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2004/03/18 00:17 更新


「Red Hat World Tour 2004 Tokyo」開催、エンタープライズLinux戦略を説明

レッドハットは3月17日、日本IBMの協賛を受け、「Red Hat World Tour 2004 Tokyo」を都内にて開催した。Red HatのエンタープライズLinux戦略が紹介されている。

 レッドハットは3月17日、日本IBMの協賛を受け、「Red Hat World Tour 2004 Tokyo」を都内にて開催した。「World Tour 2004」は、Red Hatのグローバルなイベントとして、同じメンバーが世界各地を回り、セミナーを開催するもの。

 セッションのうち、Red Hatのシニア・コミュニティリレーションシップ・マネージャ、ジェレミー・ホーガン氏をスピーカーとする「Red Hatのエンタープライズ戦略」の内容を紹介する。

ホーガン氏

「顧客はオープンソースのソリューションを渇望している」とホーガン氏

Linuxへの移行を促す要因は?

 同氏の説明を要約すると、現在、Linuxが注目されている理由は、コストメリットと柔軟性に起因するものであるという。x86アーキテクチャとLinuxの組み合わせにより、UNIXはもちろん、Windowsと比較しても高いコストメリットを得ることができる。また、特定のベンダーに依存しないことと、オープンスタンダードであることが、さまざまな選択肢の検討を可能にしている。

「オープンソースは現在の主流だ」(ホーガン氏)

 では、Linuxはエンタープライズ用途として十分に足るものになっているといえるだろうか? ホーガン氏の答えは「Yes」である。同氏は主に2つの点からこの論を支える。パフォーマンスと導入実績だ。

 例えば、Javaのアプリケーションサーバで比較すると、Red Hat Enterprise Linux上で動作するそれは、Windowsに比べ37%高速で、60%安いものになるという。また、Solarisと比べた場合は、800%高速で、コストは12.5%になるとしている。

 DBに関しても、Windowsに比べ12%高速で、20%安く、また、UNIXと比べても4%高速で、47%安くなる。こうしたパフォーマンス面から見たLinuxの優位性は数多く挙げることができるとしている。

 また、現在、いわゆる大企業の17%がLinuxを何らかの形で採用しており、また、72%が2年以内に採用すると答えている。なお、Red Hatの大口顧客としては、AOL、Morgan Stanley、Amazon、Verisignなどが挙げられるほか、2004年第2四半期におけるRed Hat Enterprise Linuxの出荷本数は26000本で、Linux市場におけるRed Hatのシェアは米国では80%、米国外で50%超となっている。

 こうした現状を挙げ、Linuxがエンタープライズ用途に足るものであることを逆説的に証明するとともに、自社の実績を紹介した。

Red Hatの製品ラインとサポートを再確認

 現在、Red Hatから提供される「Enterprise Linux」は次の3種類だ。ハイエンドサーバ(DB、CRM、ERP用途など)向けの「Red Hat Enterprise Linux AS」、中・小規模サーバ(DNSやWeb、FTPなど)向けの「Red Hat Enterprise Linux ES」、デスクトップ・クライアント向けの「Red Hat Enterprise Linux WS」である。

 これらのサポートについても、エンタープライズ用途を想定したものになっている。Red Hat Enterprise Linuxは、製品の発表から5年というサポート期間が採られているが、このサポート期間は3つのフェーズで構成される。

 製品発表から2年半は、対応ハードのアップデートやバグフィックス、セキュリティアップデートなど、全ての部分をカバーする。2年半経過時点から半年間は、ハードのアップデートがはずされ、3年目以降は、セキュリティと重大なバグフィックスのみが提供される。また、これらの期間は最大で2年間、計7年のサポートを受けることも可能であるとしている。

 もうひとつ、「Red Hat Network」(RHN)もエンタープライズ用途に欠かせない機能である。RHNは、Red Hat Enterprise Linuxのシステムおよびシステム上のネットワークを管理するために作られたインターネットソリューションを指す。セキュリティ警告、バグフィックスの警告、システム増強に関する警告は、すべてRed Hatから直接ダウンロードできる。

 また、RHNでは、複数のPCをグループ化して一括管理するなどの機能も備えている。

「現在は、アップデート、マネージメント、プロビジョニングの機能をRHNで提供しているが、まもなく、モニタリングの機能も提供するつもりだ。クライアント側には特別なソフトは必要なく、管理サーバのみにソフトを入れればすぐに利用可能になる」(ホーガン氏)

すべての道はFedoraから

 Red Hatは、2003年11月3日、それまでのLinux製品ライン「Red Hat Linux」を終了し、顧客には有料のRed Hat Enterprise Linuxに移行するよう求めていくと発表している。「Red Hat Linux」の最後のバージョンとなる「Red Hat Linux 9」のサポートも2004年4月30日に終了する予定だ。

 「Red Hat Linux」として提供されていた製品ラインは、「Fedora Project」というプロジェクトが引き継ぎ、最新のテクノロジーを取り込みながら「Fedora Core」を比較的短いスパンでリリースしていく。

 注意したいのは、Fedoraとはプロジェクトであって、Red Hatの製品ではない。Red Hatも資金的なサポートは行っているが、基本的にはコミュニティ主導のプロジェクトである。そのため、Fedoraに対しては、Red Hatはセキュリティホールやバグを修正するためのパッチを提供しない。

 3階層をイメージしてもらうと、Red Hatの戦略がよく見えてくる。一番下が「コミュニティ」、2番目が「Fedoraプロジェクト」、そして3番目が「Red Hat Enterprise Linux」だ。

 コミュニティからの要望や新技術をFedoraプロジェクトが「Fedora Core」として提供し、そこからエンタープライズ用途に必要な機能や品質をISV、IHVとともに十分に検証していくことで「Red Hat Enterprise Linux」が生み出されている格好だ。

 Red Hatは「Red Hat Enterprise Linux」、「Red Hat Network」といった製品だけでなく、培ってきたパートナーシップとグローバルレベルのサービスを添えた戦略で、顧客にオープンソースソリューションの醍醐味を味わってもらいたい考えだ。

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[西尾泰三,ITmedia]

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