特集
2004/01/11 01:11:00 更新
第一回
ワークスタイルを変革させる新世代エンタープライズポータル (2/2)
ナレッジマネジメントとしてのポータル
さらに現在、企業で注目されているもう一つのキーワードとしてナレッジマネジメントというものがある。この面からもエンタープライズポータルは有効であるといえる。エンタープライズポータルによって、ナレッジデータベースやナレッジコミュニティといった社内のナレッジ系のコンテンツと、それ以外の業務遂行に不可欠な個別業務システムとを連携させることが可能になる。
これは、エンタープライズポータルに検索機能やプッシュ配信機能、情報のカテゴライズの機能を連携させることでユーザによる知識へのアクセスコストを低減させ、効率的な知識活動を支援するのが目的である。前述したように、従業員がアクセスする情報の絶対的なデータ量は急速に増えている。社内で埋もれがちな貴重なノウハウを、必要になったタイミングに必要としている人に提供する為には、エンタープライズポータル上には検索やプッシュ配信の機能が不可欠である。
この場合、様々な情報が一つの画面に複合的に表示されることの付加価値的な効果も期待できる。いままでばらばらに提供されていた情報を一元的かつ並列的に見ることによって、従業員は従来にはない新たな気付きを誘発し新しいアイデアを生むことができるかもしれない。
エンタープライズポータルを利用することによって、インフォメーション ワーカーに新たにコラボレーションのための「場」を提供するだけでなく、それぞれの「場」を有機的に結合して企業内システム全体に拡大することも可能となる。
ポータル提供ベンダーは淘汰の時代
こうしてエンタープライズポータルに注目が集まる中、ここ数年さまざまなベンダーがエンタープライズポータルの構築基盤となるプラットフォーム製品を開発し、発表、提供してきた。ちなみに矢野経済研究所の調査によると2004年度の国内におけるエンタープライズポータル市場は約19億円、2006年度には約41億円規模になると予測されている。
しかしながら一方で、一年前までは30社近くあったといわれるエンタープライズポータル構築基盤の提供ベンダーも既に淘汰の時代へ突入したのか、買収、合併、売却などにより最近では10社近くまで減ってきている。IT業界における他のプロダクト製品と同様に、ベンダーの「勝ち組」「負け組」への2極化と集約化・寡占化が急速に進行している。
またエンタープライズポータルはその性格上、いったん構築するとその後は企業システムにおいてユーザに対するプレゼンテーション層をつかさどる不可欠なインフラシステムと化す。そして企業内システムが日々拡張されていくのに合わせて、そのベースとなるエンタープライズポータルも構築導入後も継続的に長い期間をかけてメンテナンスをしていく必要が生じる。
したがって、エンタープライズポータルを構築する際にはきちんとしたベンダーと製品を選択するということも非常に重要な要素となる。
EIP市場におけるマイクロソフトとSharePoint Portal Server
マイクロソフトは、エンタープライズポータルの分野においては、非常に早くからその将来性に注目をして積極的にチャレンジをしてきたベンダーである。古くはデジタルダッシュボードというフレームワークテクノロジーに端を発し、SharePoint Portal Server 2001という製品で本格的なポータル構築支援ソリューションの提供を開始した。国内におけるポータルサーバのインストール実績数においてもトップクラスの実績を持つ。Microsoft Office SharePoint Portal Server 2003は、そのマイクロソフトが提供するエンタープライズポータル構築基盤の最新バージョンである。
マイクロソフトが最初に提供したデジタルダッシュボードでは、その名前の通り集めた情報を一覧的に表示することを目的していた。その次のSharePoint Portal Server 2001は、企業におけるワークグループ単位でのコラボレーションを得意としていたが、最新のSharePoint Portal Server 2003はそれらの特長を引き継いだ上に、信頼性とスケーラビリティについてエンタープライズ規模での利用をターゲットに強化を行っている。
SharePoint Portal Server 2003が他のベンダーのポータル構築基盤と大きく異なるもう一つの特徴は、情報の再加工や再活用の方法まで提供できることにある。従来型のポータル構築基盤では情報を蓄積して配信するのみであったが、SharePoint Portal Server 2003ではMicrosoft Office Systemとの統合によって、ポータル経由で取得した情報の再加工や再活用までをシームレスに実現することが可能である。また、従来のメールによるコミュニケーションを補完する新たなメッセ-ジングツールとして最近注目されている、インスタントメッセージへの対応も完了している。ますますスピードアップすることが予想されるホワイトカラーの新しいワークスタイルでは、リアルタイムコミュニケーションは今後不可欠な機能だと言える。
先にも述べたが、ポータル構築のソリューションは導入に慎重を期さなければならない。それはすなわち個々の特徴を熟知し、自社にとって最適と思われる選択肢を適切に判断することが重要となる。その選択肢としてのSharePoint Portal Server 2003を解説することが、本特集の一つの目的である。
[富士総合研究所 シニアシステムコンサルタント 吉川日出行,ITmedia]
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