エンタープライズ:インタビュー 2003/10/27 14:50:00 更新


Interview:IBMのミルズ氏、セキュリティとシンクライアントについて語る

IBMの上級副社長、ミルズ氏に話を聞くシリーズ第2弾。今回は、セキュリティが企業の判断に与える影響、Microsoftベースのデスクトップに代わる選択肢としてのシンクライアントに対するユーザーの関心の高まりについて聞いた。(IDG)

 IBMの上級副社長兼グループエグゼクティブ、スティーブ・ミルズ氏は、同社の年商136億ドルのソフトウェアビジネスを統括する。そのうちの110億ドルを稼ぎ出しているのがミドルウェアだ。Computerworldの編集部のスタッフは、セキュリティが企業の判断に与える影響、ならびにMicrosoftベースのデスクトップに代わる選択肢としてのシンクライアントに対するユーザーの関心の高まりについてミルズ氏に話を聞いた。本インタビューは2部構成となっており、そのパート1は10月23日にお届けした。今回はパート2を掲載する。

――Computer & Communications Industry Association(反Microsoft団体)が最近公表したレポートによると、Microsoftによるデスクトップの支配はセキュリティに対する重大な脅威であるとしています。セキュリティをめぐる懸念は、インフラおよびソフトウェアに対する顧客の需要および選択にどんな影響を及ぼしていますか。

ミルズ 今後1年間くらい、この問題は大いに注目を集めるでしょう。ウイルスやワームの累積的効果は、全世界の企業の間で多くの不安を引き起こしました。企業の環境に多数のセキュリティホールがあり、問題が発生した際の対策に費用がかかるからです。Microsoftの技術は、今日のように相互接続された公共インターネット環境向けに設計されておらず、しかもMicrosoft自身が攻撃のターゲットとなっていることが、こういった懸念をもたらしたのです。企業ユーザーは、「何をすればいいのか? どんな対策があるのか」と質問しています。しかし完璧な答えというものは存在しません。答えの多くは手順的な性質のものです。また、技術的な答えもあります。

 例えば、技術的な観点から言えば、公共インターネットに接続されたUNIXシステムであれば、オンザフライで環境を動的に変更することが可能です。UNIX環境内部の動的な参照構造は、環境に変更を加えたり、外部からの侵入を阻止したりできるなど、柔軟性に優れた環境を実現します。公共インターネットに接続されたUNIXシステムを配備している企業は、Windowsサーバシステムを配備している企業に比べると、ある程度安全です。

――劇的な違いはないと考えているのですか。

ミルズ 管理のしやすさという面、ならびに緊急時に社内環境への侵入を防止するためにすべてのサーバをオンザフライで更新する能力という面では劇的な違いがあると思います。これは重要なことです。IBMではWindowsシステムは公共インターネットに接続していません。インターネットとの接続にはUNIXシステムを使っています。

――つまり、セキュリティを改善するには管理を強化すればいいということですか。それとも、異種混在環境にする方が無難なのでしょうか。

ミルズ 異種混在環境それ自体が必要だとは思いません。重要なのはシステム特性の問題です。Windowsベースの環境よりもUNIXで統一した環境の方が、セキュリティの欠陥に対して、より柔軟にパッチ、フィックス、アップデート、修正を施すことができます。異種混在という問題をめぐる最近の論調には賛成できません。問題の根本原因は、Windowsにセキュリティの欠陥が多数存在することに加え、オンザフライで修正することができない、モノリシックで柔軟性の低いWindowsの基本デザインにあるのです。

――IBMはWindowsデスクトップに代わる選択肢を提供するために何かしているのですか。

ミルズ シンクライアントがそれです。われわれは壮大なポータル構想を持っています。われわれは顧客に対して、業務スタッフ、支店の従業員、事務職員、製造現場のスタッフなど、できるだけ多くの社内ユーザーをポータルベースの環境に移行させるようアドバイスしています。実際にOfficeを必要とする社員は、果たして何人いるでしょうか。私の知る限り、シッククライアントのサポートにかかる費用は、最低でも1ユーザー当たり年間5000ドルです。一般に、年間で5000〜1万2000ドルのサポートコストが発生するのです。Microsoft OfficeからStarOfficeへの移行が大きなコスト節約をもたらすわけではありません。シンクライアントに移行することによって大きなコスト節約が可能になるのです。クライアントのコストを決めるのは、クライアントボックスやその上で動作するソフトウェアのコストではなく、サポートにかかる労力のコストです。

――IBMのポータル戦略は今後1〜2年、どのような展開になるのでしょうか。

ミルズ WebSphereポータル製品の売り上げは年率50%のペースで伸びており、今後もこの傾向が続くでしょう。つまり、ユーザーの生産性を向上させるためにアプリケーションのインタフェースをポータル化するという考え方が広く支持されているのです。

――Microsoftベースのデスクトップに対する新たな攻撃が現れると思いますか。

ミルズ われわれは、ブラウザベースのアプローチ、つまりポータルベースのアプローチが、多くの企業が目指している方向であると考えています。企業はOfficeにかかるコストおよびデスクトップ環境の肥大化に対して懸念を抱いているのです。



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