特集
2004/02/24 18:10 更新

第五回
なぜSharePoint Portal Server 2003を導入するのか(前編) (2/2)


SPSでできること:異なる業務アプリケーションへの共通の入り口を提供すること

 まず、SPSで解決できる問題点は、複数の業務アプリケーションを統合し、ユーザー(マイクロソフトでは「情報を扱う人」=「インフォメーション ワーカー」と呼んでいる)にとって異なるアプリケーションを意識せずに仕事をこなす環境を提供するという点だ。

 SPSが提供するポータルサイトでは、Webパーツにより部品化されたページ構成により複数の業務アプリケーションを、1つの画面からアクセスすることが可能となる。例えば、販売管理システム上にある販売履歴情報や、店舗からの売り上げ日報に書かれている店長のコメントが、1つの画面上に表示できれば、2つのシステムからの情報を有効に活用し迅速に今月の売り上げ予測を立てることができるようになるだろう。もし、ばらばらに存在するデータをそれぞれ個別に検索し、表示させなければならないとすると、余分な時間がかかる。さらに、社内の在庫管理システムからの在庫状況と、EDIなどで接続された仕入先の納期情報などをまとめて表示できれば、売り上げ予測をもとに今月の発注量を迅速に決定するという一連の流れを効率的に処理することも可能となるだろう。社内のシステムが1つにまとまっていると、新入社員や転属してきた社員が、新たなシステムを習得する際に必要となる時間を短縮できるというメリットもある。

 このさまざまな異なるシステムを取りまとめる仕組みをEAI(Enterprise Application Integration)と呼ぶが、SPSではシングルサインオンにより、これを実現する。さらに、BizTalk Serverが仲介して接続することになり、SPSのポータルでは異システム上の情報を抽出して共通の画面に表示するだけでなく、異なる業務アプリケーションのビジネスロジックと連携することも可能となる。つまり、SPSではWebパーツにより複数の情報を効果的に共通の画面に配置し、シングルサインオンにより情報の格納場所をエンドユーザーが意識せずに活用するということを実現しているのだ。

SPS05_02SalesReport.gif

画面1■SPSによってもたらされる効果の1つが、さまざまな基幹業務などのアプリケーションを1つのブラウザの画面に統合できることだ。システムの違いを意識することなく、必要な機能だけをまとめることで、作業効率がよくなる。


SPS05_01Login.gif
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画面2■従来であれば、画面1の営業日報システムには別ブラウザを立ち上げ、IDとパスワードを指定してログインする必要があった。

 もちろん、EAIを行うにはカスタマイズが必要となるが、SPSではFrontPage 2003やVisual Studio .NETなどを使った効率のよい開発が可能である。また、ユーザー自身による柔軟なカスタマイズも特筆に価する。(カスタマイズについては「なぜSharePoint Portal Server 2003を導入するのか(後編)」で説明する。)

SPSのシングルサインオンのしくみ

 SPSではシングルサインオン機能は、アカウントマッピングにより実現される。SPSでは外部アプリケーションへのログイン情報をポータル内のシングルサインオンデータベースに格納する。このデータベースからID/パスワードを取得し接続先アプリケーションにバックエンドで受け渡すことで、ユーザーは個別にログイン処理を行う必要がなくなるしくみだ(図1)。

SPS05_Zu01.gif

図1■SPSのシングルサインオンを利用すれば、1つのアカウントを使い、ポータルにアクセスするだけで、社内のすべてのシステムにシームレスにアクセス可能となる。


SPSを利用したEIPがもたらすもの

 SPSによってEIPを構築することでもたらされる利点は、大きく分けると2つある。1つはエンドユーザーにとっての利点、もう1つは、情報システム部門にとっての利点だ。

 前述したように、企業内システムの統合やシングルサインオンがエンドユーザーにもたらす利便性は言うまでもない。それに加えSPSならではの利点として、普段使い慣れたツールを利用できるという点が重要だろう。エンドユーザーは、日々の業務をこなすため、例えばMicrosoft ExcelなりWordなりを使用して作業しているだろう。SPSによって構築されたEIPサイトにアクセスする際には、IEだけでなくExcelやWordといった通常の業務で使用しているアプリケーションが利用できるようになっている。特にOffice 2003 Editionsとの親和性は高く、シームレスに連携できるようになっている。EIP導入によって、新たなアプリケーションの使い方を習得しなければならないとすると、エンドユーザーにとっては負担となる。これが、いままで使い慣れているアプリケーションからシームレスに利用可能であれば、抵抗なくEIPを中心とした情報共有環境に移行できるはずである。

 また、情報システム部門にとっての利点としては、インストールするだけで、即使用可能なEIPサイトを設置できるという点がある。一般にEIPの構築となると、既存情報の分析に始まりポータルの開発が必要になる。しかし、SPSの場合はインストール後すぐに利用できるポータルサイトが提供されるため、ブラウザから既存情報をポータルに追加するだけで情報共有ポータルとしての運用が開始できるようになっている。また、SPSの優れた点は、運用しながらの柔軟なカスタマイズが可能という点だ。従来どおりあらかじめ設計した上で開発、設置、運用というプロセスを取ることも可能だ。だが一旦運用を始めると、念入りに設計したポータルであっても、現場からの変更要求や会社を取り巻く状況の変化に対応するため、設計の変更を余儀なくされるのが普通だ。それなら、とりあえず運用を始めてしまって、現場の要求や状況の変化に柔軟に応えいくというやり方のほうが、スマートかつ合理的ではないだろうか。

 システム管理者にとってさらにうれしいことは、SPSではポータルサイトのカスタマイズを、エンドユーザー自ら行うことが可能という点だ。SPSの非常に優れたカスタマイズ機能は、ユーザー自らの手でサイトの変更・再構築を可能にしている。このおかげで、ユーザーからの要求をシステム管理者がいちいち処理する必要がなくなり、リアルタイム性や作業効率の面で威力を発揮する。ひいては、TCOの削減にもつながることは言うまでもない。

 次回は、SPSとOffice Systemとの親和性や、カスタマイズの容易さ、そして、SPSのもたらす情報検索の革命について、個人の扱う情報の共有という点から詳しく見てみることにする。

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