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2004/03/23 15:01 更新


「誤算だったのかも」SRA鹿島氏が吐露するターボリナックス売却の真実

SRAは3月23日、都内で発表会を開催し、Linux/オープンソースビジネス戦略を発表した。ターボリナックスを売却したとはいえ、SRAは今後もオープンソースに携わっていくという。

 SRAは3月23日、都内で発表会を開催し、Linux/オープンソースビジネス戦略を発表した。先日、ライブドアがSRAからターボリナックスを買収したこともあり、注目の発表会となった。

 挨拶に立ったSRAの代表取締役社長、鹿島亨氏は、「正直言って、ターボリナックスを売却したことで、市場から、SRAはオープンソースから手を引くのではないかと思われることが怖かった。そうではないことを今日お知らせしたい」と話す。

鹿島氏

「ターボリナックスを売却したことで、市場から、SRAはオープンソースから手を引くのではないかと思われることが怖かった」と鹿島氏

 鹿島氏はSRAの強みを30年以上かけて培った技術力と顧客であるとし、エンタープライズ市場にフォーカスするのが必要であると判断、コモディティ化したハードやソフトではなく、OSより上の部分、具体的には、ミドルウェアなどに投資を集中していき、2006年には100億円規模の売り上げを達成したいという。

「SRAはエンタープライズ市場のうち、ミドルウェアの部分に対してフォーカスしていく。今回ターボリナックスを売却したことで得られた資金も、ここにつぎ込んでいく。また、Webサービスにも少し手を出して行ければと思う」(鹿島氏)

 また、4月1日付けで収益に対しても責任を持つオープンソースカンパニーを社内に設立する予定。この設立で、一層の事業展開を図る考えだ。責任者には、現在、SRAネットワーク&サービスカンパニー オープンソースソリューション部長の林香氏が就任する。

「オープンソースカンパニーが設立されることで、SRAはコンサルティング、ハード、OS、ミドルウェア、アプリケーション、運用といったサイクル全てカバーできることになる。国立研究機関や教育機関などのほか、流通、製造といったマーケットに対して注力していきたい」(林氏)

ターボリナックスの買収・売却は正解だったのか?

 ターボリナックスの売却に関しては、移り変わりの速さに対する苦悩も見て取れる。ターボリナックスの買収はそもそも意味があったのか? という声もあるかもしれない。

 当時ターボリナックスは、コネクティバ、SCOグループ、SuSE Linuxの4社で、「UnitedLinux」を設立し、エンタープライズ市場において、Red Hatと勢力を2分していく機運が高まっており、SRAもそこに魅力を感じていたようだ。この状態であれば、「UnitedLinuxの一角であるターボリナックスの親会社」という見られ方は、SRAにとってさほど困るものでもないだろう。

 しかしその後、SCOの行動が引き金となってか、UnitedLinuxは事実上の崩壊を迎え、ターボリナックスもその方向性をコンシューマ系にシフトさせた感がある。コンシューマ系、デスクトップ系と対極にある市場でビジネスを展開しているSRAにとっては、ターボリナックスの親会社という看板が、逆に足枷となり始めたのだ。

「どうしても『ターボリナックスの親会社であるSRA』という捉われ方をされてしまいがちで、このことが私たちの仕事をやりにくくしていた部分がある。特に、Red Hatからすれば、競合するディストリビューションを市場に提供する会社の親会社ということで、しっくりいかない部分もあった」(鹿島氏)

 鹿島氏の話を聞くと、SRAは時代に翻弄されたような感もある。「確かに結果を見れば、誤算ではないか、と突っ込まれるかもしれない。それに対してはそうかもしれないが、得られたものも多い。OSに関する知識を手に入れたことで、OS、ミドルウェアなどのソースコードに対して手を入れる知識が得られたことは大きなことだ。カスタムベースのソリューションを提供するのにこの部分は重要だと考えている」と話す。

 なお、今後は、Red Hat、ターボリナックス、ノベル、ミラクル・リナックスといったLinuxディストリビューターのベンダーと協調し、オープンソースを盛り上げていければと話す。ターボリナックスについても、売却したとはいえ、今後も良好な関係を維持していくつもりであるという。

海外へも目を向けるSRA

 また、同社製品の今後のロードマップについても触れられた。同社が提供している製品で最も有名なのは、オープンソースのRDBMS「PostgreSQL」をベースとした「PowerGres」だろう。同ソフトは、2003年4月にPostgreSQL 7.3.6をベースにしたWindows版、Linux版がリリースされているほか、データベースのエンジン部分に富士通のエンジン技術を採用した「PowerGres Plus」、それらのクラスタリングを可能にする「PowerGres HA」なども存在する。

 国内の現状を見ると、代理店7社、流通パートナー10社、ISVパートナー13社が同製品の販売にあたり、1年で1000本、8000万円の売り上げであったという。

「この数字はソフトの価格だけのもの。コンサルなどを含めると、今年は2億円程度の売り上げとなる。最初の半年はパートナーの開拓にあたっていたことを考慮すると、まずまずではないかと思う」(林氏)

 こうした流れを受けて、今後はパートナーを拡大し、3年後には10億円規模にまで持って行きたいとしている。

 また、SRAでは、PostgreSQLが他の商用DBと比較しても遜色ない性能を発揮できると考え、同製品の海外展開を図る予定だ。まずは4月から、「PowerGres on Windows Ver 1.1」(ベースは7.3.6)が米国にて販売される。

「商用DBが強く、PostgreSQLが弱い部分を挙げるなら、例えば、分散データベースがある。これ自体は重要な機能ではあるが、現状を見ると、適用するアプリケーションが限定されるので、それほど気にすべきものではないと考えている」(林氏)

 夏以降、「PowerGres on Linux」、「PowerGres Plus」が順次リリース予定となっている。この時期と前後して、ヨーロッパでの展開も図る予定。

 夏以降の製品は、PostgreSQL 7.4をベースとした製品になる予定。ベースが7.4となることで、エンタープライズ用途として期待されている機能も実装される。例えば、VACUUM機能の向上だ。同機能は、データベースの性能を維持するために定期的に実行するコマンドだが、この実行タイミングは業務要件や更新頻度などで変化する。この点がPostgreSQLの管理を煩雑にしていた部分があるが、ここが改善されることで、24時間365日の稼動に対しても対応可能であるとしている。そのほか、集約関数の性能向上、INFOMATIION SCHEMAのサポートによる、システムカタログアクセスの標準化なども盛り込まれる。

 なお、グローバル展開では、PostgreSQLの製品であることを明確にするため、「SRA brand of PostgreSQL」とブランディングを図り、キャッチコピーはMySQLの「The most popular open source database」に対抗して、「The most advanced open source database」にするという。価格についても、商用MySQL「MySQL pro」の価格(パッケージ495ドル、サポート1500ドル〜)に対抗し、パッケージが430ドル、年間サポートが720ドルとなる。

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[西尾泰三,ITmedia]

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