インタビュー
2004/01/23 19:48:00 更新


「ストレージ市場は変曲点にある」、MS Windows Server部門フィリップスGM

マイクロソフトは、Windows Storage Server 2003によりネットワークストレージ分野で攻勢を仕掛ける。米Microsoft Windows Server部門GMのフィリップス氏は、ストレージ市場は現在インフレクションポイントにあると話す。

 ネットワークストレージ分野で攻勢を仕掛ける。マイクロソフトは、Windows Storage Server 2003におけるパートナー協業を拡充し、販売体制を強化する。NASにおけるWindowsのシェアの上昇を追い風にして、使いやすさと管理機能にフォーカスしたWindows Storage Server 2003搭載製品への移行を加速させたい考えだ。

 発表にあわせて、来日した米Microsoft Windows Server部門ゼネラルマネジャー(GM)のクリス・フィリップス氏は、ストレージ市場は現在「インフレクションポイント」(変曲点)にあると話す。Microsoftがストレージ市場をどう見ているのか、聞いた。

ジェフ・フィリップス氏

フィリップス氏は、Windows Server部門のGMとして、戦略や財政プラン、新規ビジネスチャンスの評価、パートナーリレーション戦略をマネジメントする


ITmedia Microsoftでは、ストレージ分野への取り組みをどのように位置付けているのでしょうか?

 ストレージにおいてマイクロソフトは非常にユニークな立場にいます。ディスクメーカーではなく、伝統的なストレージメーカーではないからです。それでいながら、ストレージ業界全体といい関係を築いていかなければならない立場にいます。それはつまり、マイクロソフトのストレージへの投資は、社内のほとんどの事業部門に渡るということです。例えば、SQLの事業部門ではSQL Server、WinFSも含めストレージへの最適化に取り組んでいますし、コアチームにしても、ストレージ業界と物理的にいい関係を作っておく必要があります。ファイルサーバ部門とってもそれは同じことです。

 当社の歴史的にみれば、すべての分野をマイクロソフト1社ではカバーできないということで、ストレージに重きを置いた活動はしてきていませんでした。そういう意味で、ストレージ産業に依存し、それを活用してきたわけです。もちろん、ストレージを無視してきたというわけではありません。

 しかし、特にここ数年間、マイクロソフトにもっとストレージに関わってほしいという顧客からの声が出てきました。ストレージの利用、管理、可用性、パフォーマンスを改善していくために、マイクロソフトにより深い関与を求めるようになってきたのです。この顧客からの要望に応えるために、私たちは過去数年間投資を増やしてきました。つまり、今までと同じようにストレージ産業に大きく依存していくということはできなくなったのです。

ITmedia それはパートナーに頼らず、独自でストレージに関する技術を開発していくということですか?

 パートナーから離れていくということではありません。私どもが投資していくのは、プラットフォームとインフラストラクチャの部分です。この上にパートナー各社がより良い機能を提供していただき、ストレージソリューションを構築していくということです。顧客がストレージ分野において、自分たちですべてのプロビジョニング作業をしなくてもよいように、シンプルなソリューションとして提供していきます。

ITmedia マイクロソフトでは、現在のストレージ市場というものをどのように見ているのでしょうか?

 現在は、市場が大きく変わる大変興味深いインフレクションポイント(変曲点)にいると思います。市場を見ると、サーバコンピューティングの価格はどんどん下がってきているし、ディスク価格は下がっています。反対に、容量で見ればムーアの法則以上に伸びています。さらにストレージに新しいベンチャーキャピタルも入ってきており、競争も激しくなってきています。こういった環境の中では、価格はますます下がってくるし、マージンも下がる状況になります。現在は市場が大きく変わってくるポイントにいるのです。

 顧客でのストレージ利用容量は上がり、しかもオンラインで使いたいというニーズが高まっています。そうなれば格段に管理は難しくなります。こういった複雑で管理の難しい環境をシンプルで人に優しいものにしていかなければなりません。マイクロソフトではそれを解決するのはソフトウェアだと考えています。こういう考え方に基づいて、マイクロソフトは自社でも技術を開発しますし、パートナーとの協力で構築していきたいと考えています。

ITmedia Windows Storage Server 2003対応NAS発売以前のIDC調査でしたが、その段階でもWindowsベースのNASのシェアが大きく伸びたことがレポートされました。この結果をどう分析していますか?

 確かにNASにおいてWindowsベースの台数シェアは伸びています。その調査もStorage Server 2003以前のものでした。このシェア上昇の理由は、顧客が求めていたのはノンWindowsでなく、Windowsだったということだと考えます。エンドユーザーは、使いやすさ、統合、UIの一貫性などを理由にWindowsが欲しかったのです。その調査の段階で、市場にはWindows以外のNAS製品がたくさん出ていました。しかし、機能としても、使いやすさ、管理性としても一貫性がありませんでした。当社のパートナーの多くは、ノンWindowsのところからWindowsへ移行したわけで、これは顧客の声を反映したものだと言えます。

 もう一つの理由は、市場が成熟していたし、当社のフォーカスもはっきりしていたからでしょう。マイクロソフトはゼロからNASビジネスに参入して2年半にも関わらず、前出の理由によってシェアを獲得しました。台数ベースでのシェアの獲得はこれからも続いていくとみています。

ITmedia そういった意味で、今回Storage Server 2003が新たに備えた管理機能などにつながってきているのだと思いますが、今後ストレージ分野で注力するポイントはどこでしょう。

 私たちの投資はストレージスタック全体に対するものになります。一部ではなく、アプリケーション、データベース、ファイルシステム、それからNASもDASも含めて、スタック全体に対するものになっていきます。顧客からフィードバックやニーズに基づいて、ストレージのインフラについても引き続き投資していきます。また、Storage Server 2003の上では、使いやすさというのが中心的なフォーカスになっています。ストレージ管理にも焦点を当てていきたいと思います。

 これらを提供することで、パートナーが市場に製品を投入するにあたって、あらゆる価格帯の製品を出せるようにしていこうと考えています。

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[聞き手:堀 哲也,ITmedia]

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