特集
2004/01/11 01:11:00 更新

第一回
ワークスタイルを変革させる新世代エンタープライズポータル (1/2)

多様化し、そのスピードはますます加速化していく昨今のビジネス。企業の生産活動においては、情報資産の戦略的な活用が重要となる。EIP:Enterprise Information Portalの導入はその解決策の一つだが、そのEIPにも新しい波が押し寄せてきている。

2004年はポータル元年

 ここ最近におけるエンタープライズポータル構築動向を見ていると、のちに振り返ったときには間違いなく2004年という年が、エンタープライズポータル元年と言われることになるであろう。

 2003年度の春頃から、国内のいくつかの大手企業でエンタープライズポータルの導入検討プロジェクトが発足、実際にそれらのうちいくつかのシステムが年度の後半から順調に稼動しつつある(2003年夏に日経BP社がインターネットで行った調査でも、49%が既に自社内にエンタープライズポータルが導入済みだと回答)。その中には、数年前に先進的に企業情報ポータルを構築した企業が、過去に一旦構築したポータルの再構築作業として再度ポータルに投資を向かわせている例もある。

 企業情報ポータルというキーワードが初めて世に出てきたのは2000年頃である。それから3年以上も経過した今、なぜまたエンタープライズポータルというキーワードがブレイクしようとしているのだろうか? 最近構築されているエンタープライズポータルの導入事例を分析してみると、それらの背後にはある共通的な狙いが隠されていることに気が付く。そしてそれは初期の企業情報ポータル導入の際には見られなかった兆候である。

 その共通的な狙いとは、すなわち「ワークスタイルの変革」である。多くの企業が今まさにエンタープライズポータルを使って、従業員の「ワークスタイルの変革」を実現しようとしているのである。

新世代のエンタープライズポータルの構築の狙いとは

 過去には自社内イントラネット上に申し訳程度のトップページやリンク集を用意するだけで良しとしていた企業が、いまこぞってエンタープライズポータルの構築に乗り出しているのには、いったいどんな理由があるのだろうか? なぜ従業員のワークスタイルの変革の手段として、エンタープライズポータルというソリューションが有効なのだろうか?

 昨今の激しい環境変化の中で、企業における従業員のワークスタイルは、従来のような紙と対面コミュニケーションを中心としたものからITを活用したものへと変革を余儀なくされている。

 従来の日本企業におけるホワイトカラーの従業員にとって、ワークスタイルとは各自が与えられた役割の範囲内で、社内にあるシステムの2つか3つを自分の業務の進行に合わせて順次切り替えて利用するというものが主流であった。ところが昨今の厳しい経営環境の折、企業内の従業員は減少傾向にあり、その結果として彼ら一人あたりで担当する業務の量は以前に比較するとかなり増加している。既に生産現場ではベルトコンベア式の流れ作業方式ではなく、一人の多能工が複数工程を担当して組み立てを行うセル生産方式が取り入れられてきているように、ホワイトカラーにもその波が訪れたのである。

 さらにインターネットをはじめとする外部から入り込む情報が爆発的に増大したことによって、一人が扱うべき情報そのものの量も以前と比較すると級数的に大きくなっている。

 こういったホワイトカラーのビジネス上の生産性向上がメインテーマとなった現在では、個人・チーム・組織のすべてにおいて生産性を向上させるための「インフォメーション ワーク」の実現が不可欠となった。インフォメーション ワークは具体的には、文書作成・アクセス・理解と吸収・コミュニケーション・コラボレーション・意思決定の6つのコアプロセスから構成されるが、この6つのプロセスを常に横断・機動的に切り替えて業務をこなすのが新しいワークスタイルということになる。

 実際にいままで多くの企業がこの6つのプロセスそれぞれを円滑に処理するための支援システムを開発/導入してきている。しかしながら依然としてそれぞれのシステムは別個でバラバラになっているというのもまた現状である。しかるにこれを統合する役割として、エンタープライズポータルが注目されているのである。

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ワークスタイルを変化させるエンタプライズポータル


 これはすなわち、IT化の進展に伴い導入されたビジネス文書の作成支援の為のOfficeスイート製品やコミュニケーションを支援するメールシステム、そして業務関連情報へアクセスするための個別業務システムといった、社内の各システム内に分散している情報内容を一つに集約して表示する役割を持っている。この機能が実現できれば、従業員はその都度個別システムへアクセスすることなく、エンタープライズポータルだけを使って適宜必要な情報を入手することが可能となる。

 従業員が1日を通して使用するすべての情報、ドキュメント、アプリケーションに、エンタープライズポータル経由でアクセスすることで、システムおよびレポートから適切な関連情報を適宜抽出・再利用したり、検索や参照を行ってドキュメント、プロジェクト、ベスト プラクティスを迅速に見つけ出して利用することが簡単にできるようになる。

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