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2004/03/19 02:56 更新
IBMがLinux市場で強いのは、やはり人材あってこそ?
レッドハットが3月17日に開催した「Red Hat World Tour 2004 Tokyo」では、日本IBMもセッションを行いっている。同社のLinuxへの取り組みをまとめてみよう。
レッドハットが3月17日に開催した「Red Hat World Tour 2004 Tokyo」では、日本IBMもセッションを行い、同社のLinuxへの取り組みが紹介された。日本アイ・ビー・エム、Linux事業部事業企画担当の上條利彦氏および、xSeries&IntelliStation事業部事業部長の岩井淳文氏の話からポイントをまとめてみた。
もはやLinuxでだめな領域はない?
まず、国内のLinuxの市場動向から紹介しておこう。水橋氏の資料によると、現在、国内でのLinuxは約23%の成長率で、2004年のOSシェアは9.8%と予測されている。特にUNIXからLinuxへの移行が進み、2004年から2005年にかけて両者のシェアは逆転すると多くの調査会社が予測しているという。
改めて書くまでもないが、昨今、Linuxが使われている事例は枚挙にいとまがない。
エッジ部分でのLinuxの採用実績は言うに及ばず、有名なところでは、コーエーのオンラインゲーム「信長の野望Online」のシステムが、後述するブレードサーバ「IBM eServer BladeCenter」とLinuxで構築されている。このほかにも、セガのオンラインゲーム「DERBY OWNERS CLUB ONLINE」や目黒区役所の庁内ネットワーク(イントラネット)、ローソンにあるLoppi端末のバックエンドであるMMS(マルチメディアサーバー)などもLinuxのシステムである。
「こんなところでもLinuxが使われている、という話しは意外に多い。単なるムーブメントではなく、実際に活用の段階にあると思う」(水橋氏)
こうした流れは、今、保守的ともいえる政・官・自治体にまで波及している。例えば、都道府県レベルであれば、愛知県の公共避難システムにMySQL+Perlが利用されているほか、沖縄県ではオープンソース活用推進協議会を設立し、県をあげて精力的に活動している。
市区町村レベルでも、伊達市がオープンソース採用条例を図っており、市全職員がOpenOffice.orgを使用しているなど、こうした例は各地に見ることができる。
また、総務省などから発行されている電子自治体システムに関する各種基本仕様から技術要素を抽出してみると、必須となる技術要素の部分については、Linuxもそれを満たしており、導入への障壁が取り除かれた格好だ。
「意外と、政・官・自治体こそが、今、オープンソースソフトウェアを渇望しているのかもしれない。さまざまな面から、Linuxでのシステム構築がもはや無視できない状況にあるといえる」(水橋氏)
この傾向は、開発者の数にも見ることができる。エヴァンス・データ・コーポレーション(Evans Data Corporation)が行った、米国におけるOS別のアプリケーション開発傾向では、2003年夏の時点で、Linuxをターゲットにしたアプリケーション開発に携わるエンジニアの割合は全体の40%に達している。これは、Windows 2000の30%を上回るもので、今後、Windowsをプラットフォームとしていた開発者がLinuxに流れてくることが予想され、この傾向は米国外にも浸透していくと水橋氏は話す。
IBMが行ったLinuxへの取り組み
IBMがこれまでに行った主なLinuxへの取り組みを年表にすると次のようになる。
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また、IBMは人的な面でもLinux、オープンソースコミュニティに深く関わっている。同社にはLinux Technology Center(LTC)と呼ばれる組織があり、世界中の20を超える地域に、600人以上のメンバーを擁し、顧客やパートナーがLinuxを使うことを支援している。
この組織に与えられているミッションは、Linuxの可能性を広げ、Linuxをよりよくすることだ。IBMのためではない、Linuxのために働いているのである。もちろん、片手間にやっているわけではない。
そのほか、IBM箱崎事業所の7階には、Linuxコンピテンシーセンター(Linux CoC)が位置する。これは国内最大級のLinux検証施設で、IBMサーバの全シリーズやストレージ機器、他社製のUNIXサーバなどが揃っている。
ここでは、Linux上での主要IBMミドルウェアの組み合わせ稼動の検証や、主要ISVソリューションの評価・検証、新規ISVソリューションのポーティング支援などのほか、他社製プラットフォーム上で動作するシステムをLinuxに移行させるための技術相談、検証などが行われている。
