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2004/05/12 02:00 更新
最新Linuxディストリビューションレビュー:
細かい使い勝手を高めたSUSE Linux 9.1 Professional (1/2)
SUSE Linux 9.1 Professionalは、商用ディストリビューションとしてはまだ多くない2.6系カーネルを利用したシステムとなっている。デスクトップ環境としてのSUSEを、2.6系カーネルの影響も交えつつ紹介しよう。
SUSE Linux 9.1 Professional(以下SUSE)は「デスクトップ環境のLinux」としての使いやすさを出した環境を提供すると同時に、商用ディストリビューションとしてはまだ多くない2.6系カーネルを利用したシステムとなっている。どのような環境になったのかを簡単ではあるがまとめてみよう。デスクトップ環境としても興味あるが、2.6系カーネルの影響も少しは出ているのではないかという部分も気になるので、可能な範囲で見てみたい。
なお、今回は評価版を用いた記事となるため、正式版では異なる部分があるかもしれないことをご了承いただきたい。
SUSE Linux 9.1とは
SUSEはヨーロッパ方面で高い評価を得ているLinuxディストリビューションであるが、実はある程度の国際化対応が含まれた形で開発されている。先日NovellがSUSE Linuxを買収したことで、日本でもノベルが日本語版として発売することになった。
SUSE LINUX 9.1にはPersonal版とProfessional版の2種類が存在する。両者の違いは、メディアの枚数(Personal版が2CD、Professional版が5CD/2DVD)のほか、マニュアルの充実度、インストールサポート(Personal版が30日間、Professional版が90日間)などが挙げられる。なお、Professional版に付属するDVD-ROMには、AMD64およびIntelの64ビットメモリ拡張技術に対応した64ビットバイナリも収録されている。
なお、主要なパッケージのバージョンは次のとおりである。
パッケージ | バージョン |
Linuxカーネル | 2.6.4 |
glibc | 2.3.3 |
GCC | 3.3.3 |
Gnome | 2.4.2 |
KDE | 3.2.1 |
XFree86 | 4.3.99 |
samba | 3.0.2a |
Apache | 2.0.49 |
OpenOffice | 1.1.1 |
十分にこなれてきたGUIインストーラ
SUSEにはRed Hat/Fedoraで採用されていて、多くの利用者がいるであろうAnacondaとは異なり、YaST(Yet another Setup Tool)という独自のインストーラを用いている。YaST自身は改良されながら機能性を確実に増してきているため、特にインストールで困るということはない。空きパーティションさえあれば、適当なサイズにパーティション分けを行い、一般的な環境を組み込んでくれる。
Anacondaと違うのはインストーラ開始直後に環境をチェックし、「何をおこなってインストールをするのか、その際に何を入れるのか」ということを先に表示する仕組みになっている点である。もちろん、必要に応じてカスタマイズ可能だ。
では日本語でのインストールはどうなっているのか? この質問に関しては「問題なし」の一言で十分であろう。確かにインストーラ起動直後は英語だが、言語選択を行うと日本語となり、これ以降のほとんどの部分は日本語での表示となる。
インストール用のCD-ROMは、なんと5枚組、もちろん、全てバイナリである。ただし全部のCD-ROMを入れるわけでもなく、インストールの際に必要なメディアのみが表示されるしくみになっているし、インストールに必要なHDDの容量と時間(概算)も確認できる。
KDE 3.2.1の採用で使い勝手が向上
ヨーロッパ方面ではデスクトップ環境としてKDE(K Develop Environment)が広く用いられているようだが、もちろんSUSEもKDEが標準のデスクトップ環境となっている。このため、デスクトップ環境において自動的に呼ばれる(拡張子に割り当てられている、など)アプリケーションの大半はKDEアプリケーションとなっている。
KDE 3.2.1を標準デスクトップとして採用したことで、HTMLのレンダラ(Konquerorエンジン)の性能が従来より向上したこともあり、アンチエイリアス表示と併せて十分な表示となっている。また、Windowsパーティションを利用してIE(Internet Explorer)の「お気に入り」のインポートが可能になっているとのことである。この点に関しては、筆者はIEは使わないようにしているため試すことができなかった。
ところで、最近筆者は、オーディオCDは直接CDから聞くよりも、リッピングしたデータを持ち運ぶことが多くなっている。こんなユーザーにうれしい機能として、オーディオCDをKonqueror上で直接リッピング可能になっている。
Konquerorのアドレス入力欄に「audiocd:/」と入れると、CDDBに問い合わせた上で以下のような画面になる。
上記の状態で、Ogg Vorbisフォルダはエンコードされたデータ(その場で生成するため本当のサイズではない)がCDDBで得られたタイトルと共に表示される。
ここに表示されたファイルをデスクトップなどのほかの場所にコピーすることで、リッピングが行われる仕組みとなっている。また、作成したファイルを管理するためのジュークボックスツールJuKも含まれている。
KDE自身はかなりの部分でマルチリンガル対応になっているため、通常の利用において、極端に日本語の入出力ができなくて困るということは少ない。もちろん標準ブラウザはKonquererではあるが、パッケージとしてMozilla 1.6が含まれているため、Mozilla Mailなどがいいという場合はパッケージを追加すればよい(実はオプショナル扱い)。
実はインストールの際にNTFSやVFATのWindowsパーティションを検出すれば、自動的に割り当てを行うようになっている。筆者の環境でも検出されているため「/windows/c」として割り当てられている。日本語のWindowsを用いているため、日本語を含むマルチバイトファイル名が多く含まれている。このようなファイル名をどうするのかと思っていたが、特に問題なく表示された。このあたりはVine LinuxやTurbolinuxであればできて当たり前といわれそうだが、ネイティブではないSUSEでもひととおりの表示ができているのは驚きである。
日本語の入力に関しては、Cannaが標準で組み込まれている。Fedora Core 1では日本語の変換はかなりおかしかった(不具合というレベルだろう)が、SUSEではCannaとしての普通の変換精度になっているように感じた。
またオフィススイートには、メニューまわりが日本語化されたOpenOffice.org 1.1.1が搭載されている。1.1.0からするとWord文書の取り込み精度なども向上している。取り込みのための作業がいくつか必要だろうが、逆にOOoで作成して最終稿をWordに変換出力という方法で通すのも悪くない状態になっていると考えられる。
[佐藤大輔,ITmedia]
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