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2004/04/27 17:13 更新


「ターボがやらねば誰がやる」ここまで機能を盛り込んだターボリナックスの新OS

ターボリナックスが本日発表した「Turbolinux 10 F...」は、世界初をちりばめて『ジャパンプレミア』を提供しようとしている。気合の入れようは発表会場の選択にも見て取れる。

 ターボリナックスは4月27日、同社のLinuxディストリビューション「Turbolinux」の最新バージョンとなる「Turbolinux 10 F...」(以下10F)を発表した。この説明会が月島にあるムービーテレビジョン内で開催された。会場はシアターのような場所で、一風変わった感じを受ける。

 ターボリナックス、クライアントグループ/プロダクト・マネージャの久保和広氏は、「今回の発表にはもしかすると賛否両論あるかもしれない。しかし、ターボリナックスとしては、ユーザーの視点から物事を考えていきたい」と述べるなど、10Fが相当異例な製品であることを匂わせた。

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タキシードに身を包んだ久保氏

 ちなみに、この「F...」には、Fからはじまるさまざまな意味が含まれているという。Fun、Freedom、Future、Favorite……などいくらでも考えられるが、「ユーザーの方それぞれが感じる『F』をあてはめてほしい」(久保氏)としている。

Windows Mediaフォーマットも再生可能に

 10Fの製品コンセプトは、「誰でも使えるインターネットOS」。このコンセプトは2003年10月に発売された「Turbolinux 10 Desktop」(以下10D)でも唱えられていた。今回の製品は、10Dで実現されていた「Windowsとの高い互換性」「優れた日本語環境」といった部分に加え、「ブロードバンドコンテンツ対応」「マルチメディア」といったキーワードが付加されたものになる。

「ブロードバンドコンテンツ対応」「マルチメディア」を実現する具体的な機能としては、今回、最もインパクトのある機能といえる「Turboメディアプレーヤー」が挙げられる。

 同ソフトは、米Microsoftとライセンス契約を結び、Windows Mediaフォーマットのストリーミングコンテンツ再生技術を組み込んだもの。KDEの標準メディアプレーヤー「Kaffeine」のフレームワークを採用し、Xineマルチメディアプレーヤーをエンジンとして使用。Windows Mediaフォーマットを再生するためのデコードライブラリをxineのプラグインとして利用する形でコンテンツ再生を可能としている。

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「Turboメディアプレーヤー」

「正直言って、パテントなどを無視すれば、何でもできてしまうのが、Linuxのいいところであるともいえる。しかし、製品として出荷するには、十分な安心感も合わせて提供すべきと考え、関係各所ときちんと話し合いや契約を交わし、この部分をクリアしている。他のソフトとの関連付けや、再生時にほかのウインドウの下にいかないようにするなど、細かい部分についてもわれわれのほうで調整を行っており、ユーザーは何も気にすることなく利用できる」(久保氏)

 なお、「Turboメディアプレーヤー」単体での発売予定は全く考えていないという。そのため、10Dユーザーであっても、同ソフトを利用するには、後述するアップグレードパッケージを購入するほかない。

 このほか、RealPlayer、サイバーリンクのDVD再生ソフト「PowerDVD for Linux」、Sun Java2 Platform, Standard Edition v1.4.2がバンドルされているほか、エプソンおよびキヤノンから提供を受けた最新のプリンタドライバも収録されている。

 機能拡張としては、インスタントメッセンジャーでMSN、ICQ、AOLとの互換性を有しているほか(Yahooメッセンジャーは未サポート)、gtkpodを利用して「iPod」との連携も可能になっている。デモではiPodを接続した際に、HDDが2つ認識されるなど、若干操作に迷うかもしれない部分もあったが、そのほかの部分については、それほどOSの違いに困ることもなさそうであった。

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iPodを接続した際の画面(クリックで拡大します)

いくつかの世界初をちりばめて「ジャパンプレミア」を提供

 主要なパッケージ構成は、Linuxカーネル 2.6.0、glibc 2.3.2、XFree86 4.3.0、GCC 3.3.1、KDE 3.1.5となっている。10Dで他のディストリビューターに先駆けてLinuxカーネル2.6系を採用したように、最新のパッケージを採用するかと思われたが、このパッケージ構成は基本的には10Dと同様のものと考えてよい。

「10Fは、いわば、10Dのコンセプトモデルのような扱いで、10Dのツリーを基に作られたために同じパッケージ構成を採っている。XFree86を今後も採用するかなどの話については、今は『No Idea』としか言えない」(久保氏)

 そのほか、目新しい部分としては、インストール時のデフォルトが「Turboインストール」となっており、rootのパスワードを設定するだけでインストールが行えるようになっている。

 同製品は、明日4月28日から、同社が運営するオンラインストア「Turbolinuxオンラインショップ」での先行予約を受け付ける。同サイトでは、ここだけで購入可能な10Dユーザー向けのアップグレードパック「Turbolinux 10 D2F...」(10D2F)のほか、それ以外のTurbolinuxユーザー向け優待パッケージも発売される。価格はそれぞれ、10Fが1万6590円、10D2Fが7140円、優待パッケージが1万1340円となる(いずれも税込み)。なお、CD-ROMは4枚組みで、1枚は10Dと同様のドキュメントCDとなる。

 「10Dが約半年で2万パッケージ出荷された。10Fはその倍を目指したい」(久保氏)

 最後に挨拶に立った、ターボリナックス、代表取締役社長兼COOの矢野広一氏は、自身が感銘を受けたというアディダスのWebサイトのムービーを例にとり、

「Windows以外は普及しないという不可能を打ち破りたい。私にとっての『F』は『不可能のF』であり、早くこの文字を製品名から取ってしまいたい(笑)。いくつかの世界初をちりばめることで、『ジャパンプレミア』を提供していきたい」と述べた。

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タキシード姿の久保氏に合わせ「今日の会場なら、さしづめ私は映画監督」と笑う矢野氏

 説明会の最後には、久保氏がおごそかな空気の中、ターボリナックスの社員の名前を一人ずつ挙げ、感謝の意を述べると共に、オープンソースコミュニティへの感謝も忘れなかった。そしてその背後のスクリーンには、スタッフロールが流れるなど、最初から最後まで通常の説明会とは一味違ったものになった。

[西尾泰三,ITmedia]

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