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2004/02/20 02:44:00 更新


基幹システム含め3層構造をブレードで実現するIBMのサーバ戦略

日本IBMは、Xeon MP2.8GHzを4個搭載できるブレードサーバ「IBM eServer BladeCenter HS40」の販売を開始した。

 日本IBMは2月18日に、Xeon MP2.8GHzを4個搭載できるブレードサーバ「IBM eServer BladeCenter HS40」(BladeCenter HS40)の販売を同日に開始したと発表した。筐体あたり最大で28個のCPUを稼動できる同製品は、従来はブレードサーバが苦手としていたデータベースやERPなどの基幹系システムの稼動において、高密度で高い処理能力を提供することが特徴。Webサーバ、アプリケーションサーバ、データベースサーバという3層構造のシステムを、すべて1つの筐体内でシンプルに実現することも可能としている。

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新製品のブレードサーバ「HS40」

 同社は、「ブレードサーバが2007年にはサーバ市場全体の20%に達する」と話す。現在はホストコンピュータ、UNIX、IAサーバの合計のうち2%に過ぎない。これまでブレードサーバは、ハードウェアとしてのサーバ機能を提供すればいいWebサーバのようなスケールアウト構成には有効とされていたが、データベースのような各サーバにOSやアプリケーション、データが依存する構成では、メインフレームやUNIXサーバといったスケールアップ型のシステムが選択されてきた。

 「最終的にはブレードサーバですべてのシステムを統合できるようにしたい」(同社)

 その第一段階は、複数のサーバをブレードに統合するいわゆる「サーバ統合」だ。複数のサーバが分散して存在している場合、トランザクションなどが多数のネットワーク機器をまたがって経由するため、データの整合性の確保、パフォーマンス、セキュリティ、もちろんコストの観点から見ても効率はよくない。また、ネットワーク機器を多重化、分散配置すると、可用性やシステム拡張に限界が出てくる。こういった問題を解決する手段として、サーバ統合が有効であることは知られており、IBMはこれをブレードで実現することを提案している。

 次の段階は、「ストレージスイッチの統合」。これにより、SAN(Storage Area Network)Switchもブレードサーバに統合する。

 第3段階は、「レイヤー2Ethernet Switchの統合」となる。これにより、システム構築、運用管理、トラブルシューティングの煩雑さを緩和できるが、個別のネットワーク機器が多数配置されているので、パフォーマンス、セキュリティの課題は残るという。

 第4段階は、レイヤー4〜7のスイッチのブレード統合。第5段階はインターネットアプライアンスサーバの統合。これにより、SSLアプライアンスサーバやキャッシュサーバを含め、すべてブレードサーバに統合した環境が実現する。

 すべて完了した結果、データセンターのネットワークインフラの構築、運用管理、トラブルシューティングが非常にシンプルになり、コストの削減にもつながる。シャーシをまたがった冗長構成、負荷分散機能とセキュリティ機能の統合も実現するとしている。

IA、PowerPCに対応する各ブレード

 同社は、発表されたXeon搭載のIAサーバとしてのHS40、HS20のほかに、64ビットのPowerPCプロセッサベースのブレード「BladeCenter JS20」も3月に提供を予定しており、UNIX、Windows、Linuxなど、さまざまなプラットフォームに対応することができると話す。

 IBMが特にアピールするのは、ブレード自体ではなく、ブレードを格納する筐体「BladeCenter」の性能。PFA(事前障害予知)機能では、CPU、メモリ、HDD、温度など障害の発生場所をLEDランプで表示する。各コンポーネントの稼動状況監視やスイッチの設定、起動時の画面監視、遠隔操作も可能なため、Webブラウザ上で遠隔管理も可能になるとしている。

 また、チップキルメモリでは、4ビットまでのエラーを修正、ECCメモリの150倍の信頼性を実現したという。

ブレード上にディスクなし

 BladeCenterを利用したブレードサーバ環境での特徴的な機能の1つが、「Disk-Free」と呼ばれるコンセプトだ。これは、通常のようにサーバ1台に対してディスクを1台割り当てる構成とは異なり、各ブレードはディスクを搭載していない。

 これは、「何があってもデータだけは守らなくてはならない」という考え方に基づいているという。消耗品であるプロセッサやメモリの障害と一緒に、ディスクの中身、つまりデータを消失してしまうという事態は避けなくてはいけないというわけだ。

 では、ディスクはどこにあるかと言えば、SAN上に置かれる。各ブレードには、「/log」「Swap領域」のみがあり、OSはファイバーチャネル上にインストールされる。

 つまりこの場合、ブレードサーバ自体はOSに依存しない。通常時、各ブレードサーバは、OSをインストールしたSANのディスクをマッピングによってそれぞれ割り当てられる形で稼動している。そのため、障害時には、マッピングを変更するだけで、予備、あるいは並行して稼動していた別のブレードサーバに、Linux、Windows、UNIXといった環境に関わらず、障害の起きたサーバのサービスを引き継がせることが可能になる。マッピングの変更も、ポリシーベースの運用管理によって、予め設定することで自動化できる。

 また、ブレードサーバの課題と言われていた冷却の問題も、巨大なファンを2重化してBladeCenterのバックプレーンに配置することでクリアした。一方のファンが停止すると、もう1台が2倍の回転速度で回り、温度の上昇を防ぐ仕組みとなっている。

 ただ、同社は、まだまだメインフレームがすべてブレードに移行することはないとする。ブレードというよりは、標準技術の限界とも言えるが、例えば、CPUとメモリを連携するフロントサイドバス(FSB)を例にとった場合、オープン製品のプロセッサではFSBはおよそ533MHz程度。しかし、メインフレームなどの独自仕様でCPU周りをチューニングできれば、FSBを2GHzくらいにすることも可能になる。

 また、システムの構成要素が1つのベンダーから提供されるメインフレームでは、OS、TPモニター、DBの境界をまたがったエンド・ツー・エンドのワークロード管理を行うことができる点で優位性を持つ。

 発表されたBladeCenter HS40は、2MB ECC L3キャッシュのメモリを搭載、Windows Server 2003、Windows 2000、RedHat Linux Advanced Server2.1日本語版、SUSE Linux Enterprise Server 8、Turbo Linux Server 8の稼動を確認している。同モデル8839-41Xの税別価格は248万円だが、3月26日オーダー分までの「BladeCenter HS40 スタート・アップ特別割引プログラム」では168万円となる。

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[怒賀新也,ITmedia]

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