インタビュー
2004/04/06 19:55 更新


マイクロソフトが狙う日本の中小企業市場

Microsoftの中小規模法人およびパートナーグループ(SMS&P)担当シニアバイスプレジデント オーランド・アヤラ氏に、日本の中小規模企業への取り組みやSBS 2003についての戦略を聞いた。

 米国では昨年10月、国内では今年2月に発売開始となったマイクロソフトの中小規模事業所向けサーバ製品「Microsoft Windows Small Business Server 2003」(SBS 2003)は、おおむね順調な滑り出しを見せているようだ。米国本社の中小規模法人およびパートナーグループ(SMS&P)担当シニアバイスプレジデント オーランド・アヤラ氏に、中小規模企業への取り組みやSBS 2003についての戦略を聞いた。

ITmedia 今回、社内的なミーティングが日本で開かれたようですが、そのほかにも来日の目的はありますか?

アヤラ氏 来日の目的は二つあります。われわれは、中小規模企業に対して大きなプライオリティを持っています。ご存じのとおり日本はこの分野にかけては非常に重要なエリアであり、日本のマイクロソフトが行っているいろいろな施策が効果を発揮している市場でもあります。そこで、このセグメントに対して単にバリューを提供していくだけでなく、e-Japan戦略なども含めてどのようにビジネスチャンスが進んでいるかを見ること、そして日本におけるこのような施策と効果を理解することが第一の目的です。

 もう一つは、日本のパートナー企業からさまざまなフィードバックを得るということです。ここで受けたフィードバックを慎重に検討し、世界的な戦略を作成するときの材料とします。今回の来日では15のホワイトボックスシステムビルダーと会いました。これを通じて日本市場についての洞察を得ることもできましたし、また日本のホワイトボックスの状況やコンシューマのトレンドなどについても情報収集ができました。

ITmedia 日本の中小規模企業マーケットをITの成熟度から見た場合、世界的にはどのくらいのレベルに位置するのでしょう?

アヤラ氏 もちろん、何番目と正確に言うのは困難です。ただし特徴として、今までの日本のビジネス市場は、ホスト中心的、つまりメインフレームが主だったということがあげられます。このため、中小規模企業に容易に転用可能なソリューションというものが存在しませんでした。それで世界各地に比べると、日本の中小規模企業はITの採用という意味においては遅れをとっていたわけです。

 しかしながら、日本市場のポテンシャルは目を見張るものがあります。ご存じのとおり、中小規模企業は経済全体における成長のエンジンの役割を果たすことができます。この分野に力を入れることがビジネスチャンスであるとともに、日本全体の活力化にもつながっていくと考え、深く取り組んでいます。

 その取り組みの一つの重要な例が、日本のマイクロソフトが行っている「全国IT推進計画」です。そこでは単にソリューションを紹介するだけでなく、いかにしてそれを中小規模企業の間で共有するかということまで考えています。われわれはそこでリファレンスケースを作成し、さまざまな場面において紹介を行っています。

ITmedia その一つが経革広場ですね。こういった仕組みは他国でも展開しているのですか?

アヤラ氏 先日、世界的なカントリーWebサイトというべきSmall Business Centerを発表しました。今後、さらに7つか8つの発表があるでしょう。ただし、日本での経革広場がこれらと異なるのは、マイクロソフトブランドとして名前を出したやり方をしていないということです。

 ともあれそこでは、ソリューションやそのリソース、パートナーを自由に見つけることができます。これは重要なことで、顧客とパートナーを結びつける大事な場になっているということです。

 もう一つのイノベーションは、まだ日本では展開されていないのですが、スモールビジネスパートナーの認定資格制度です。パートナープログラムの一環として進めていくものですが、これは他には見られないユニークな制度です。セキュリティやソリューション、コラボレーションといった11のコンピテンシーが用意されており、パートナーはその認定資格を取得することで、その分野のプロフェッショナルとなることができるのです。顧客にとっては信頼できるパートナーということになり、ビジネスのチャンスが広がっていくメリットがあります。

 こういったパートナーあるいはカスタマーのためのコネクション作りには、今後も投資を行っていきます。将来的には、世界的に大きな一つのイベントとして、スモールビジネスフェアというものを考えています。他の業界とも協力しあって、ISVやパートナーが集まり知り合う場を設け、中小規模事業が抱える問題を解決するためにどのように技術を活用・応用すればよいかという議論などもできるようになればと思います。ここ一年から二年の間には具体的なプランを作りたいですね。

ITmedia SBSが好調のようですが、ターゲットの主要セグメントとなる中小規模というのは、具体的にどのくらいの規模を想定しているのですか?

アヤラ氏 カバーすべき一つのサブセグメントを考える指針としては、ある企業の中でITのスペシャリストを持てるかどうかで分けられると考えています。これを統計から具体的な数字に置き換えると、75人未満という従業員規模の企業がターゲットになります。

 中小規模企業は、資金的あるいは人員的なリソースも少ないところが多いでしょう。そのため、シンプルかつ統一された環境というものを望んでいます。大きな企業では、システムのある部分をマイクロソフト製品、その他の部分をLinuxで構築するというようなケースもあります。けれども中小では、それらを管理したり、いくつものテストをするといった時間も人もないのです。ここにわれわれのチャンスがあります。マイクロソフトにはWindowsの統合化されたソリューションがあるからです。一方、75人以上1000人未満の層についても段階的にさまざまなソリューションを用意し、SBSと同様の展開を今後進めていくつもりです。

ITmedia 日本ではそこにどのくらいの市場規模が見込まれているのでしょう?

アヤラ氏 世界で見ると4000万の中小規模企業があり、その中では1000人未満の中規模が160万社、残りが75人未満の小規模となるわけです。そこにPCが普及するのには時間がかかりました。いまだ多くがPCを持たないという状況も把握しています。すぐには見込みの数字を伝えることはできませんが、しかしながら確実に言えることは、ここ10年の間に状況は加速度的に変わっていくということです。ブロードバンドの普及やハードウェアの低価格化などが主な要因になっていくと思います。テクノロジーをいかにシンプルにして伝えるか、これがこの分野への鍵だと思います。

 日本では事業所で600万、法人の数では200数十万と言われています。われわれの調査では、全世界における中小規模事業所へのパソコン浸透率は約0.26、日本では約0.21という結果が出ています。欧米の先進国は約0.5で、この数値だけを見ても、オポチュニティは2倍あると見込んでいます。

ITmedia 中小への取り組みを継続していくことを顧客に示すため、例えばSBSに特化したロードマップなどの戦略を見せることも重要では?

アヤラ氏 まったくその通りです。SBSは基本的にはWindowsであり、Exchangeであり、SQL Serverであって、それらを使いやすくまとめ上げたものです。したがってロードマップの大筋はこれらに従ったものになります。とはいえ、小規模事業により密接した製品展開というものも考えなければいけないわけで、当然重要度は高いと言えます。

 もしかしたら中小規模事業の顧客自身は、ロードマップなどには興味がないかもしれません。けれども、そういった顧客にソリューションや製品を提供するパートナーにとっては、それがとても重要になります。SBSの今後の行方を知っておくことは、とても重要かつ価値のあるものになるのは間違いありません。

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「日本の中小規模事業は今後10年間で急速にIT化が進む」とアヤラ氏


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[柿沼雄一郎,ITmedia]

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