エンタープライズ:ニュース 2003/10/11 21:06:00 更新


test8以降はいよいよRCへ、年内リリース目指すLinuxカーネル2.6概要をモートン氏が語る (2/2)

デバイス数倍増はエンタープライズにおける複数ディスクサポートが理由に

 「マウスやキーボード、ジョイスティックなどの入力レイヤでは、これまでさまざまなドライバが寄せ集めの状態だった」とモートン氏。この乱雑としていた点にも着手され、カテゴリー分けされたという。

 また新たな点として「デバイスメモリでは、2.4で16ビットの数値でデバイス識別をしていたため、65000デバイスまでの制限だった。これを倍に拡張した」とモートン氏。データベースでの用途を視野に入れたものであり、大量なディスク管理などを行えるよう拡張されたものだろう。データベースなどの利便性を考えたものだといえる。

カーネルコアへのスケジューリングはミリ秒単位への追求

 カーネルコアにおけるスケジューリング機能についても触れられた。通常、マルチスレッドが考慮されていない場合には、稼働中のプロセス、例えばディスクからの読み取りであっても別のユーザータスクに切り替わるまでの待ちが生じる。「プリエンプション可能なカーネルであれば、自身への割り込みが可能となり別タスクへの切り替えも可能だ」とモートン氏。「しかし実際には、プリエンプション可能なカーネルは大きな違いをもたらさない」とも語る。

 どのようなシーンで役立つかというと、「例えばオーディオ再生時などで1ミリ秒単位での時間制約がある場合だ。また、ディスク間コピーなどにも当てはまり、割り込みを行いタスクを切り替えることが可能だ」という。

 カーネル2.6で採用されたfutexes(フューテックス)は、ユーザー空間ロック機構とでもいえばよいだろう。従来は、システムファイルのセマフォ(共有アクセスを防ぐ遮断の仕組み)を利用した際、毎回ロックを行い、解除にはシステムコールを実行する必要があった。モートン氏は「カーネルに対してのリクエストがパフォーマンス低下につながっていた」と指摘した。「これまではカスタマー側で工夫が必要だったが、フューテックスでシステムコールが提供される。これによりカーネルにアクセスする回数を減らすことができ、また、ロックによる待ち状態も把握できるようになった」とモートン氏。このロック機構はPOSIXスレッティングの書き換えの中核となっている。

 スレッティングサポートについては、「POSIXのスタンダードに関与するものだ。Red Hatのデベロッパーチームは、NPTL実現に取り組みPOSIXへの実装をした。これにより数多くのものがカーネル2.6に取り込まれ、プロセスのグループ管理、スレットグループの管理などが含まれた」という。

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来場者にカーネル2.6の試用を強くすすめるモートン氏。自身はここ1年間2.6だけを使い続けているという


ACPIサポートはLinuxでは困難な問題が山積み、ドライバ統合ではALSAが際だつ

 モートン氏は「ACPIサポートは最も大きな問題かもしれない」という。「ノートPCベンダーは、ACPIのバグをBIOSで吸収し、Windowsのドライバによって問題を回避している背景がある」と語った。また、現在ではさまざまなノートPCがあるため、非常に多くの時間が必要だと苦悩を見せる。レイヤーが異なるものの、デバイス単位でのソフトウェアサスペンドは、早期に解決できるはずだという。

 カーネル2.6ではデバイスドライバ統合も行われている。なかでも際だっているものは、ALSAサウンドドライバのマージだといい、これには2.4で利用されているモジュールも含まれる。さらに、ATAPIデバイスのDMAサポートや、インテルからの10Gビットイーサネットドライバも含まれていると付け加えた。

Linuxにおけるネットワークは洗練の域、NUMAサポートによりパッチの整理が行われた

 モートン氏は、カーネル2.6においてネットワーク面には比較的進展がないと語る。これはLinuxのネットワークデザインが優れているからだと強調し、「カーネルにおいて最も良く機能しているところだ」という。そして、「常に2.4へのバックポーティングもできるようデザインしている」ともコメントする。関連するものとしては、2.4のIPSecは外部バッチだったが、2.6ではデーブ・ミラー氏による見解で新たにコードを書いたと語った。

 x86のサブパッチについて、2.4まではさまざまなコードが一体化し乱雑だったことが挙げられ、今回はチップセット別、NUMA対応などを見据え、特定プラットフォーム別に分けたという。なかでもカーネル内で最も大規模なパッチとなるのが82、64ビットのMIPSを同一に扱う点。現在進行形とのことだ(10月10日時点)。

 最後には、組み込み分野における報告もあった。uCLinuxは、カーネル2.6によって非常に大きな変化を遂げている例だという。すでにリリース元のArcturus Networksにより出荷が開始されており、その効果は専用機でのパフォーマンスに反映されると語った。

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関連リンク
▼The Linux Kernel Archive
▼OSDN ジャパン
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[木田佳克,ITmedia]