクティブ・バイスプレジデント、チャック・フィリップ氏。今年、ウォール街から転身した異色の上級役員で、今回の案件はどうやら彼の提案によるものらしい。

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PeopleSoft買収の正当性を話すチャック・フィリップ氏

 フィリップ氏にはこの買い物が正しい行為であることだという絶対の自信があるようだ。業界で定評のあるPeopleSoftの人事管理システムを手に入れることは、「SAPとのERPアプリケーション分野における戦いで優位に立つために必要なこと」と、この買収の正当性を訴えた。

 また、それを裏づけるかのように、投資家たちと持った対話の中身を披露。同氏によると、「ソフトウェア業界はほかの産業よりもリスクが高いため、確実に投資に対する回収を得ることを考えると、100の小さな企業が存在するより、安定した大きな企業が少数存在するほうがいい。この買収は理にかなっている」と投資家たちは好意的だったという。

 しかし、この買収は少々強引だという非難めいた空気が記者会見会場の基調に流れ、「投資家賛同説」が出るや、ある記者はただちに反発した。「PeopleSoftは100の小さな企業の1つではなく、締め出すことが正しいとは思えない。競争原理を考えても、業界にとって望ましくない、投資家が望んでいないという論理は成り立たない」と切りかえした。

 ほかにも、「抵抗により株式公開買い付け価格の条件を上げていくなら、結果として高すぎる買い物についてしまうのではないか」「PeopleSoftはJ.D.Edwardsを買収した企業。3つの製品ラインを統合するのは困難なのでは?」など、懐疑的な声が相次ぎ、ついには「あなたはこの買収をまとめるとボーナスがもらえるのか?」という質問まで飛び出した。

 フィリップ氏はその1つひとつに対して丁寧に反論。ラリー・エリソン氏以上に立て板に水の弁舌だったが、その場の記者たちを納得させるには至らなかった。

 台湾の記者が「買収されるとアプリケーションの利用を止められてしまうかもしれない」と恐れているPeopleSoftの顧客の声をぶつけ、Oracleの株式公開買い付けの狙いはPeopleSoftの事業を崩壊させることにあるという一部の見方の是非を問うと、フィリップ氏は、「買収しても、一方的に物事を進めたりはしない」と力説した。

「何かを決断する前には、事前に調査を行ったり、顧客とコンタクトを取って意見を聞いたり、合意のもとで進めていく。独断専制はない。それは人事に関しても同様だ」(フィリップ氏)

 今回の案件については、司法省が独占禁止法抵触にからむ調査をOracleに対して進めており、同省が買収の継続を承認しなければ、話を先に進めることができない。しかし、「PeopleSoftのすぐれたアプリケーションを手に入れることは、われわれの既存顧客にとっても、製品機能の拡張性を確保する意味で重要なこと」と、フィリップ氏はあくまで買収の成功を信じて疑っていないようだった。

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[吉田育代,ITmedia]