特集
2004/01/19 12:00:00 更新
第二回
SharePoint Portal Server 2003の全体像を探る (2/2)
SPSが提供する主なEIP機能
WSSの情報共有機能は、SPSが提供する重要なEIP機能の1つだ。しかし、それがSPSのすべてではない。SPSでは、この他にもさまざまなEIP機能が提供されている。ここで、その代表的な機能を解説しておこう。
1. さまざまな情報にアクセスできるポータルページ
SPSをインストールすると、すぐに利用可能なポータルサイトが用意される。ここには、「ニュース」「サイトディレクトリ」「情報のエリア分け」「個人用サイト」「対象ユーザーの絞り込み」など、前バージョンのSPS 2001にはなかった新機能が追加されている。
2.強力な統合検索
自然言語によるフルテキスト検索、プロパティ検索、「人」に関する情報を探し出すKnow-Who検索など、強力な検索機能も利用できる。ファイル、Web サイト、Microsoft Exchange Serverのパブリックフォルダ、Lotus Notes、WSSのチームWebサイト、データベースに含まれる情報も検索可能だ。
3 最適な情報へのアクセスを容易にするパーソナライズ
ポータル上で情報を一律で配信してしまうと、特定の個人やチームには関係のない情報も表示されてしまう。自分に無関係な情報が含まれているポータルは、徐々に利用されなくなるだろう。これを避けるには、個人、チーム、部署、組織全体と、各レベルに応じて配信する情報を柔軟に変化させる必要がある。こうしたきめ細かな情報配信を実現するのが「パーソナライズ機能」である。
さらに、人事情報や経営上の重要な分析データを特定のユーザーにだけ表示できるようにするなど、情報へのアクセス制限も用意されている。また、個々のユーザーが自由にカスタマイズして利用できる「個人用サイト」も提供され、組織で共有する情報と個人に最適化された情報を使い分けることも可能だ。
4. 2つのビューを持つ個人用サイト
前述した「個人用サイト」は、ユーザーが自由にカスタマイズして利用できる自分専用のサイトである。さらに、個人用サイトには「プライベートビュー」と「パブリックビュー」の2つのビューが用意されている。プライベートビューは、作業中のドキュメントなどを登録しておける自分だけが見られるページ、「パブリックビュー」はSPSの他のユーザーに公開されるページだ。自分のプロフィールを登録し、他のユーザーから検索できるように公開することも可能だ。
5. Webパーツによる柔軟なカスタマイズ
WSSのチームWebサイトと同様に、Webパーツによるカスタマイズができる。各メンバーがWebパーツを使って自分の個人用サイトを使いやすくカスタマイズすることもできるし、管理者がポータルのトップページにWebパーツをドラッグ&ドロップで追加することもできる。もちろん、ページのタイトルやロゴ画像、デザインをカスタマイズすることも可能だ。
6. 基幹業務アプリケーションとポータルの統合
SPSは、基幹業務アプリケーションとの統合が実現できる。「シングルサインオン(SSO)」によりログオン処理をバックエンドで行うため、エンドユーザーはユーザーIDやパスワードを入力することなく業務アプリケーションから必要な情報を取得し、ポータル上に表示することができる。さらにMicrosoft BizTalk Serverとの連携により、ポータルと業務プロセスの統合も可能となる。
7. Active Directoryとの統合による組織情報の活用
SPSは、Active Directoryで管理しているユーザーアカウントのプロパティ情報をユーザーの設定用にインポートできる。さらに、インポートしたプロファイルデータベースのデータを検索できるため、Active Directoryで管理されている「人」の情報も利用可能だ(なお、SPSはActive Directoryだけでなく、NT4.0のドメインにも対応している)。
8. 大規模システム構築を可能とする分散構成
企業やビジネスが成長し、ポータル利用者が増加すると、システムが十分なパフォーマンスを発揮できなくなる可能性がある。一方、パフォーマンスを優先してポータルを部署や部門ごとに分散させると、組織全体で統一されたポータルを提供することが難しくなる。SPSは、この問題を「サーバファーム」という仕組みで解決する。サーバファームは、Webサーバやインデックスサーバ、ドキュメント管理サーバなどのSPSのシステムを複数のサーバに分散させる仕組みのことだ。サーバファームによって、高いパフォーマンスを維持したまま、企業の成長に合わせて柔軟でスケーラブルなシステムを構築できる。
SPSを支えるテクノロジー
最後に、SPSをテクノロジーの側面から解説しておこう(図1)。
まず、Windows Server 2003が土台となり、その上にデータストレージを司るSQL Server 2000とアプリケーションエンジンとなるASP.NETが位置する。その上で働くのがWSSだ。WSSが提供する機能をざっくりまとめると次の3つになる。
- 情報共有
- Webパーツ
- Office連携
「情報共有」は、ファイル共有や作業タスク、ディスカッションなどの情報共有機能をチームWebサイトという形で提供する。「Webパーツ」はページの柔軟なカスタマイズ環境を提供する。「Office連携」は、WordやExcelなどのOfficeアプリをクライアントとして文書の作成とその共同作業を支援する機能を提供する。
ここまでがWSSの世界だ。SPSを導入すると、ここに次のような機能が追加されることになる。
- 統合検索
- 情報の統合と分類
- 個人用サイト
- パーソナライズ
- シングルサインオンによるアプリケーション統合
- 管理機能
そして、これらの仕組み全体が、冒頭に述べた「エンタープライズポータル構築基盤」、つまり、「個人、チーム、そして組織全体の生産性を向上する仕組み」として機能するわけである。
SPS評価版の情報
現時点でのダウンロードファイルの情報は次のとおりだ。
ファイル名:SPS2003.exe
ダウンロードサイズ:303310KB
公開された日付:2003/10/01
バージョン:2.0
第一回でも述べたが、ポータル構築のソリューションは導入に慎重を期さなければならない。したがって、導入を検討している場合はもちろん、導入前の調査段階であっても、評価版を試用することは十分意味があると考える。
上記サイトからダウンロードできるファイルには、WSSとSQL Server 2000の簡易版であるMSDE 2000(SQL Server 2000 Desktop Engine)も含まれているので、Windows Server 2003さえ動作していれば、すぐにインストールして利用できる。
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[井上健語(ジャムハウス),ITmedia]
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