エンタープライズ:ニュース 2003/10/06 17:52:00 更新


グリッドの幕開け、Oracle 10gが国内デビュー

日本でもOracle 10gの戦略が明らかにされた。ライセンス価格は、グローバルな発表待ちとなるが、1月29日から製品出荷が始まる。12月中旬には3年ぶりとなる「OracleWorld Tokyo」を開催し、Oracle 10gを売り込んでいくという。

 日本オラクルは10月6日、都内のホテルで記者発表会を行い、「Oracle 10g」の製品戦略を明らかにした。ライセンス価格に関しては、グローバルな発表待ちとなるが、国内出荷は1月29日から始まることが明らかにされた。同社では今後、マイクロソフトを強く意識した対競合戦略の発表や3年ぶりとなる「OracleWorld Tokyo」(12月17日、18日)の開催によってOracle 10gを売り込んでいくという。

 Oracle 10gは、エンタープライズ向けグリッドコンピューティングを実現する基盤ソフトウェア。Oracle Database 10g、Oracle Application Server 10g、および管理用ソフトウェアのOracle Enterprise Manager 10gから構成され、9月上旬、カリフォルニア州サンフランシスコで行われた「OracleWorld 2003」でベールを脱いだばかりだ。

 Oracleはインターネットの波に乗り、1990年代後半、当時のOracle8に「i」(スモールアイ)を冠して以来、すべての製品でインターネットコンピューティング対応を図ってきた。「i」から「g」への変更は、新たなステージであるグリッドコンピューティングへの対応を意味している。記者会見で新宅正明社長は、今回の名称変更を「留まることない技術革新」と説明する。パフォーマンスの向上はもとより、新しいEnterprise Managerによって運用管理の自動化を図り、RAC(Real Application Clusters)テクノロジーをエンタープライズグリッドへと昇華させている。

 「われわれはOracle 10gによって、企業がシステム全体のリソースを仮想化し、統合管理とその自動化を進め、リソースを最大活用できるようにする。いよいよグリッドコンピューティングの幕が開いた。パートナーらと一緒にショーケースをつくっていきたい」(新宅氏)

実機デモでグリッドの実力を証明

 もちろん、グリッドコンピューティングの定義を巡り、競合他社から指摘があることは日本オラクルでも承知している。セールス、マーケティング、および開発を統括する山元賢治専務執行役員は、「黎明期にはさまざまな定義があり、それらが固まるのはこれから」としたうえで、「Oracleが提案するエンタープライズグリッド」を日本の電力会社を引き合いに出して説明した。

 山元氏によれば、電力の小売りの自由化が始まった国内の電力供給体制は、一極集中から中央に電力の取引所を置いて統合管理するスタイルに変わりつつある。まさにメインフレームからグリッドへの変遷と同じだという。

 「課題は、仮想化と管理可能なリソースのプール、そして近い将来の需要を予測したプロビジョニング」と山元氏。Oracleのエンタープライズグリッドコンピューティングは、アプリケーションサーバ、データベース、およびストレージの各レイヤで仮想化とプール化を図り、Enterprise Manager 10gに新たに搭載された「Grid Control」によって負荷に応じて動的にリソースの割り当てを行い、こうした課題に対処していくという。

 この日、ホテルの記者発表会場には、大量のブレードサーバが運び込まれ、実際にOracle 10gを稼動させ、エンタープライズグリッド環境におけるワークロード管理のデモンストレーションを実施している。システム構築とデモが行われたのは、NEC Express5800/420Maと富士通 PRIMERGY BX300の16ノード構成だったが、両社以外の主要ブレードサーバベンダーも負けじと実機を並べた。

 デモでは、過度の負荷が掛かりパフォーマンスが落ちたERPシステムにノードを追加したり、レスポンスの低下しているオンラインバンキングのアプリケーションをクローニング(アプリケーションサーバの追加)してみせた。どちらもEnterprise Managerから容易に行え、この管理ソフトウェアがOracle 10gの目玉の一つであることを印象付けた。また、Oracle Database 10gに組み込まれた「自動SQLチューニング」機能もデモに組み込まれ、パッケージアプリケーションを変更せずに、データベース自体の自動化機能でパフォーマンスが改善できることもアピールした。

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▼Oracle Grid Computingサイト

[浅井英二,ITmedia]