ちなみに、これまでIBMがLinuxへの取り組みに対して行った投資額は13億ドルにもなる。また、Linux関連技術者数は約8000名だ。全サーバプラットフォームがLinuxに対応しているほか、Linux上で動作するISVパッケージも6500本以上が生み出され、おおよそのソリューションをLinux上でも展開可能にしている。
ISVパッケージが充実し始めているというのは重要なポイントだ。岩井氏は、「これまで、Solarisが多く選択されていたのは、Solaris上でしか提供されていないソリューションが多く存在していたため。しかし、Linux上でもそれが提供されれば、こうした構図は自然と変わってくる」と話す。
これは、某半導体メーカーの導入事例を見ると、理解しやすい。このメーカーでは、半導体の設計シュミレーションを「Sun Enterprise 5500」8ノードで行っていた。しかし、設計ツール(Cadence/Synopsisなど)のLinux版が登場したことで、IBMのxSeries(x335、32ノード)へリプレースしている。もちろん、xSeries+Linuxの組み合わせが採用されたのは、CPUインテンシブな計算を行うにあたって、最適のCPUを選択したことと、低価格なCPUを多く導入することで、計算性能の向上を見込んでのことであるが、Linux版のISVパッケージが出てきたことが、後押しをしているといえる。
こうした取り組みにより、IBMはAIXやOS/400といった自社のOSと同じレベルでLinuxをサポートすることを可能としているのである。これが顧客の信頼へとつながっている。
IBMは、調査会社に依頼し、Linuxサービスプロバイダに対する意識調査を行っている。これによると、「この先1年間で利用したいLinuxサービスプロバイダ」、「Linuxを使う際に一番最初に思い浮かべるLinuxサービスプロバイダ」の両方でIBMが1位となっている。もちろん、IBMの名前が前面に出るような作為的な調査結果ではない。2位のRed Hat、3位のHPを退けてのこの結果は、同社のこれまでの実績が結実したものであろう。なお、IBMのLinux関連の顧客数は約6300社にも達している。
ブレードがLinux戦略の一つの鍵に
先にも述べたが、IBMでは全サーバプラットフォームがLinuxに対応している。このうち、ブレードサーバをコアとしたソリューションが今後のトレンドになるかもしれない。
IBMのブレードサーバは「IBM eServer BladeCenter」と呼ばれる。正確には、「BladeCenter JS20/HS20/HS40」といった各ブレードを「BladeCenter」と呼ばれる7Uのシャーシに複数枚入れたものが「IBM eServer BladeCenter」である。例えば、Xeonプロセッサを最大2個搭載可能なHS20であれば、BladeCenterに14枚差し込める。こうしたブレードサーバは各社から出ているが、BladeCenterは出荷台数、売り上げともに1位であるという。
岩井氏によると、IBMが考えるブレードサーバのコンセプトは、「周辺機器を取り込んだサーバ」であるという。つまり、高密度であることだけが売りなのではなく、L2スイッチやSANの機能といったものもブレード内に詰め込むことで、無駄な配線を減らし、システムをすっきりとしたものにすることが狙いなのだという。
もちろん、ブレードサーバはシステムの見た目だけをすっきりとさせるだけではない。同社のシステム管理ソフト「IBM Director」とBladeCenter専用のクラスタソフトを組み合わせることで、自律的なサーバ運用管理も行える。
例えば、複数枚のブレードサーバのうち、スタンバイ状態のブレードを用意しておけば、万が一障害が発生した場合、障害を検知したブレード上のアプリケーションは別のブレード上に自動的に一時退避し、障害の起きたブレードはシステムから切り離され、代わりにスタンバイ状態であったブレードが起動して業務を引き継ぐことができる。システムから切り離されたブレードは修復後、スタンバイ状態のブレードとすればよい。
なお、同社は先日、ビジネスパートナー45社を対象にした支援制度「BladeCenter Club」の発足を発表している。これは、ブレードサーバの販売力強化を目指すもので、BladeCenter関連情報の定期的提供や、システム構成構築支援などのテクニカルサポート、共同プロモーションなどを行うという。
Linuxとブレードサーバの組み合わせは、特にUNIXからの移行では大きなコストメリットを見出せると考えられる。この組み合わせの導入事例は今後も多く目にすることになりそうだ。
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[西尾泰三,ITmedia]
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