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2004/02/24 22:35:00 更新


SSL-VPNマネージドサービスにチャンスを見出すAventailと三井物産

米Aventailは2月23日、三井物産と戦略的提携を結んだ。SSL-VPNアプライアンス本体の販売だけでなく、SSL-VPNのマネージドサービスの展開を視野に入れての提携だ。

 SSL-VPNアプライアンス「Aventail EX-1500」を開発、提供している米Aventailは2月23日、三井物産と戦略的提携を結んだ(別記事参照)。

 これにともない三井物産は、EX-1500本体を販売するだけでなく、SSL-VPNのマネージドサービスの販売も展開する。といっても同社が直接顧客にサービスを提供するのではない。SSL-VPNサービスの展開を検討しているサービスプロバイダーやキャリア向けに、EX-1500を用いたマネージドサービスシステムの設計、運用の支援やコンサルティングを提供する。

 Aventailは既に他社との間で、アプライアンス製品の販売代理店契約を結んでいる。これを踏まえると、今回の三井物産との提携は、SSL-VPNアプライアンスの拡大だけでなく、SSL-VPNマネージドサービスの展開が大きな目的となっているのは明らかだ。

ティン氏と野村氏

SSL-VPNのマネージドサービス展開に向けて提携を結んだAventailのティン氏と三井物産の野村氏

 そもそもSSL-VPNは、IPSec-VPNに比べ、クライアントのサポートが不要であり、運用コストを低く抑えることができる点がメリットとして謳われている。そう考えれば、必ずしもマネージドサービスの形態で導入しなくてもよさそうなものだ。しかし、「サーバ側機器のコストは変わらない。しかも、SSL-VPNの上に基幹アプリケーションを載せようとすれば、99.999%のアベイラビリティが求められるが、一ユーザーにとってその実現は困難だ」(三井物産ITサービス事業部セキュリティビジネス室、第一SEグループグループマネージャの宮崎輝樹氏)。

 こういったメリットを提供できることから、Aventailは以前より、米国およびヨーロッパでSSL-VPNマネージドサービス「Aventail.net」を提供してきた。顧客の拠点にCPE(顧客側端末)としてSSL-VPN機器を配置し、AventailのNOC(ネットワークオペレーションセンター)がネットワーク越しにその監視、運用に当たるというモデルだ。既に米IBM、AT&TやSprintといった大手キャリアがこのサービスを採用しているという。

 三井物産が、数あるSSL-VPNベンダーの中からAventailを選んだ理由も、そこにあったという。「SSL-VPN製品を提供しているベンダーならばいくつかある。しかし自らマネージドサービスを展開し、運用ノウハウを蓄積している企業は他にはない」(三井物産ITサービス事業部セキュリティビジネス室長、野村一洋氏)。

 三井物産では、単に米国のサービスを「直訳」して持ち込むのではなく、顧客のニーズやプロバイダー側のビジネスモデルに応じたサービスの実現を、ノウハウ移転やトレーニングを通じて支援していく方針だ。場合によっては、データセンター側に機器を配置するようなビジネスも考えられるし、三井物産が提供している他のセキュリティサービスとの組み合わせも検討していく。

 ただ、そうやって提供されるマネージドサービスの具体的なサービス料金となると、「サービス内容やSLA、ユーザー数によって変わるため、今の時点では何ともいえない」(同社)という。なお米国でのAventail.netの料金は、サービス内容にもよるが1ユーザー当たり月額5〜35ドルという。

 ちなみに米Aventailのインテグレーションサービス担当ディレクター、リチャード・ティン氏によると、今のところAventailの収入のうち、アプライアンス製品から得られるのは35%で、残る65%はサービスからだという。「今年はこの比率を50%、50%に持っていきたい」(同氏)。ただ、サービス事業の重要性に変わりはなく、「この2つは補完的な関係にある」という。

継続してSSL-VPNに注力

 アプライアンス製品に目を移せば、SSL-VPNの拡大に期待をかけて多くの企業が参入している。今最も競争の激しい市場の1つといえそうだ。

 「SSL-VPNの場合、ユーザーはさまざまなところからアクセスしてくるため、エンドポイントのコントロールが非常に重要になる。EX-1500では、場所に応じてセキュリティ機能を追加したり、柔軟なアクセスコントロールが可能だ」(ティン氏)。

 インターネットカフェなどでの利用を想定し、重要な情報が第三者に盗み見られることのないよう、セッション終了後にキャッシュ、履歴、Cookieといった重要なデータを消去する仕組みもサポート。さらに、パートナー各社と組んで、ウイルス対策、IDS、パーソナルファイアウォールといったセキュリティ機能も統合している。

 Aventailでは4月に、SSL-VPNアプライアンスが搭載するソフト「Aventail ASAP Platform」の最新バージョンをリリースする予定だ。また、各地拠点に分散して配置されている複数のEX-1500に対し、集中管理を行えるようにする管理コンソールの開発も計画しているという。

 SSL-VPNは競争が激しいだけでなく、将来性を見据えての買収合戦が繰り広げられている市場でもある。「確かにCisco SystemsやNortelといったネットワーク機器大手も参入しているが、それらの機器と比べても、EX-1500の機能ははるかに豊富だ」とティン氏は言う。「何より、われわれは継続してSSL-VPNに注力している。買収された他社が、SSL-VPNだけに力を入れるのが困難になっているのとは対照的だ」(同氏)。

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[高橋睦美,ITmedia]

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