特集
2004/01/19 12:00:00 更新

第二回
SharePoint Portal Server 2003の全体像を探る (1/2)

SPSを利用したEIPソリューションの特徴、そしてメリットは何なのか? この疑問をSPSという製品の背景となるテクノロジーや機能の面から解説していく。

 Microsoft Office SharePoint Portal Server 2003(以下、SPS)は、マイクロソフトが提供するエンタープライズポータル構築基盤である。一般的なエンタープライズポータルについては第一回で述べた。では、SPSを利用した基盤の特長は何なのか? メリットは? 背景にあるテクノロジーは? 今回は、これらの疑問に答えることで、SPSの全体像をお伝えしよう。

WSSはエンジン、SPSはEIP構築パッケージ

 SPSを理解するうえで、必ず出会う疑問がWindows SharePoint Services(以下、WSS)との違いだ。WSSはWindows Server 2003の標準追加コンポーネントで、無料でダウンロードして利用できる。一方、SPSは有料だ。このため、「SPSはWSSの上位バージョン」あるいは「WSSはSPSの簡易バージョン」という印象を受けるかもしれない。しかし、それは正確ではない。

 結論から述べると、WSSは「情報共有Webサイトを作成するエンジン」、SPSはWSSというエンジンを利用して作られた企業ポータル構築アプリケーションということになる。SPSはWSSのすべての機能を内包したうえで、企業ポータル構築に不可欠なEIP機能を完備した製品なのである。

 では、「WSS」というエンジンとは? 「EIP機能」とは具体的に何を意味するのか? という点が次の疑問として浮かんでくる。

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画面1■WSSのチームWebサイトトップページ(作成直後)。同じ目的を持つチーム単位での情報共有に効果的だ。


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画面2■SPSのポータルトップページ(作成直後)。このページからWSSのチームWebサイトを作成することもできる。WSSのすべての機能を利用できる。


チーム単位の情報共有を支援するWSS

 WSSの技術的な出発点は、Office 2000の「Office Server Extension(OSE)」にある。その後、Office XPの「SharePoint Team Services(STS)」へと進化し、SharePoint Portal Server 2001のダッシュボードインタフェースを取り入れ、今回、.NETベースのWebパーツフレームワークとして改良され、提供された最新技術だ。Windows Server 2003のユーザーなら、同社のWebサイトからWSSをダウンロードできる。

 ダウンロード後、セットアップを行うと、Windows Server 2003で構築したネットワークにWebベースの情報共有機能が追加される。より具体的には、WSSのエンジンと、そのエンジンをベースにしたWebサイトの「テンプレート」が追加され、「チーム」単位での情報共有ができるようになる。

 ここでいう「チーム」とは、「共通の目的を共有するチーム」という意味だ。チームのメンバー(より正確には管理者権限を持つユーザー)は、目的に応じて適切な「テンプレート」を使ってWebサイトを作成し、他のメンバーとさまざまな情報を共有することができる。

 例えば、1つの文書を作成するという目的を持つチームなら「ドキュメントワークスペース」テンプレート、会議を開いて何らかの意思決定を行いたいグループは「会議ワークスペース」テンプレート、特定のプロジェクト・目的のために文書やスケジュールを共有したいなら「チームWebサイト」テンプレート、といった具合だ。

 これらのテンプレートを使って作成したWebサイトでは、例えば次のような機能を利用することができる。

  • ドキュメントの共有
  • お知らせやイベントの追加・表示
  • 連絡先やToDoリストの追加・表示
  • ディスカッション(いわゆる電子会議室)
  • アンケート機能(ネットワークユーザーからアンケートをとる機能)

 さらに、WordやExcelなどのOffice 2003 Editionsアプリケーションとの連携もできるし、「Webパーツ」と呼ばれる部品を使ったカスタマイズもできる。

 「無料」ということで、それほど期待しないで使い始めると、よい意味で裏切られることになる。WSSは非常に多機能で奥が深いのだ。使い始めた当初は、「WSSで十分ではないか」とさえ思うかもしれない。実際、SOHOレベルや規模の小さい企業なら、WSSで十分である場合もあるだろう。

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画面3■WSSのチームWebサイトにお知らせを追加した。このほか、イベントや連絡先、ディスカッションなど、さまざまな情報共有機能を利用できる。


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画面4■Office 2003 Editionsアプリケーションの作業ウィンドウで共有ワークスペースを作成し、情報を共有することもできる。画面はPowerPoint 2003で共有ワークスペースを作成しているところだ。


より広範囲な情報共有を支援するSPS

 このように、強力な情報共有ツールであるWSSだが、その目的はあくまでチームでの作業を支援することにある。そのため、情報共有の範囲はチーム内にとどまる。少人数のグループや小規模のプロジェクト単位での情報共有には効果的だが、複数のチーム間の情報を連携・統合する機能は提供されていない。

 企業の規模そのものが小さければ、それでも問題は起きないだろう。しかし、規模が大きくなるにつれて問題は顕在化する。企業内のWSSサイトが増えていっても、それらは互いに連携する仕組みがないため孤立化せざるをえない。「他のチーム内の情報を検索したい」「あのチームのノウハウがほしい」「このプロジェクトの資料を参考にしたい」……と思っても、こうした要求に応えられる仕組みがないのだ。

 そこでSPSが登場することになる。SPSは、複数のWSSのサイトを束ね、連携させる仕掛けを提供することで、より広範囲な情報共有を支援する。SPSを導入することによって、組織全体で情報を資産として活用できるようになるのだ。

 例えば、SPSのポータルトップページからは、組織内の人に関する情報や、さまざまなコンテンツソースに格納された文書情報にアクセスできる。また、SPSから企業ポータルの一部分として個別のWSSチームWebサイトを作成し、チーム内での情報共有を行うと同時にそこに格納された情報を広くチームの境界を越えて共有することも可能となる。

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画面5■WSSのチームWebサイトを作成するページ。「タイトル」や「説明」、「Url」などを指定するだけでWSSのチームWebサイトを作成できる。


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画面6■チームWebサイトを作成するときは、テンプレートを利用できる。チームの目的に合ったテンプレートを選択できる。


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[井上健語(ジャムハウス),ITmedia]

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