エンタープライズ:ケーススタディ 2003/09/25 01:25:00 更新


ヒット商品を生み出すJCBのTeradataデータウェアハウス

PARTNERSカンファレンスはユーザー主導が特徴。約200のセッションのうち50はユーザー自身による事例紹介だ。JCBでは、Teradataを2000人以上が活用し、効果的なプロモーションや新商品開発に役立てている。

 米国時間9月22日からスタートしたNCR Teradataの年次ユーザー総会、「PARTNERS 2003」カンファレンスは、今年で17回目の開催となる。その規模こそ大きくなったが、ユーザー会が運営委員会を組織し、カンファレンスを主導するのは今も変わらない。24日までの3日間で約200のセッションが行われるが、そのうち50はユーザー自身による事例紹介だ。日本からも三井住友銀行、ジェーシービー、北陸コカ・コーラボトリングの3社が選ばれ、セッションを行っている。

 派手な新製品発表がない今回のPARTNERSだが、マーケティングメッセージが洪水のように流されるカンファレンスとの違いを感じさせる。熱心な参加者たちは先進ユーザーの成功事例や教訓に学ぼうと、連日シアトルダウンタウンのコンベンションセンターへ足を運ぶ。米国時間9月23日に行われたジェーシービー(JCB)のセッションにも、多くのTeradataユーザーたちが詰め掛けた。

 クレジットカード国内最大手のJCBは、提携カードを含め、約5000万枚のクレジットカードを発行する。VISA、マスター、ダイナースと並ぶ国際ブランドでもある。しかし日本市場では、現金による購入が大きな比率を占めたり、銀行引き落としという便利なサービスがある。そのため、クレジットやリボルビング払いの浸透度は今ひとつ。支出に対するカードの使用率は、欧米の25%に対して、日本はわずかに7%に留まるという。

 しかも、強烈なブランド力を誇る自動車メーカーや家電メーカーがクレジットカード市場に新規参入しており、競争も熾烈になってきている。JCBのマーケティング企画部で部長代理を務める外山雄司氏はセッションで、「JCBだけに見える顧客らの嗜好をつかみ、すぐに真似されない製品やサービスを開発しなければならない」と話す。

 同社は1994年にTeradataを導入、「J-Mark」というニックネームのデータウェアハウスを構築した。現在では4.6テラバイトまで容量が膨れ上がり、2000人以上の同グループ社員が販売促進策の立案や評価、あるいはそれに支えられた戦略的な商品の開発に活用しているという。

 既に触れたとおり、日本市場ではカード利用者からの金利収入が見込めない。クレジットカード自体の利用率が低いうえ、金利が発生するリボルビング払いとなると心理的な抵抗が強いからだ。頼みは、年会費であったり、利用に応じて加盟店から得られる手数料となる。このため、外山氏によれば、カード利用者一人ひとりの利益貢献度を的確につかみ、適切なプロモーションを実施していくことがより重要になるという。

 つまり、大切にする顧客と、そうでない顧客をしっかりと選別することが第一歩となる。JCBではJ-Markデータウェアハウスにより、利用者の利益貢献度を分析し、10段階にセグメント分けした。ひと握りの顧客らが大半の利益に貢献しているのは、どの業種業態にも共通することだ。同社の場合も、上位10%の顧客が利益の71%を生んでいる。上位20%では、実に90%に達する。

 JCBでは、購買履歴から彼らの嗜好を割り出し、タイムリーに効果的なプロモーションを実施する一方、アンケートなどを通じ、彼らの価値観を把握することにもトライしている。単に「ファッションに興味がある」というだけでなく、「高くても良い品質のものを好む」とか「お買い得品を好む」といったライフスタイルや価値観までつかみ、より効果的なアプローチの仕方を模索している。

 外山氏によれば、こうしたカード利用者の分析から、いわゆる「ゴールドカード」への切り替えを促すダイレクトメールを発送したところ、通常の約5倍のレスポンスがあったという。年会費収入が増え、利用限度額も拡大されることから、年間数億円という売り上げ増につながったという。

ターゲットを明確にしたLindaやArubara

 Teradataデータウェアハウスは、ライバルたちの追従を許さない新たなヒット商品も生み出している。20〜30歳代をターゲットにした「JCB LINDA」(リンダ)と、「あるとき払い」という新しいカードのジャンルを生み出した「Arubara」(アルバラ)だ。

 昨年春にデビューしたLINDAは、年会費を支払いたくないという若い女性の考え方と、無料カード会員は利益に貢献しないというJCBの収益構造のギャップを埋める新商品だ。月額1万円以上のカード利用があれば月会費(100円)を無料とし、さらに利用額に応じて2倍、3倍のポイントを得られるようにした。1万円といえば、携帯電話料金にプラスアルファといった金額だ。心理的なハードルを下げることに成功し、LINDAは18万人の会員を集めている。

 一方、リボルビング払いを浸透すべく企画されたのが、「借りやすく、返しやすい」リボ払い専用カードのArubaraだ。こちらの会員数も24万人に上り、大ヒット商品といえる。「敢えて信販会社を頻繁に利用している顧客は避け、彼らと1回払いしかしない顧客との中間層を狙ったことが成功に結びついた」と外山さんは話す。年会費は無料とし、もちろん利用額に応じたポイントの増加もある。

 「きめの細かい仮説とその検証のためにTeradataは欠かせない。新しい商品開発だけでなく、JCBグループ4000人のうち2000人以上が日々のキャンペーン管理に活用している」と外山氏。

 もはやデータウェアハウスは、ひと握りのプロフェッショナルや経営幹部だけのものではない。NCR Teradataでは、データウェアハウスの「民主化」と呼んでいる。ヒット商品を生み、さらに会員の心をつかむためには、プロモーション単位で的確な立案とその結果の評価が必要だ。JCBは、絶えず競争力を高めるべくTeradataを活用している。

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[浅井英二,ITmedia]